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スキル学ぶ初年次教育、専門への導入教育併せ学生の学び深める

大阪国際大学

2009年8月27日

写真矢島彰准教授

写真コンピューターデザインの指導を受ける学生

写真セミナーI授業風景

写真eラーニング教材に取り組む学生

写真大学祭の模擬店でがんばる学生ら

 大阪国際大学は、1年次に施す初年次教育から3、4年次で学ぶ専門教育までを「卒業論文」と「就職」というキーワードでつなぎ実績をあげている。大阪・枚方キャンパスにあるビジネス学部と現代社会学部では、1クラス十数人という少人数教育を柱に、1年次から「セミナーI」という必修科目を中心に、4年次の「セミナーIV」まで学生一人ひとりに、教員の目が行き届くきめ細かな教育を実施している。初年次教育では、レポートの書き方や図書館の使い方、授業中のノートの取り方はもちろん、大学祭の参加を採り入れた独自カリキュラムを実施してきた。こうした内容をテキストとしてまとめ2008年に出版し、他大学にもこのテキストを使う例が増えている。こうした教育実践の中心的存在である現代社会学部の矢島彰准教授に話を聞いた。

 ――初年次教育のテキストはおもしろいですね。

 「初年次セミナーのワークブックとして『大学 学びのことはじめ』と題して出版しました。必修科目『セミナーI』では、この本をテキストに、今年度はビジネス学部と現代社会学部の1年生421人が37クラスに分かれて学んでいます。37クラスもありますから、学部長など役職のある教員以外はほぼ全員で担当しています。セミナーという必修科目は各学年にあり、ゼミ形式で展開されます。1年次の『セミナーI』、2年次の『セミナーII』、3年次の『セミナーIII』、4年次の『セミナーIV』とすべての科目を担当している教員も多いですね」

 「初年次教育にあたるスタディスキル(学習技術)を学ぶために、ノートのとり方や文章要約の仕方、レポートの書き方、図書館の使い方といった内容を『大学 学びのことはじめ』を使って懇切丁寧に教えます。加えて、自己紹介や、手紙の書き方、マナー、履歴書の作成まで、みっちりやってもらいます。履歴書は1年次と2年次の終わりに書いてもらいますが、学年が上がると書く内容が増え、中身も良くなってきます。これが、就職活動につきもののエントリーシートを書くときに役立っています」

 「卒業する時に身についている能力として、卒業論文を書けること、就職など自分の進路が決められることを目標に、まず1年次ではゼミレポートと履歴書の作成ができるようになることを目指しています」

 ――「セミナーI」では大学祭に参加するのも授業の一環なのだそうですね。

 「『大学 学びのことはじめ』のなかに、ゼミ単位で大学祭に模擬店を出店する体験型授業を盛り込んでいます。テキストに従い、模擬店の準備は何をしたらいいのかから始まり、仕入れや原価計算、売り上げ予測などを授業で話し合ったうえで、実際に参加するというものです。もちろん参加しっ放しではなく、大学祭終了後、反省会を授業のなかで行い、うまくいった点やいかなかった点などを検証します。簡単なレポートにまとめてもらう場合もあります」

 ――どうして、大学祭への参加を授業に組み入れたのですか。

 「講義だけではなく、実践型にして授業に面白みを持たせたという面もありますが、やはり最近の学生の特徴である、ものの表面しか目がいっていない点を少しでも改善したいと考えたからです。たとえば、仕事、職業を考える時、電車を見ても、運転手と車掌しか職業として認識できない。電車を整備したり、ダイヤを組んだりする人たちにまで気持ちが向かない。スーパーを見ても、販売している人しか仕事しているとみなせない。仕入れを担当したり、宣伝を担当したりとさまざまな人たちが働いているというイマジネーションがないのです。いわゆる縁の下の力持ちにまで関心が向いていません。これでは、学生が卒業時に仕事を選ぶ時、きちんと選べないですよね。身近な大学祭の模擬店に参加することによって、そうしたいろいろな仕事があることを疑似体験させたいのです。また一方で、サークルなどに参加する学生はいいのですが、課外活動に参加する学生が少なく、共同作業の経験が少ないケースが多いですね。これでは社会に出てから働くこともままならないのではないでしょうか。こうした学生に、1年次で取り組みやすい大学祭へ参加させ、社会参加への意識を高めたいと考え、カリキュラムに入れました。」

 ――1年次で初年次教育、3、4年生では専門教育やキャリア教育に取り組み、学生の意欲を高めている大学は多いですが、意外に2年次をどうするか、悩んでいる例が目立ちます。大阪国際大学も1年次、3、4年次は同様の取り組みをして比較的にうまくいっておられると思いますが、「2年次教育」はどうしていますか。

