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いじめている君へ

嫌だって気持ち、かっこいい

演出家・宮本亜門さん

宮本亜門さん
 人はみんな、自分の中にいろんな感情を抱えて生きています。優しさ、冷たさ、強さ、弱さ。僕の中にも、良い部分と悪い部分とがいりまじっています。様々な気持ちのバランスがうまくいっていないとき、人はひどいことをしてしまいます。

 小学校の5年か6年のときです。雨の日に、5人の仲の良い友達と歩いていたら、大きなトノサマガエルが道の真ん中にいました。

 一人が傘でつついたら、ひっくり返ってしまいました。もう一人が足で軽くけってみると、体をふくらませました。「おもしろいな」。次の子は少し強くけった。トノサマガエルはボールのように大きくふくらんだ。友達は次々にカエルをけったり、ころがしたり。最後には、僕もけりました。

 本当は嫌だったんです。生き物をけりたくはなかった。でも、みんなに「やめよう」とは言えないし、「自分はやらない」とも言えなかった。嫌だな、という気持ちにふたをして、笑いながら一緒にけった。あのときの嫌な気持ちは、今も消えていません。

 ひどいことをしているとき、心から楽しいと思っている人はいません。君が、だれかをいじめているとしたら、どこかで、そんな自分を嫌だなと思っていることでしょう。その気持ちにふたをして毎日をすごしているのだろうと思います。

 君には、勇気をもって、そのふたをあけてほしい。ひどいことをするのは嫌だと感じている君は、とてもかっこいいと思います。君の中にいる、そういう自分を大事にして、とても力のいることだけれど、いじめをやめる努力をしてみてください。君には後悔してほしくないからです。

(朝日新聞2006年11月21日掲載)

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