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退院、そして育児本番!(女性編)

2008年3月3日

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 帝王切開から5日後、食事も普通食になり、赤ちゃんと同室で世話できるまでに回復した。それでも傷口が痛くて、笑うこともせきをすることもできない。自然分娩なら、産後翌日にスタスタと歩いている人もいたが、そうはいかなかった。入院日数も自然分娩の人より数日多くかかり、10日目で退院した。

 術後2、3日目の回診の時だったろうか。執刀医に「実は手術は大変だったんですよ。癒着がひどくて開腹するのが一苦労でした。子宮内膜症ですよ」と言われた。確かに生理痛はひどかったが、考えたこともなかった話でびっくりした。おなかがすぐに張って痛くなったのも、それが原因かもしれないと言われ、腑に落ちた。

 夜間も母子同室になってからは、赤ちゃんの世話で夢中になり、体力もみるみる回復していった。だが、沐浴指導では、長い寝たきりの生活ですっかり足腰が弱っていたので苦労した。へっぴり腰で何とか赤ちゃんを抱くのだが、長時間抱えていることができず、助産師さんに助けてもらった。壊れてしまいそうで、産着を着替えさせるのも冷や汗だった。おむつを替えるにも、お尻の皮膚が薄くてむけてしまいそう。そっとお湯をたっぷり含ませた脱脂綿でふいてやる。つめを切るのもこわごわだった。小さな細い指にちゃんと生えていて、結構するどい。伸びたつめで自分の顔をひっかいて傷をつくってしまうので、赤ちゃん用のつめ切りで切ってやらないといけない。夜中に気づくと、顔にみみず腫れができていて、翌朝あわてて助産師さんに切ってもらった。

 母と一緒に、寝ている赤ちゃんを観察していると、両手両脚を左右に広げて時折、手をムニムニ動かしている。ははあ。これだな。2人で顔を見合わせた。

 「脇腹がくすぐったかった正体はこれよ」と母。おなかにいた時も、おそらく同じような体勢で、ムニムニしながら寝ていたに違いない。それから、赤ちゃんはよくしゃっくりをして、そのたびに足がピクピク動く。なるほど、どうりで下っ腹をよくトントンとけられるように感じたわけだ。

 眺めれば眺めるほど、よくもこんなに大きな、むちむちした赤ちゃんがおなかの中に入っていたな、と我ながら感心した。両手両脚を左右に広げた姿は、まるでつぶれたカエルのよう。「逆子よ直れ」と念じても、これではおなかの中で回転するのはとても無理だっただろう。彼女もさぞ窮屈だったろうと思った。

 退院するまでに、助産師さんにいろいろ教わっておかなくちゃ。思いつく限りの質問をした。鼻くその取り方。添い乳の仕方。うんちの色のこと。産後の骨盤の矯正の仕方。とても親切に教えていただき、母は「こんなに色々親切に教えていただけるなんて。私の時代とは違うわ」と感激していた。

 入院中は毎朝、新生児室で助産師さんが赤ちゃんを順番にお風呂に入れてくださる。約1時間後に迎えに行き、授乳室でお母さん仲間と一緒におっぱいをあげる。ベビーケースの札を見ると、生まれた日時が私の赤ちゃんの3分前の男の子がいた。不思議な縁を感じ、母親同士でおしゃべりがはずんだ。産後直後でみな疲れ切ってはいるが、部屋にはお互い大仕事を無事に乗り切ったという連帯感が漂い、お母さん仲間といろいろお話しできたのは楽しいひとときだった。

 赤ちゃんの名前は退院前日にようやく決まった。出生届を出す締め切りギリギリだった。夫が何度も漢和辞典や名付け事典とにらめっこをしながら、考えてくれた。実は、私は胎児に名前をつけていて、9カ月間もその名前に親しんでいたので、ほかの名前が思いつかなくなっていた。ところが周りの人は「その名前はやめたほうがよい」と口をそろえる。夫には「いつか犬を飼ったらつけよう」と言われる始末。結局別の名前に落ち着き、彼女の愛称は「ちぃちぃ」になった。

 退院日はバタバタだった。夫に急な仕事が入り、あわてて荷物を運び出した。入院した1カ月半前はまだ暑かったのに、冬はすぐそこまで来ていた。ナースステーションの前に助産師さんや看護師さんが集まってくださり、お別れをした。あわてていたので、一緒に記念撮影ができなかったことが悔やまれる。ちぃちぃをしっかり抱き、タクシーに乗り込んだ。車の窓から外を眺めると、公園の木々は美しく紅葉している。さあ、いよいよ育児本番!

プロフィール

女性記者プロフィール(07年10月15日から)

1995年朝日新聞入社、34歳。前橋、福島総局、東京・名古屋本社学芸部などを経て、04年9月から東京本社文化グループに在籍。現在、第一子を出産し育休中。

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