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いじめられている君へ

それでも、話してみよう 

落語家・林家正蔵さん

林家正蔵さん
 小学校低学年のとき、僕はよく友達から、からかわれました。父親は林家三平という人気のある落語家でしたから、「おまえも何かおもしろいことを言え」とか、テレビに映る父親の髪形を引き合いに出して「もじゃもじゃの息子」とか。とてもつらかった。

 それを誰に相談すればいいのかわからない。父親は仕事が立て込んでいたし、家の人はみんな忙しそうで、言い出せない。ずっと一人で我慢していました。

 落語家の家には、住み込みで修業する内弟子という人たちがいて、あるとき一番若いお弟子さんが声をかけてくれた。乱暴な口調で「おい、何かあったろ」って。僕はつらいことや、いやなことを一気に話しました。とても楽になったことを覚えています。

 君の家の人も忙しいかもしれない。学校の先生も話しづらい雰囲気に見えるかもしれない。でも、話してみたら、どうですか。わかってもらえないと思ったら、また別の人に話してみてください。君の話を聞いてくれる人は、必ずいます。  僕は大人になって落語家になりました。人に話をすることが仕事です。話すことをやめたら、自分の気持ちを人に伝えることはできないのです。

 落語に出てくるのは、変な人、そそっかしい人、どうしようもないなまけ者と様々ですが、みんなよく話しあいます。馬鹿馬鹿しいことでも、一生懸命に。そんな落語を、いいもんだと思って、聴きにきてくれる人が、最近はずいぶん増えました。何でも人に話す。それをきちんと聞く。そのことの大切さが分かる大人は、君が考えているより、ずっと多いと思います。話すって気持ちのいいものですよ。

(朝日新聞2006年11月18日掲載)

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