現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 教育
  4. わが校イチ押し
  5. 記事

職員も授業受け持ち担任も 学生指導に大きな役割

東京未来大学

2009年12月9日

写真学生の話を聞く高橋さん

写真グループに分かれて仲間の発表を聞く学生ら

写真保育の実習をする学生

写真学生らと仲良く写真におさまる堤さんと高橋さん

 創立3年目の東京未来大学は、全国でも珍しい子どもの心を読み解く専門家の育成を目指した「こども心理学部」が看板の単科大学だ。1学年200人で、まだ総学生数は約600人だが、少人数教育を徹底し、きめ細かな対応で学生の満足度を上げている。

 その学生対応の柱になるのが、教員の担任と、キャンパスアドバイザー(CA)と呼ばれる職員の担任が学生の面倒をみるダブル担任制度だ。学習面を担任教員がしっかりと支える一方、職員のCAがプライベートな悩みまでフォローする相談役として、学生一人ひとりの目標実現に向けてサポートしている。CAは学生の相談役を務めるのはもちろん、職員としての入試や教務などの実務もこなし、週1回、「プレゼンテーション」や「カレッジ&キャリアスキルズ(CS)」といった1、2年生向けの授業も担当している。誕生したばかりの大学を支えるCAの高橋夕子・教務主任と、入試係も務める堤隆太さんに話を聞いた。

 ――キャンパスは、武田鉄矢さん演じる「金八先生」が人気を博したドラマ「3年B組金八先生」の舞台になった中学の跡地を利用したそうですね。

 「そうです。あのドラマの中の『桜中学校』があった東京都足立区の中学が廃校になったあとを譲り受けました。新しく作った建物もありますが、校舎や体育館などはほぼそのまま使っています。自転車置き場もそのままに残しており、訪れた方が、懐かしい雰囲気だ、と言われます」

 「東武鉄道伊勢崎線堀切駅のすぐ脇に大学があります。周囲に店が少なくコンビニすら少し歩かないとないので、学生は学内の食堂や教室、校舎の外のベンチで弁当を食べたりしています。学校が好きな学生が多いようで、滞在時間が長いですね。午後8時にキャンパスがしまるのですが、クラブやサークル活動でぎりぎりまで残っている学生が目立ちます」

 ――ダブル担任制度の仕組みを教えてください。

 「1学年200人を1クラス30〜40人に分け、1、2年生はそのクラスに教員とCAの担任がつきます。3年生からはゼミに分かれますので、自分の学びたい教員のゼミに入ります。CAは4年生まで担任が決まっており、卒業するまで面倒をみます。1年生のときにはベースになる教室を決め、慣れるまで、高校までのように学生の居場所を作っています」

 ――CAのみなさんは大学事務もこなしながら、授業もするそうですね。

 「CAは9人います。通常は、正門は入ってすぐの建物の2階の事務室におり、他の大学で日常行われている学生課や教務課などの大学事務をこなす職員の仕事をしています。一方で、高校回りやオープンキャンパス、入試の準備も受け持っているので、入学前の高校生の時から知っている学生が多く、現在600人いる学生の顔はほとんどすべて分かります。学生と職員、教員との距離が近く家庭的な雰囲気があります。これが規模の小さい大学の良さだと思います」

 「CAは全員、非常勤講師の登録をしています。中学や高校の教員免許資格を持っている者も多いです。大学をつくった学校法人三幸学園はもともと30校ほどの専門学校を展開しており、そこで講師をしていた経験者もいます。」

 「受け持つ授業は1、2年次前期の『プレゼンテーション』と、1、2年次通期の『CS』です。これは必修科目になっており、分けられたクラスごとで授業を受けます。CAはこの授業を中心に自分が担任する学生の面倒をみていきます。授業を教えることによって学生の物事のへの取り組む姿勢や考え方、性格などいろいろなことが分かり、相談役としての深みができると思います」

 ――具体的にはどんな授業をされるのですか。

 「大学で学ぶために必要なリポートの書き方や調べ方などのスタディースキルや一般教養を教えたり、就職のためのキャリア教育を施したりするための科目です」

 「プレゼンテーションは、まさに自己表現、人前できちんと話すためのスキルを学ぶ科目です。ただ、いまの学生は人の話をうまく聞くことができません。良い自己表現をするためにはまず、人の話を聞くことができないといけません。聞くことの重要性を分かってもらうためだけに1コマを充てて説明し、実践してもらいます。また、根拠を示しながら説明するやり方など説得力のある意見の述べ方やグループ討議など、演習型で授業を進めていきます。この授業のおかげで、他の科目を教える教員からも学生の授業への取り組み方が積極的になり、授業が進めやすくなったと好評です」

 「CSは必修ではあるのですが、単位認定される科目ではありません。スタディースキルなどの授業もしますが、学園祭の前にはクラスの出し物の相談をする時間に充てたりするケースもあり、高校の授業でいうロングホームルームのような時間でも使っています」

