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2011年度中学受験特集

ゲリラ豪雨、なぜ起こるの?

2011年1月4日

写真拡大ゲリラ豪雨(ごうう)が降(ふ)る仕組(しく)み 今年(ことし)6〜8月(がつ)に降(ふ)った1時間雨量(じかんうりょう)の記録(きろく) 短(たん)時間豪雨発生回数(はっせいかいすう)の推移(すいい) <グラフィック・宮下洋輔>

 この夏は、狭(せま)い地域(ちいき)に突然(とつぜん)、激(はげ)しい雨が降る「ゲリラ豪雨(ごうう)」が各地で発生しました。過去(かこ)に例がないほどの大雨は、土砂崩(どしゃくず)れや洪水(こうずい)をもたらし、大勢(おおぜい)の人が亡(な)くなりました。ゲリラ豪雨はなぜ起こるのでしょうか。どう備(そな)えればいいのでしょうか。(2010年9月11日掲載)

 ●急激な積乱雲の発達が原因

 どんな雨が「ゲリラ豪雨」か、実は公式の定義(ていぎ)はない。マスコミの報道(ほうどう)で生まれた言葉と言われていて、気象庁(きしょうちょう)は使っていない。一般(いっぱん)には、数キロから10キロ四方ほどの狭い範囲(はんい)で1時間に50ミリを超(こ)えて集中的に降る豪雨を指すことが多い。50ミリを超える雨というと、傘(かさ)は役に立たず、まるで滝(たき)のような強さで降る雨の音で、話し声も聞こえない。土石流などの災害(さいがい)が起こりやすくなり、都会では地下街に水が流(なが)れ込(こ)んだり、マンホールから水が噴(ふ)き出したりする。

 7月、1時間で64ミリの雨が降った広島県庄原市(しょうばらし)では、土石流で28棟(むね)の家屋が壊(こわ)れ、住民1人が亡くなった。岐阜県(ぎふけん)や島根県、鹿児島県(かごしまけん)などでも集中豪雨による土砂崩れや洪水が起こり、死者・行方不明者は全国で計21人に上った。

 東京都では7月5日に板橋区で1時間に107ミリの雨が降り、約800棟の住宅が浸水(しんすい)した。2008年7月には、神戸市(こうべし)の都賀川(とががわ)で、川べりで遊んでいた児童ら5人が、豪雨による急な増水(ぞうすい)で流され、亡くなっている。

 こうしたゲリラ豪雨をもたらすのは、急激(きゅうげき)に発達する積乱雲(せきらんうん)だ。日差しで地面が熱せられて地表近くの空気の温度が上がったり、暖(あたた)かい空気と寒気がぶつかったりすると、上昇気流(じょうしょうきりゅう)が起きる。強い上昇気流は雲を作りながら、垂直(すいちょく)方向にぐんぐんと大きくなり、高さ10キロもの積乱雲になる。ここに海風など暖かく湿(しめ)った空気が吹き込むと、雲の中に大量の水が蓄(たくわ)えられ、支(ささ)えきれなくなったところで一気に雨となって降り注ぐ。

 一つの積乱雲の寿命(じゅみょう)は数十分ほどで、この間に強い雨が続く。気圧(きあつ)の状態(じょうたい)や地形によっては、同じ場所で積乱雲が繰(く)り返し発生し、1カ所の雨量が100ミリ以上になることもある。ビルやアスファルトに覆(おお)われ、ヒートアイランド現象(げんしょう)の影響(えいきょう)を受ける都市部の方が起こりやすいという指摘(してき)もある。

 ●発生増え、被害出やすく

 気象庁によると、1時間に50ミリ以上の雨が降る回数は過去30年間で増える傾向(けいこう)にある。80ミリ以上の雨の発生回数も、1998〜2009年の平均(へいきん)は76〜86年の2倍近くになっている。

 河川(かせん)の治水や都市の排水機能(はいすいきのう)は、過去の雨の記録などから1時間50ミリ程度の雨量を想定して設計(せっけい)されてきた。ところがここ数年、50ミリを超える雨の発生が増え、各地で観測史上1位となるような大雨が降るようになった。このため、中小の河川では想定を上回る増水が起こり、都市部では下水管の許容量(きょようりょう)を超えた雨が道路にあふれて冠水(かんすい)するなどの被害(ひがい)が出やすくなっている。

 今のところ、ゲリラ豪雨の発生を予測(よそく)することはできない。ただ、少しずつ対策は進んでいる。国土交通省はミサイルの追尾(ついび)にも使われる新型レーダーを東京、大阪、名古屋の3大都市圏(けん)などに配備した。これまでは1キロ四方ごとの観測(かんそく)しかできなかったが、より細かく250メートル四方ごとに観測ができるようになり、ゲリラ豪雨をとらえやすくなった。国土交通省のホームページで観測データを見れば、避難(ひなん)の参考にもできる。

 民間気象会社のウェザーニューズも、8月から移動式の小型レーダーを運用し、急に発達する雨雲を素早(すばや)く見つけることを目指している。ウェザーニューズの有料携帯(けいたい)電話サイトに登録すれば、利用者から寄せられた空模様(そらもよう)の情報(じょうほう)をもとに、限られた場所に降る雨を知らせるメールを受けとれる。

 天気予報で雨が予想された時には、細かい気象情報も参考にして、突然の天気の変化に注意することが大切だ。(宋光祐〈そうこうすけ〉)

 ◆はってんはっけん

 ◇学んでみよう

 <1>竜巻

 <2>雲

 <3>台風 

   *

 <1> ゲリラ豪雨と同じ積乱雲によってもたらされる。積乱雲の下で起こる強い上昇気流がもとになってできる激しい渦巻(うずま)きで、直径が数十〜数百メートルの大きさになる。2006年には宮崎県延岡市(みやざきけんのべおかし)と北海道佐呂間町(さろまちょう)で大きな被害が出た。気象庁は08年から竜巻(たつまき)注意情報の発表を始め、今年5月からは、1時間先までの進路などの予想を10分ごとにホームページで公表している。

 <2> 小さな水滴(すいてき)が集まって作られる。この水滴は、地表近くの空気に含まれた水蒸気が上昇気流に乗って空高く上がり、上空で冷やされてできる。水滴の中心には海の塩や火山灰(かざんばい)が含まれている。雲の形は大きく分けて10種類。小さな雲が魚のうろこのように広がる巻積雲(けんせきうん)や、綿(わた)のような積雲などがあり、形によって現(あらわ)れる高さも変わる。

 <3> フィリピンなど熱帯地域の海で発生し、最大風速が毎秒17.2メートル以上になった低気圧。海外ではハリケーンなどと呼(よ)ばれる。中心の気圧が小さいほど勢力(せいりょく)が強く、台風が近づいた地域では非常(ひじょう)に強い風が吹き、大雨が降る。年間に平均で26.7個発生し、そのうち10.8個が日本に接近(せっきん)、2.6個が上陸する。今年は8月と9月に一つずつ上陸したが、発生数は今のところ少ない。

◇バックナンバーは、アスパラクラブのウェブサイト「共育」でもお読みいただけます。


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