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歴史誇るコンピューター教育 コミュニケーション能力開発にも力

京都コンピュータ学院

2009年12月24日

写真ゲームソフト作りを学ぶ学生ら

写真プロジェクト演習で相談をする学生ら

写真KCGアワードで発表する学生

写真学内企業説明会で学生に熱心に話す人事担当者

写真情報処理技術遺産の前に立つ中川由美副部長(左)と小寺敦子室長

 京都コンピュータ学院(KCG)は、日本のコンピューター・情報処理技術の草分け的教育機関だ。まだ日本の大学に情報系学科がなかった1963年に、京都大学の大学院生向けに開いた講習会がルーツという。それ以来半世紀近く、地道に優れた中堅技術者を育てIT業界に貢献してきた。こうした先駆性もあり、景気が低迷している今でもIT業界だけではなく幅広い業界に人材を送り出している。いわゆる「就職に強いKCG」を支える、学生部キャリアセンターの中川由美副部長と、統括本部企画室の小寺敦子室長に話を聞いた。

 ――世界的に景気低迷が覆うなか、学生が経済的な事情で学ぶ機会が奪われないように奨学金制度を拡充したそうですね。

 「昨年来、景気低迷の影響は深刻な状態になっています。求人数を見ていても厳しさを感じます。そんななか、学びたいという意欲がある学生が経済的な事情で進学を断念するのは本当に残念です。そこで、もともとの支援制度に加えて、今年度から新たな緊急支援対策を講じました」

 「その緊急対策は、在学中の授業料、実習費、設備維持拡充費の全額を貸すものから、授業料、実習費用の半額を貸すものまで4種類の無利子での貸与制度です。返済は卒業後、最低月額2万円を、といういわゆる“出世払い”でいいよ、というものです。それぞれ10人から15人の定員でしかありませんが、面接試験をして経済状況と学習意欲を勘案して応援しています」

 「もともとの支援策では、在学中の授業料など全額を免除する特待生のような制度や、毎年10万〜100万円の学費などを免除するもの、月額5万円を無利子で貸与するものまで複数あります。もちろん、在学中に経済的に困窮した学生を救済する制度もあります。こうした奨学金制度は同窓会組織である校友会や企業からの寄付などで成り立っています。経済的に厳しいと思いますが、みなさんこれまでの我々の貢献を理解していただき、協力していただいています」

 「勉強したいのに経済的事情で悩んでいる若者がいたら、ぜひ相談してほしいですね。意欲のある学生はなんとしても応援したいと思っています」

 ――就職指導には自信を持っておられるようですね。

 「毎年、学校内でKCGの学生のみを対象にした企業説明会を開いていますが、200社を超える企業の人事担当者の方々が足を運んでくださいます。極端に言えば、校外で開かれる説明会に参加しなくても、KCGでしっかり技術を学び、就職指導を受けてもらえれば、校内だけで就職を決めている学生がたくさんいます。いま求人は確かに減っていますが、KCGの学生に応募先がないということはありません」

 「学内企業説明会はもともと、説明会のために外に出ると、その会場への往復だけでも貴重な時間が削られ、授業との両立が難しくなるので、しっかり勉強する環境を整えようと思い始めました。これがいまも成り立っているのは、しっかり学んだ卒業生が、就職先で高い評価が得てくれているから、人事担当者の方もわざわざ足を運んでいただけるのだ、と思っています。ただ、IT技術の進歩は速いので、教員も日々新しい技術を身につけることを怠ることなく努め、学生の教育に日々生かしています」

 「もちろんぬるま湯になってはいけないので、就職への気構えを持たせるために学外の説明会や企業訪問を勧める指導も実施しています。最近の厳しい雇用状況を肌で感じてもらうことで、勉強への更なる意欲を高めてほしいと思っています」

 ――就職指導は具体的にはどのように進めていくのですか。

 「専門学校ですから、きちんと就職させることは当たり前ですが、KCGは『学問と技術の統一教育』を理念として大切にしています。それを具現化したものの一つが2004年度に設立した京都情報大学院大学です。ITの専門職大学院として始めて認可を受けました。KCGで学び、より学問的に深めたい学生の受け入れ先を自ら用意しました。また、2005年の法改正で、修業年限が4年以上であることや、体系的な教育プログラムが組まれていることなど、一定の要件を満たした専修学校の専門課程を終えた者には、大学卒業の学士と同等の『高度専門士』という称号が付与されることになりました。KCGは当然、その専門コースを用意していますので、その専門士を取得する学生もいます。来年度、筑波大学の大学院に進む学生も現れました」

 「KCGには1年制から4年制までの5学系18学科をそろえています。アート・デザインを学んだり、ビジネスに役立つITスキルを学んだり、ゲーム開発やハードウエア開発を学んだり、と多彩なコンピューター技術を学ぶことができます。最終学年になりますと、クラス担任に加えて、学生の就職指導を専門に受け持つもう一人の担任がつき、一人ひとりきめ細かく、希望の会社に入社できるように導いていきます」

