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研究所設立し、英語教師の学力向上図る

清風高等学校・中学校

2009年10月8日

写真教師も小テストを受ける研究会

写真要点をいかにうまくプレゼンできるか緊張の公開授業

写真平岡副校長

写真左から平岡副本部長、大北所長、松井主任研究員

 清風高等学校・中学校は、オリンピックのメダリストを輩出した体操部や、全国大会常連の陸上競技部などスポーツの盛んな学校として知られる。一方で、東大、京大などトップクラスの大学への進学実績も充実していることでも有名な仏教系の学校だ。仏教系らしく、毎朝行われる朝礼での般若心経の読経や、高野山での修養合宿、高野山までの100キロ歩行など特徴的な取り組みを続けている。そんな仏教の精神を支柱に、清風の進学校としての実績を支えている代表的な組織が英語教育研究所だ。受験英語の分野だけではなく、英語の文化的レベルそのものを問う質の高い大学入試問題の研究に英語教員らが取り組み、資質向上を狙った組織だ。今回はその英語教育研究所について、実践の中心的存在である平岡宏一副校長や、清風学園法人本部の平岡弘章副本部長、同研究所の大北周二所長、松井久博主任研究員に話を聞いた。

 ――英語教員の資質向上を狙った英語教育研究所ですが、設立の経緯を教えてください。

 「10年前の1999年に設立しました。それまで、清風は関西トップクラスの私学である関西、関西学院、同志社、立命館の各大学への進学を目指すという目標で頑張ってきました。しかし、生徒の意欲や学力も上がってきたこともあり、東大、京大を狙うことも視野に入れていく必要がありました。そのためには、教員自身が、その問題レベルに対応できる能力があることが不可欠でした。そうしたレベルに対応できるように、教員の資質向上、平たく言えば学力向上を図るために、この研究所を設立しました」

 ――先生の学力向上というのは思い切った手に出ましたね。言うのは易しいですが、実行するのは大変だったのではありませんか。

 「教師はプライドが高いですから、反発がなかったとは言いません。でも、自分の指導能力が上がることですし、何よりも生徒のためになることですから、若い先生を中心に当初から熱心に取り組みました。いまでは中高一貫6カ年コースの英語を受け持つ教員全員が研究員として切磋琢磨(せっさたくま)しています。ベテランの先生から教えてもらい、若い先生も伸びてきていますし、本人も教えることに自信が出てきているようです。また、ベテランの先生も若手の頑張りに刺激を受けています。いい意味での相乗効果が生まれ、研究所設立の狙いは達成できていると思います」

 「本音を言いますと、私学は進学実績を上げていかないと、少子化のなか、生徒募集もままなりません。結果を残さないとやっていけません。受験生の動きを見ていると、そのあたりは毎年シビアに見られているな、と感じます。絶えず、最高の指導ができるように我々教師も能力を磨いていかないと実績はついてこないと思います」

 ――厳しいですね。研究所では、具体的にどんな活動をしているのですか。

 「柱は4つあります。一つ目は、京都大学の入試問題を解答し詳細な分析をした解説を載せた研究雑誌NEXUS(ネクサス)を毎年出すこと。二つ目は、その分析を生徒の前で分かりやすくプレゼンテーションする公開授業を実施すること。三つ目は、毎週、所長自ら指導する研究会を行うこと。最後は、東大など最難関大学を目指す生徒が集まる理IIIコース用の年2回実施される校内模試の問題をオリジナルで作成することです」

 ――研究会をのぞかせてもらいましたが、4人の若手の先生が、大北所長から、いきなり小テストを受けさされておられましたね。研究会というより、英語の授業という感じですね。

 「大北先生は、大阪の有名公立進学校や予備校での指導の経験が豊富です。4年前から清風で英語を担当してもらっていますが、その豊富な経験を実践的なやり方で、若手を中心とした他の先生に伝えていただいています。東大、京大の問題を解くことのできる生徒を教えるには、教師は問題が解けるのはもちろん、その予想問題が作れるぐらいの実力がないといけません。教員の学力向上は不可欠です」

