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いじめられている君へ

世の終わりと思わないで

物理学者・小柴昌俊さん

 「これをやりたい」というものは、だれに言われても見つからない。自分で試してみて、「これなら」と思うものを見つけなさい。  それが見つけられれば、ほかの子にいじめられても、死のうとは思わないはずだよ。

 ぼくは小児マヒになって、右腕が不自由になった。いまでも少し障害が残っているけどね。それで、夢だった軍人と音楽家はあきらめた。入院中に担任の先生が持ってきた本が、物理学とはこういうものだと教えてくれた。

 その後、大学院でおもしろさに引き込まれたが、振り返れば、あの本との出会いが始まりだったと思う。

 君は、いじめと出会うこともあるかもしれない。でも、僕にとっての物理学のような出会いもある。それを大事にすれば、自分で進んで何かをする力も自然にわいてくる。

 いまのお母さんたちは、子どもの試験の成績をよくすることで頭がいっぱいだよね。だから塾にかよわせることになる。でも、テストの点数は、学校で先生が教えてくれたことを理解して、覚えて、こたえを書く能力を見た結果でしかない。それだけで人を評価することはできない。

 そういう受け身の能力のほかに、もう一つ大事な能力が、さっき言った自分で進んで何かをする力だ。二つの力のかけ算が、すべての人間の力と言えるのではないのかな。

 もし、君がいじめられたとしても、この世の終わりだと思ってしまわないでほしい。

 子どもたちは一人ひとりまったく違う。さまざまな出会いをきっかけに、夢中になれるものを見つけてほしいな。

(朝日新聞2006年11月19日掲載)

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