 「ただ、このなかで『成功の法則』という授業も実施しています。成功するための習慣を書籍化して世界中でベストセラーになっている『7つの習慣』というビジネス書を基に授業化されたプログラムです。この授業を通して、就職するためのノウハウだけではなく、就職への心構えやキャリアの積み方、働く意味などを深く学んでもらっています」

 ――CAとして気をつけていることは何ですか。

 「面倒見の良さを大切していますが、手取り足取りにならないように心がけています。事務室にいると、手続きや相談などのために学生がやってきますが、黙って立ったままのケースがあります。思わず、何か用なの、と声をかけそうになるのですが、きちんと自分の用件を伝えられるようになるまで待ちます。この『待ち』が大切ですね。私たちもついつい手を出してしまい、学生の自立を阻害しているのではないか、と日々、反省しています」

 ――1期生が2011年春に卒業します。節目を迎える時になると思いますが、今後の課題を教えてください。

 「やはり、まずきちんと1期生を就職させたいですね。開学したとき、荒海にこぎ出す小船のようだ、と言われました。また、景気低迷の影響で、学生の就職は厳しくなってきています。そんななかでも就職率何パーセントという数字はやはり結果として高い率を出さないといけないと思います。荒波ですが、しっかりした教育を実践してきた証しをきちんと出したいですね。一方で学生数の少ない小規模大学の少人数教育を徹底できるメリットを生かし、さらなるカリキュラムの充実を図らなければいけないと思っています」

 「他大学との連携に目を向けていきたい。これまで、大学ができたばかりで内部の充実ばかりに気を取られてきたというか、自分たちのことだけで手いっぱいで余裕がなかった、というのが実感です。市民講座を開くなど地元足立区との連携、いわゆる地域連携は少しずつ進めてきてはいるのですが、もっと、こちらから外に積極的に開くことが必要だと思っています。もっと、他の大学の良いところを採り入れる必要があると思いますし、まだ創立3年目ですが、我々の良いところを他の大学に知っていただきたいとも思っています。大学連携を進めることで、我々も学生も刺激を受け、より活性化できると思います」

東京未来大学(東京都足立区千住曙町34−12)
ホームページ http://www.tokyomirai.ac.jp/

取材してみて一言

上島誠司

大人への階段 教員は「待ち」を
 高橋先生が受け持つ2年生の「CS」の授業に参加した。まず驚いたのが、「起立」「礼」という1人の学生の号令で「よろしくお願いします」と、高橋さんと学生全員があいさつしたことだった。高校までの授業なら見慣れた光景だが、大学では見たことがない。

 驚いていると、就職、働くことに関する高橋先生の講義が始まった。私語をする者はおらず、じっと講義に聴き入る。メモを取る学生もいる。実に整然と授業が進んでいく。後半は、グループに分かれて、ディスカッションだ。プレゼンテーションという科目で鍛えられているせいか、高橋先生の指示に従い、的確に意見を交換していた。黙りこくったままの学生や、人の意見を聞かず自分の意見ばかりを披露する学生もいない。区切りがつけば、きちんと高橋先生の話を聞いていた。訓練すれば、2年生でもここまでできるようになるのか、と感心した。当たり前のことのようだが、最近の大学生はできないケースが目に付く。

 授業終了後、高橋先生に話を聞いた。大学に来る前、グループの専門学校で教えていたそうだ。そのころは、2年間しか時間がないし、専門学校生は進みたい職業への意識も高いので、教え込む形で接してきたそうだ。「教員室に入るときもノックは何回。しなければ、やり直し、みたいな感じで指導してきました」。「でも大学に来ると、なぜそうしないといけないか、説明が必要でした。教え込むだけではだめだ。支援することもできないと」と気付いたそうだ。

 大学は高校までとは違い、大人になる自立心を養う最後の期間だ。高橋先生の気付きは当たり前のようだが、案外、学生を取り巻く大人ができていないことかもしれない。(アサヒ・コム教育チーム 上島誠司)

 このコラムは、おもしろい授業やユニークな行事、新しい学部や学科の内容など、各学校が取り組んでいる教育実践の具体的な中身を取り上げ、読者のみなさんに学校選びの参考にしていただけることを目指しています。小学校や中学校、高校、大学をはじめ、専門学校など教育に取り組むすべての学校を対象に、その取り組みの中心人物(学長や学部長、校長、プロジェクトリーダーなど担当の先生)にインタビューし、その学校の一押しの教育内容を紹介してもらいます。
 読者のみなさんのなかで「この学校のこんな取り組みを紹介してみては」というご提案などありましたら、教えてください。よろしくお願いします。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

[PR]注目情報

ここから広告です

広告終わり

ジャンル別の最新情報はこちら
  • 大学
  • 中学・高校
  • 通信制高校