 「毎週金曜日の午後5時半から2時間程度やります。小テストは研究会に出ている先生が、生徒の授業にすぐつかえるものを、と思い出題しています。若い先生の熱意に、教える側もエネルギーをもらっています」

 ――研究雑誌の発行と公開授業、模試作成も、担当する先生方にはプレッシャーではないですか。

 「ネクサスは3月に実施された京大の問題を設問ごとに複数の教員が担当し、解答と解説を載せています。担当した教員の名前が出ていますので、生徒に比較されることにもなるので、プレッシャーはもちろんあります。出来不出来が公表されるようなものですから、問題を解くのはもちろん解説は緊張しますね。公開授業も同様で、夏休み終盤の8月末に主に高校3年生を対象に開きますが、1人20分程度の持ち時間で、どれだけ生徒の関心を呼ぶことのできるプレゼンテーション、授業ができるか、各先生がしのぎを削っています」

 「ネクサスも公開授業も、大北所長と松井主任研究員は毎年参加しています。松井先生は清風出身で、清風の英語教員として30年のキャリアです。ベテラン2人が毎年参加していますから、他の先生も手を抜けない、というのが実情です。模試作成でも、京大の英文解釈は出題年の2年前に出版された英語のオリジナル著作から出されると、大北所長が分析し、予想問題作りに生かしています」

 ――進学実績も上がってきているようですが、今後、研究所をどのように充実させていきたいですか。

 「4つの柱を地道に続け、内容を濃くしていきたい。それにより、進学実績をさらに充実させたい、結果をきちんと出したいですね。また、入試問題指導を通じて、英語で自分のアイデンティティーを伝えられる深い運用能力を身につけさせたいと願っています」

清風高等学校・中学校(大阪市天王寺区石ケ辻町12−16)
ホームページ http://www.seifu.ac.jp/

取材してみて一言

上島誠司

勉強をきちんと教えることが最良の生徒指導
 教科をきちんと教えることが、最良の生徒指導であり、生活指導だ。大北、松井両先生に取材をしていて、このことを強く感じさせられた。

 最近、公立の学校現場にも塾の先生が教えに入る機会が目立ち始めている。教科指導に優れた塾の先生に教えてもらうことにより、児童・生徒の学力を向上させようという試みだ。加えて、学校の先生がその技術に身近に接することで身につけてくれれば、という狙いも透けて見える。しかし、現場の先生から「塾は勉強だけ教えていればいいけれど、こっちは子どもの生活指導もあって、教科指導どころではない」という声を聞くことも少なくない。

 現場の実情は大変だとは思う。だが、学校は本来、勉強するところで、教師は勉強を教えるのが仕事だ。勉強を教える能力は高いのに、学級経営能力や生徒・生活指導力が低いという例を、職員室でもあまり聞かない。

 「後ろ姿で教えられる教師になりたい」という松井先生は、「清風の英語が悪いと言われたら私の責任です」とも話してくれた。「勉強を教える力のない教師の言うことを生徒が聞くはずがない」と平岡副校長は断言する。(アサヒ・コム教育チーム 上島誠司)

 このコラムは、おもしろい授業やユニークな行事、新しい学部や学科の内容など、各学校が取り組んでいる教育実践の具体的な中身を取り上げ、読者のみなさんに学校選びの参考にしていただけることを目指しています。小学校や中学校、高校、大学をはじめ、専門学校など教育に取り組むすべての学校を対象に、その取り組みの中心人物(学長や学部長、校長、プロジェクトリーダーなど担当の先生)にインタビューし、その学校の一押しの教育内容を紹介してもらいます。
 読者のみなさんのなかで「この学校のこんな取り組みを紹介してみては」というご提案などありましたら、教えてください。よろしくお願いします。

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