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「短大として生き残る」前面に改革スタート

大阪夕陽丘学園短期大学

2009年9月24日

写真実習で乳児の粉ミルクを調整

写真車イスを使って移動技術を体験

写真店舗のディスプレーに取り組む

写真小谷学長(左)と山口学科長

 栄養士の養成で定評のある大阪夕陽丘学園短期大学が、今年度から男女共学になると同時に、学科を充実させ再スタートを切った。従来の学科構成を、看板の栄養士養成の食物栄養学科に加え、パティシエやウエディングプランナー、ネイリスト、ホームヘルパーなど学生がなりたい職業を具体的にイメージしながら、理論や実践が学べるキャリア創造学科に再編した。少子化が進み、短大としての生き残りをかけ、学生が「なりたい自分になれる」をメッセージに新たな挑戦を始めた。その先頭に立つ、小谷昭子学長と、山口眞理キャリア創造学科長(入試委員長、准教授)に話を聞いた。

 ――少子化を背景に、短大の生き残りが厳しさを増すなか、4年制大学にかわる大学が目立ちます。短大のままで再スタートを切ったのは、どうしてですか。

 「確かに厳しい状況です。でも、それは4年制大学でも同じこと。そう考えると、短大は短大としての社会的役割があると思いますので、その役割をしっかり見つめ直し分析することが必要だと考えました。しっかり専門的な勉強をして社会に早く出たい、就職したい、という学生も多数います。そうした希望を持つ学生のニーズにあった対応を、我々が用意できれば、その役割を十分果たす事ができる。安易に4年制に移行するのではなく、短大としての存在意義を示そうと、今回の学科再編を断行しました」

 「短大は2年サイクルで回していくので、結果が出るのが早い。その利点を生かして、今回の学科再編や男女共学化などの改革も、結果を見ながら、これで改革は終わりということではなく、例えば、カリキュラムなどは学生のニーズなども探りながら、より良いものを目指して改良していこうと思っています。絶えず“CHANGE!”の気持ちをもって取り組んでいきます」

 ――今年度、再スタートした学科再編の狙いや具体的な内容について教えてください。

 「入学してきてくれる学生が将来、就きたい仕事、職業について、できるだけ幅広く具体的に学ぶことができるような体制を整えようと腐心しました。うちの伝統である栄養士の養成については食物栄養学科を設け、引き続きしっかりやる。一方で、学生の夢をかなえるために専門スキルを磨くことのできるキャリア創造学科を新設しました。この学科では、製菓やファッション、美容、ブライダルから福祉まで9つのフィールド(専攻分野)を設け、フードコーディネーターや訪問介護員、ネイリストなど具体的な技能検定のある資格と結びつけて、就職を意識しながら学んでもらいます」

 「特徴としては、学生自身の関心、キャリアに応じて、学生自身がカリキュラムを自由に選択できるようにフィールド以外の科目を受講することもできるようにしています。選択できる科目は教養関連の科目などを含めると100科目ほどあります。もちろん、資格試験対策の講座も随時開いています」

 ――選択できる科目名を見ていると、法学や国語表現法、基礎デザイン論などという通常の大学でよく聞くいかめしい科目のなかに「フィットネス」や「ラッピング演習」「アロマセラピー演習」など興味を引くものがありますね。

 「フィットネスというのは、他の大学でいうところの体育実技ですね。女子学生が多いので、専門の先生を招き開講したのですが、人気科目なりました。講堂で、学生たちが楽しそうに体を動かしています。ラッピング演習、アロマセラピー演習といった科目も専門の方に講師として来ていただいていますし、製菓衛生士の養成課程であるフードクリエーションのフィールドでも、実際に大阪で店を出しているパティシエの方に指導をお願いするなど、学生が理論だけではなく、実践的に学ぶことができるようにしています」

 ――学生が科目を自由に選択できるのはいいことだとは思いますが、そこまで自主的にできる学生は、そんなに多くないのではありませんか。

 「もちろん、学生に興味、関心のまま選ばせてしまうと、何を目指しているのか分からなくなり、いろんなフィールドの科目に目移りして、ばらばらに選択してしまう可能性があります。そこで、必修科目としてキャリアデザイン概論やキャリアプランニングなどの科目を設けて、履修計画の作成を具体的に指導したり、各業界の一線で活躍している方々を講師に招いて講義をしてもらったりするなどして、学生の意識を高めるようにしています。一方、担任制を敷いていますので、その担任教員が学生一人ひとりに履修の仕方などの相談に乗るなどきめ細かな対応しています」