 「3、4年次は従来からの大学のやり方である、各教員の専門ゼミを、学生が選ぶスタイルです。1年次は初年次教育で、専門というより、大学生として学ぶ土台を作る時期というイメージです。その間に位置する2年次は、学科が育てたい人材のイメージを学生に知ってもらう時期という位置付けです。ビジネス学部は経営デザイン学科と経済ファイナンス学科が、現代社会学部には情報デザイン学科と法律政策学科の計4学科があります。それぞれで取り組んでいますが、ビジネス学部の2学科は「セミナーII」の独自テキストがあり、それに従ってゼミ形式で取り組みます。株式の基本や企業の利益計算、マクロ経済の考え方など、3年次からの専門的なことを学んでいくうえでの移行的な内容になっています。年度末には、「セミナーII」の総仕上げとして、学生各自が選んだテーマでプレゼンテーションを行います。各ゼミの代表者を集めた合同発表会を行い、グランプリ1人を選ぶコンテストも実施します。昨年度は「スターバックスの人気」をテーマにした学生がグランプリを受賞しました」

 「私が所属する情報デザイン学科では、今度、後期が始まる直前の9月23〜24日に大阪市内の研修施設でリフレッシュキャンプを実施する予定です。デザイン関連のソフトを使った作品製作など、学科特有の製作物を一晩かけて集中的に作ってもらいます。このほか、進路決定の意識付けのため、外部講師によるキャリア講演を4回ほど行います」

 ――1年次から4年次までのカリキュラムが確立され、成果も上がっておられると思いますが、今後の課題は何ですか。

 「カリキュラムも出来上がり、流れができた感じがあるので、少し安心感が教員の間に広がり、ある意味、考え方が硬直化してきているように感じます。カリキュラムを作り上げるまでは、毎月のように会議を開き、喧々諤々(けんけんがくがく)の議論をしたこともありましたが、いまはそういったことも少なくなっています。たとえば、初年次教育では、これからはもっと教え方のノウハウを教員同士が交換しあったりして活性化したいですね。テキストはそんなに頻繁に変えられませんが、教員が教えるマニュアルはパソコン内で共有しているだけなので、毎年でも改訂できます。積み重ねも厚くなってきたので、これからはマニュアルに、このカリキュラムで生み出されたgood practice(良い成果)も掲載して中身を充実させていきたいですね」

大阪国際大学(大阪府枚方市杉3−50−1)
ホームページ http://www.oiu.ac.jp/

取材してみて一言

上島誠司

文章を書く能力 初等教育から充実させ、論理的思考を養う必要
 大阪国際大学では、卒業論文が必修だ。大学なのだから当たり前のことだと思うかもしれないが、他の大学を取材してみると案外そうでもない。4年生は就職活動が大変なので必修にしていない、などというところも結構ある。また、ある総合大学の教授が嘆いていた。「4年生になって『卒論って、どうやって書くんですか』などと聞いてくる。そんな連中の書いてきた卒論なんて……」。

 へえっ、最近の大学の先生は大変だな、と思ったが、よく考えてみると、30年前、大学生だった自分のことを思い起こしてみると、卒論の書き方など伝授してもらった記憶はない。京都の古本屋をはしごし、「レポートの書き方」やら「優がもらえる卒論の書き方」だったか、そういったたぐいの本を数冊買い込み、にわか勉強したような気がする。

 最近、筆者のところに、大学だけではなく中学校や高校、予備校や塾などから「小論文講座」といった文章の書き方講座の講師依頼が舞い込んでくる。記者を長くやっているので、文章のプロと見られるのだろう。いささか面映い気もするが、ふだん取材などでお世話になっている手前、断りにくく引き受けることが多い。その授業で学生に接していると、学校で書き方を教えてもらったことがない、という声をよく聞く。なるほど、さかのぼって考えると、小学校の作文の授業といえば、運動会や遠足といった行事が終わった後に書かされることが多かった。筆者が小学生のころ、遠足の作文を書いているときに当時の担任に注意された。「弁当の話ばかり書かず、もっと別のことも書きなさい」。書き方ではなく、内容のことばかり指摘されたように記憶する。今の学生にその話をすると、似たような体験をした学生が多い。

 やはり、書き方、論理的な文章構成の技術をきちんと教えてあげることがまず必要ではないか、と思うのだが、学生の話を聞いていると、そんなことを教育されている風でもない。

 いま、大学で文章講座を1年次から少人数で実施するところが増えている。良い傾向だと思うが、もっと早い時期から取り組んでいたら、どれだけ「学び」に役立つか、計り知れない。むしろ小学校から、国語の授業できちんと実施しているところは意外に少ない。「作文指導は添削が必要なので、どうしても億劫になってしまう」とは、ある小学校の先生の本音。分かる気はするが、大学4年生になって卒論の書き方で途方にくれる学生を出さないためにも、作文教育について真剣に考えてもらうことは急務だと思う。(アサヒ・コム教育チーム 上島誠司)

 このコラムは、おもしろい授業やユニークな行事、新しい学部や学科の内容など、各学校が取り組んでいる教育実践の具体的な中身を取り上げ、読者のみなさんに学校選びの参考にしていただけることを目指しています。小学校や中学校、高校、大学をはじめ、専門学校など教育に取り組むすべての学校を対象に、その取り組みの中心人物(学長や学部長、校長、プロジェクトリーダーなど担当の先生)にインタビューし、その学校の一押しの教育内容を紹介してもらいます。
 読者のみなさんのなかで「この学校のこんな取り組みを紹介してみては」というご提案などありましたら、教えてください。よろしくお願いします。

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