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いじめている君へ

その安心感は自由を奪う

精神科医・斎藤環さん

斎藤環さん
 いま、だれかをいじめている君に伝えたいことがあります。

 君は、ひょっとすると、家でつらい思いをしたり、以前に自分自身がいじめられたりして、嫌な経験をしたことがないだろうか。

 そのはけ口として自分より弱い相手や、すでにいじめられている友達に対していじめたいという気持ちになっていないだろうか。

 私は、仕事で、そういう例をたくさん知っています。

 君のような気持ちは、実は、特別なものではありません。その証拠に、いじめは大人たちの世界でもよくあることなのです。

 だれかをいじめると、ときには気分がよくなってしまうことがあります。進んでだれかをいじめなくても、いじめる側にいると、自分が安心できる面もあります。

 でも、人をいじめることで得られる安心感は、たしかなものではありません。それをやめると、今度は自分が、いじめられるかもしれないという怖さがあります。実際はひどく不自由な気持ちで暮らすことになります。それは、大人の世界もまったく変わりません。

 だけど、君には、ここで立ち止まって考えてほしい。大人になっても、だれかを傷つけるような人になりたいかどうか。いじめを続けることで、失われるものがたしかにあります。自分自身が大切で、かけがえのない人間であるという自覚が、いちばんに損なわれます。

 もし、それが大事だという感覚を失わずに、本当に自由な気持ちでいたいのであれば、どこかではっきりと気持ちを切り替えて、いじめをやめる勇気を持つことが絶対に必要です。

(朝日新聞2006年11月15日掲載)

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