 ――短大は2年サイクルのなかで、実習や演習などの科目も受けなければならず、学生は忙しそうで大変ですね。

 「そうかもしれません。1コマ90分が基本ですが、必修の地域文化論は金曜日の午後6時から7時半の講義です。また、土曜日も午前9時から1日授業をしています。先ほどの製菓衛生士の養成課程であるフードクリエーションのフィールドでは、現役の方を講師として招いていることもあり、その方の仕事の都合もあり、土曜日の夜に来ていただき、午後9時半まで演習や実習の指導をしてもらっています」

 「夜や土曜日も開講しているのは、栄養士の養成で、社会人の方々にも学んでもらえるように便宜を図ってきた伝統があるからです。今後は、キャリア創造学科関連の講座や資格試験対策の講座なども広く開放をしていきたいと考えています」

 ――新編成の学科で1年生が学び始めていますが、どんな学生を育てたいですか。

 「両学科とも意識の高い学生が多く入学してきてくれて、教員も教えがいがあるな、と思っています。キャリア創造学科に120人ほどの学生が入ってきましたが、不景気の影響で就職が厳しくなっていることもあり、半数ほどの学生が10月中旬にあるネイリストの技能検定を受けるため、対策講座を含め熱心に勉強しています。資格取得に対するこうした意欲の高い学生のモチベーションを大切したい」

 「いまの学生は素直なのですが、指示待ちの姿勢が気になります。自分で考え、自分の目標をしっかり定めることができ、社会で活躍できる意識をもった学生を育てて生きたいですね」

大阪夕陽丘学園短期大学(大阪市天王寺区生玉寺町7−72)
ホームページ http://www.oyg.ac.jp/js/

取材してみて一言

上島誠司

短大は手を組み情報発信を
 大学の話をする時、短大を含めず4年制だけの現状を語る場合が多い。大学と聞いて、慶応や早稲田、関西では関関同立などの名前が浮かぶが、短大となるとどうだろう。個別の大学の名前はなかなか思い浮かばない。個別の短大の「顔」が見えないのだ。

 少子化を背景に不景気も加わって、私立大学の経営は厳しさを増している。とりわけ、短大は全体の7割ほどが定員割れ状態で、募集停止や閉鎖に追い込まれるところも増えている。4年制に衣替えする例も少なくないが、効果があがった例をあまり聞かない。

 大阪夕陽丘学園短大の小谷学長が言う「短大は短大としての社会的役割がある」は無論のこと、「専門的な勉強をして早く社会に出て働きたいという学生もいる」という指摘はもっともで、今回の学科再編や実学志向の強化などの改革は興味深い試みだと思った。いわば個別の「顔」が見えるのである。進学を考える高校生にもっと知ってもらえれば、同短大に行こうと考える学生も増えるのでないか。

 こうした試みに取り組む短大は多いのだろう。我々メディアももっと取材をしないといけないのだが、学校数が多いうえ、取材のきっかけとなる情報発信がないので難しい。

 4年制を含めて大学というところは情報発信に関心が薄い、というか上手くない。広報といえば入試広報をさす場合が大半だ。入試以外に一般広報の窓口を設ける有名大学もあるが、短大となると入試広報もままならない例も聞く。

 学校規模が小さく、資金力が乏しいので難しい側面もあるのだろう。しかし、ここは知恵の見せどころ。学内の改革はもちろん大切だが、改革の中身を学外へ発信しないと存在そのものが問われることになりかねない。個々の短大がさまざまな取り組み、改革をする一方、個別の努力を共同して情報発信する必要もあるのではないか。(アサヒ・コム教育チーム 上島誠司)

 このコラムは、おもしろい授業やユニークな行事、新しい学部や学科の内容など、各学校が取り組んでいる教育実践の具体的な中身を取り上げ、読者のみなさんに学校選びの参考にしていただけることを目指しています。小学校や中学校、高校、大学をはじめ、専門学校など教育に取り組むすべての学校を対象に、その取り組みの中心人物(学長や学部長、校長、プロジェクトリーダーなど担当の先生)にインタビューし、その学校の一押しの教育内容を紹介してもらいます。
 読者のみなさんのなかで「この学校のこんな取り組みを紹介してみては」というご提案などありましたら、教えてください。よろしくお願いします。

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