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いじめている君へ

人を傷つけても後悔する

作家・平野啓一郎さん

平野啓一郎さん

 いじめている人も、家庭の問題など自分でどうにもならないトラブルを抱えているのかもしれない。でも、人を傷つける形で解消(かいしょう)しても、いずれきっと後悔(こうかい)することになると思う。人に嫌なことをすれば、本当は自分も必ず心のどこかで嫌な思いをしているはずだから。いつか必ずそういう自分を許せないと思う時がくる。自分自身を許せない、好きになれないということは、一番つらいことだ。

 いじめで追いつめられて自殺する子も不幸だけど、追いつめた子も不幸になる。人生には取り返せることと、取り返せないことがある。後悔してもすまないことをしてしまった自分と一生つきあうのは苦しいことだ。友だちは人生の中で変わっていくけれど、人生の中で一番長い間つきあっていくのは自分自身なのだから。

 僕の子どものころも、いじめの芽はあったが、度を超す前にブレーキをかける雰囲気(ふんいき)がクラスにあった。正義(せいぎ)を実現(じつげん)するとか、そういう立派な自分を目指すのは大変なこと。でも、いじめているのは「イタい」という感覚(かんかく)をクラスの中につくっていくことは、だれでもできる。ふだんの会話の中で「集団で一人に鬱憤(うっぷん)ばらしをするのはやばいよね」と語ってみよう。

 自分がいついじめられるかわからない、いじめる側に立てばいじめられない、という思いもあるかもしれない。一人で孤立するのがこわければ、3、4人でいじめが嫌だという態度をとろう。クラス全員が友だちじゃなくても、5、6人いれば事足りる。ほかのクラスにも友だちをつくろう。それから異性(いせい)の目も考えてみよう。彼氏がいじめっ子で喜ぶ女の子はいないはずです。

(朝日新聞2006年12月9日掲載)

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