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いじめられている君へ

すばらしい瞬間必ず来る

児童文学者・あさのあつこさん

あさのあつこさん
 「おれはおまえの文章が好きだ。才能があるぞ」。中学校のとき、先生は私の作文をそんなふうにほめてくれました。作文の内容は忘れましたが、先生の言葉の内容だけはよく覚えています。何となく「もの書き」になりたいと思っていた私は、「夢を捨てなくていいんだ」と、自信を持つことができました。

 そのころの私は、勉強も運動も真ん中の下くらい。「ほかの人とちがう人でありたい」と考えているのに、「ちがいを出すにはどうすればいいの」と迷っていました。「あまりちがいすぎてもこわいな」とも思っていて、「だれか答えを教えて」という気持ちでした。先生がほめてくれたのは、そんなときです。

 もし前日に私がいなくなっていたら、こんなすばらしい瞬間(しゅんかん)に出会えませんでした。こうした瞬間が来るのは明日かもしれないし、10年後かもしれません。でも、君たちより何十年も長く生きてきた大人として、これだけは言えます。「すばらしい瞬間は必ず来ます」  中学野球が舞台の小説「バッテリー」を読んだ若者から手紙をたくさん受け取りました。「元気が出た」「明日、学校へ行ってみます」。そんな手紙を受け取ると、「自分がだれかを支えている」と、とてもほこらしく感じました。「もし、私がいなかったら、その人を元気づけるものが一つ減っていた」と。

 人は生きていれば必ず、だれかに支えられるだけでなく、だれかを支えています。もし、あなたがいなくなれば、あなたに支えられるはずだった大勢の人を悲しませることになるのですから。

(朝日新聞2006年11月14日掲載)

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