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1年間の留学義務付け 世界で活躍できる人材育成めざす

同志社女子大学学芸学部国際教養学科

2009年11月5日

写真ネーティブの教員に英語で授業を受ける学生

写真英語学習支援室で勉強する学生

写真飯田毅教授

写真プログラムの報告書

 すべての学生に1年間の海外留学を義務付けた同志社女子大学学芸学部国際教養学科の1期生が、この夏留学を終えて帰国した。すべての学生を留学させるプログラムを持つ例はまだ珍しく、成長した学生の姿に、大学側も「滑り出しは上々だ」と手ごたえを感じている。まだ開設されて3年目だが、昨今の留学熱もあり、入学希望者も多く、北海道から学びに来る学生も出るほどだ。また、このプログラムは文部科学省から今年度の「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」にも選ばれた。この野心的な学科の創設段階から中心的な役割を担っている飯田毅・学科主任に新学科にかける熱い思いを聞いた。

 ――1期生が留学を終えられたそうですね。

 「たくましくなって帰ってきてくれました。8割の学生が留学先の大学で正規科目の単位を取得できました。ネーティブの学生と同じ力がないと単位認定されませんから、学生たちはよくがんばってくれたと思います。また、我々が練り上げたプログラムでこれだけの成果を出せたことで手ごたえを感じましたし、さらに充実させていく課題も見えてきました」

 「2年生の春学期を終えて留学するので準備に追われ、元々勉強しなくてはついていけない厳しいプログラムなのですが、帰国した学生を見ていると、英語力の向上はもちろんですが、授業中でも積極的に発言するなど、主体的に勉強する姿勢が強まったと思います。授業がつまらないとクレームをつける学生まで現れ、我々教員もしっかりやっていかねばいけないなと自省し、気を引き締めています。一方で、親への感謝の気持ちも強くなっているようです。留学にはお金がかかりますし、留学先では何でも自分の力で解決しないといけませんので、いかに自分が恵まれているかを実感できたようです」

 ――そもそもどうしてこのような学科を開設しようと考えられたのか、狙いを教えてください。

 「学生と話していると、留学したいと思っている人は多いですね。特に将来、英語を使って仕事をしてみたいと希望しています。それなら、それを素直に実現できる中身のある留学を柱にしたプログラムを考えたらどうか、という単純な発想です。他の制度で留学しようとすると、大学などで学んでいることに加えて留学準備に取り組まねばならないため、負担が増し大変です。留学を柱にしたプログラムなら集中して取り組め、そうした学生のニーズに合うと考えました」

 ――具体的にはどんなプログラムですか。

 「まず留学は2年次の秋学期から3年次の春学期にかけて、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど英語圏約20大学と提携して実施しています。4年間の教育プログラムもその留学準備期間、留学中、留学後に分けて充実させています」

 「留学前はやはり、留学先の大学で正規科目の単位を取得することが目標ですから、英語力をつけることが主眼になります。大学で学ぶには、批判的思考、国際的に通じる論理的表現などを駆使する力をベースに、リポートの書き方やスピーチの仕方などのスタディー・スキルを身につけることは必須です。スキル科目、演習科目、国際教養科目という3分野から多角的かつ実践的に、英語の運用能力(speaking、listening、reading、writing)を伸ばします。海外の大学に正規留学するには、英語圏の大学へ留学・研究を希望する外国人を主な対象とした、英語能力を測定するテストであるTOEFLで550点以上取ることが求められるケースが多いので、まずは1年終了時で500点取得を目指します」

 「入学してすぐ、英語のプレースメントテストを行い、能力別に1クラス10人程度の8クラスに分けます。その少人数クラスで『Public speaking』『Integrative writing』などのスキル科目を通して徹底的に鍛えます。毎回テストがあったり、宿題が出たりしますし、毎月、TOEFLを受けてもらい実力の伸びを判定し、留学に備えますので、学生は大変です。また、国際教養科目で日本文化などを学ぶ一方、演習科目を通じて、スタディー・スキルを学び、日本語・英語両方で、欧米諸国の特徴である明快な表現を身につけてもらいます。受講科目の8割は英語で実施しますが、母語の日本語を軽視してはいけないと思い、演習科目の中に日本語の能力も向上させるプログラムを組みました。母語の能力を高めないと、外国語の力も向上しません」