 ――授業の中身も改善されているようですね。

 「コンピューターの技術者としての技術はもちろんなのですが最近、企業関係者から要求されるのがコミュニケーション能力です。実社会に出て働く場合、一人で仕事をすることより、チームで仕事をすることの方が多いのは周知の事実です。チームの一員としてチームワークを考え、うまく成果を出していける人材が望まれます。技術系の就職を目指す学生はこのあたりが不得手な場合があります。そこで今年度より、1年次から『プロジェクト演習』という科目を設け、グループで質の高い作品を作ることを通じて、要求されるコミュニケーション能力の向上を図っています」

 「プロジェクト演習では、与えられた課題をこなすのではなく、グループで企画から設計、プレゼンテーションまで行うように指導し、そのグループ活動を繰り返すことによって、コミュニケーション能力をはじめ、プレゼンテーション能力、リーダーシップなどを培っていきます」

 「この科目では、他の科目で学んだ知識や技術を活用、応用していく総合力を実感してもらうこともねらっています。グループ内の他のメンバーと協力し、1人ではできない総合制作、作品を作る技術者としての発見をしてもらいたいと思っています」

 「卒業年次の演習では、卒業作品を作ってもらいます。最後は毎年2月に、後輩らの前で卒業研究発表会を催し、各学科の優秀作品を決めます。その優秀作品を集めた『KCGアワード』という公開プレゼンテーションも実施しており、専門の企業関係者の方々に審査員になっていただき、最優秀作品を選んでいただいています。今年度は、スケジュールや電話メモ、メールなどを総合的に情報管理ができるグループウエアを制作した女子学生が最優秀賞に選ばれました」

 ――歴史を誇るKCGですが、今後の課題は。

 「技術者養成の専門学校ということもあり、全体的にまだまだ女子学生が少ないですね。コンピューター技術を身につけていれば、将来、子育てしながら自宅でパソコンさえあれば仕事ができる可能性もあるので、目を向けてもらいたいと思っています。また、目を向けてもらえるように我々も働きかけを強化していきたいと思っています」

京都コンピュータ学院(京都市南区西九条寺ノ前町10−5)
ホームページ http://www.kcg.ac.jp/

取材してみて一言

上島誠司

京都を体現した先駆的教育 コンピューターの進歩と共に
 KCG京都駅前校の1階に、社団法人情報処理学会が「情報処理技術遺産」に認定した初期のコンピューターが置かれている。当時はコンピューターのことを「電子計算機」と訳していた時代だ。こうした高額の機器を購入し、その技術者を育成しようと学生に触らせていたというから、KCG創立者の長谷川繁雄氏の慧眼に驚く。「校舎は粗末だが、設備は最先端」という言葉通り、訪れた専門家が建物に不釣り合いなコンピューターに目を奪われたそうだ。

 一方で、海外へのコンピューター技術者育成支援活動にも積極的で、最初に支援したタイからは、お礼に大量の大理石をもらったそうだ。この大理石は同じく京都駅前校の1階に敷き詰められており、入り口を入るとホテルのラウンジのような優雅な雰囲気をかもし出している。

 いまやコンピューター技術はふだんの生活のあらゆる場面に使われており、我々も気づかないほど一般的になっている。しかし、その本格的な歴史は半世紀もたっていない。中堅技術者の育成により、こうしたすそ野を広げる一翼を担ってきたのがKCGだが、取材を進める中で、冒頭で紹介したようなコンピューター黎明期の逸話が随所に飛び出し、その意味でも興味深い取材だった。

 京都は日本の歴史の原点のような古い街だが、京セラや任天堂などの新分野を築いた企業をいくつも輩出するなど斬新さも持ち合わせている。京都はまさに新旧がうまく合わさった懐の深い面を持っていることも大きな魅力だ。今回、KCGを取材して、コンピューター教育にも、そんな京都らしさがあったことを知ることができた。(アサヒ・コム教育チーム 上島誠司)

 このコラムは、おもしろい授業やユニークな行事、新しい学部や学科の内容など、各学校が取り組んでいる教育実践の具体的な中身を取り上げ、読者のみなさんに学校選びの参考にしていただけることを目指しています。小学校や中学校、高校、大学をはじめ、専門学校など教育に取り組むすべての学校を対象に、その取り組みの中心人物(学長や学部長、校長、プロジェクトリーダーなど担当の先生)にインタビューし、その学校の一押しの教育内容を紹介してもらいます。
 読者のみなさんのなかで「この学校のこんな取り組みを紹介してみては」というご提案などありましたら、教えてください。よろしくお願いします。

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