小さな世界、出てごらん
作家・カヌーイスト 野田知佑さん
ぼくは四国の吉野川で「川の学校」の校長をしている。毎夏、小5から中3までの子どもを集めて、川遊びを教える。今年の参加者のA君は中1。先日、ぼくに手紙をくれた。
A君は、最近までいじめっこだった。グループをつくって、変わったところがある子や生意気な子、ぼんやりした子をいじめていた。
A君は、「川の学校」に入って驚いたらしい。彼の学校なら、いじめにあいそうな子がたくさんいたからだ。でも、一緒に遊んでいるうちに、その子たちが違って見えた。
どんくさそうに見えた小6の女の子は、エビをとるのがうまくて、夜、たき火の前で話をすると、自分の知らないことをたくさん知っていた。カヌーが転覆(てんぷく)した時、まっ先に助けてくれたのは中3の男の子だった。体が大きく、力もある。魚とりもうまい。
それに講師のおじさんたち。魚を素手(すで)でつかんでとり、コイやナマズをもりで突いてくる。大人はなんてかっこいいんだと思った。
自分がやっていたことが幼稚(ようち)なものに感じた。人をいじめるなんて、後味が悪いし、格好悪い。小さな世界でいい気になって、はずかしい。「ぼくは早く大きくなって、かっこいい大人になりたい」。その手紙はしめくくってあった。
A君は他人をいじめるみじめで小さな世界より、もっと自由で楽しい場所があることを知り、いじめから脱出した。
自分の小さな空間から出て、それまで知らなかった物や人に会うこと。それは君の人生を変える。いじめている君へ、一人で外に出て、いろいろな人に出会ってごらん。
(朝日新聞2006年11月30日掲載)
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