 「自主的に勉強したい学生のために『英語学習支援室』を設け、紙ベースの教材だけではなく、インターネット経由で自宅からでもアクセスできるeラーニング教材なども用意。専属スタッフも常駐しアドバイスできるようにしています。こうした学習を通じて留学先で学ぶテーマを自分で決め、7月に1年生を含めた学科の仲間の前でポスターセッションの形で発表してもらいます。帰国した1期生にはこの10月に留学での成果を発表してもらう機会をつくりました。好評だったので、続けていこうと思います」

 ――留学中も指導されるのですか。

 「毎月、電子メールを通じてリポートを提出してもらいます。また、パソコンのテレビ会議システムを使って指導もしています。このシステムを使い、日本にいる私を中心に、アメリカやカナダなどに留学している学生と同時にネット回線を通じて授業を行いました。パワーポイントも画面に映し出せるので、結構充実した授業ができました。もっともお互いの時差を調整するのは大変でしたが」

 「もちろん、生活面の相談などにも乗っています。ただ、近くにいるわけではないので、アドバイスはできますが、行動は学生自ら起こしてもらわないと解決しません。カリキュラムから宿舎の問題まで、自分の希望をかなえるため、直接交渉してがんばっているようです。こうしたことも人間的な成長につながっているように思います」

 ――留学にまつわる学習面以外のサポートも必要ですね。

 「教員だけではなく、職員の専属スタッフとも連携して一人ひとりの学生に合った留学先が選べるように、説明会を開催し最新の情報を提供する一方、個別相談にも応じられるように工夫しています」

 「保護者のみなさんにも本学科専用のホームページや保護者会である栄光会を通じて情報提供をする一方、必要に応じて教員を交えた三者面談も実施しています」

 ――1期生が帰ってきて、2011年春に卒業しますね。

 「英語で3000ワード以上の卒業論文を求めています。帰国した学生の高まったモチベーションを維持しながら、英語力をさらに磨いてもらい、ゼミを中心に自分のテーマを深めていってもらえるように指導していきたい。また、学ぶ環境を整えていきたいと思っています。環境整備という意味でも、国際教養学科の教員の専門以外のことでもテーマに選べるよう工夫できないか検討し、幅広く学べるような形にしたいと思っています」

同志社女子大学学芸学部国際教養学科(京都府京田辺市興戸)
ホームページ http://www.dwc.doshisha.ac.jp/gakubu/gakugei/kokusai/

取材してみて一言

上島誠司

「大人力」磨くチャンス
 取材後、飯田教授に英語学習支援室に案内してもらった。10人ほどの学生が、パソコンでeラーニング学習や宿題に取り組んでいた。居合わせた1期生の田中千晶さん(3年)に話を聞いた。ニューヨーク州に留学していたそうで、日本人は同じ同志社女子大学から行った仲間の4人だけだったそうだ。

 「勉強は大変だったけれども、日本で準備していたので、吸収するのは早く、正規科目で単位も取得できました」と、はにかみながらも自信に満ちた表情で話してくれた。「自分の希望をかなえるために、教授に掛け合う経験もでき、視野が広がった」ともいう。

 いま大学は「面倒見の良さ」を競っている。授業を休んだ学生に連絡を取ったり、食生活まで指導したりと至れり尽くせりの例も見受けられ、過保護ではないかと感じる。飯田教授も「面倒見がいいというのは、手取り足取り指導することではないと思う」と話す。

 留学先では、教員や職員はもちろん親もおいそれと手を出すことはできない。学生自身が自ら考え行動することが求められる。1年間の留学は英語力だけではない、自立した人間として成長する良い機会かもしれない。田中さんの笑顔を見ていて、その可能性を感じた。(アサヒ・コム教育チーム 上島誠司)

 このコラムは、おもしろい授業やユニークな行事、新しい学部や学科の内容など、各学校が取り組んでいる教育実践の具体的な中身を取り上げ、読者のみなさんに学校選びの参考にしていただけることを目指しています。小学校や中学校、高校、大学をはじめ、専門学校など教育に取り組むすべての学校を対象に、その取り組みの中心人物(学長や学部長、校長、プロジェクトリーダーなど担当の先生)にインタビューし、その学校の一押しの教育内容を紹介してもらいます。
 読者のみなさんのなかで「この学校のこんな取り組みを紹介してみては」というご提案などありましたら、教えてください。よろしくお願いします。

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