産後の1カ月は実家で過ごした。両親が寝室にしていた和室を母子で占領。真冬の寒い中、両親はフローリングの部屋に移ってくれ、申し訳なかった。
赤ちゃんに適した室温は20度前後、湿度は60%という。温度計と湿度計とにらめっこしながら、室内の環境に気を配った。風邪をひいてしまうと授乳に影響が出るので、私も体調にはとても気を遣った。体力が落ちているところで、2、3時間置きに授乳とおむつ替えをするので風邪を引きやすい。寒気を感じると、母が作ってくれたショウガ湯で乗り切った。母が3食作ってくれた野菜中心の和食のおかげで、おっぱいの出は順調で、出産までに12キロ増えた体重も10キロ落ちた。
1日の最大のイベントは、ちぃちぃの沐浴。午後になると、風呂場の浴槽のふたの上に、会社の同僚から拝借したベビーバスを乗せ、41度に設定したお湯を張る。同じく同僚から拝借した、ラッコの形をした温度計を浮かべて温度を確認。居間の食卓に広げたバスタオルの上で服をそうっと脱がせる。沐浴ガーゼでくるんだちぃちぃを抱え、母と一緒に浴室に向かう。私はちぃちぃを湯船につけている係。下っ腹に力が入らないので、丸いすに腰掛けて、ちぃちぃを何とか支える。母は「はあい、頭を洗いますよぉ。次はお首ですよ」と優しく声をかけながら、ちぃちぃにお湯をかける。
沐浴指導で、赤ちゃんは元々水の中にいたので、耳に水が入らないよう、あまり神経質にならなくても大丈夫と教わっていた。それでも、いざ耳に水がかかると、母も私も心配になり、つい「あっ、右耳に水がっ! 気を付けて!」「ちゃんと支えてちょうだい!」と二人ともピリピリしてしまった。
ちぃちぃは、お風呂がこの上なく好きだ。お湯につかっていると、うれしそうに顔をほころばせる。洗髪が特に好きなようで、途中で必ず大あくびをする。リラックスしすぎて、たまに湯船でうんちもする。実は病院で沐浴指導を受けていたときも、してしまった。今でもそれは変わらない。母に聞くと、私も赤ちゃんのころ、湯船でうんちをしていたらしい。同居していた曽祖父は「ミルク風呂だ」と言って入ってくれたそうだ。ということは、私の体質が遺伝したのか。
ただ、母が小指をたてていたちぃちぃと「もうお風呂ではうんちをちまちぇん。やくしょく(約束)ちます」と指切りげんまんをしてからは、分かったのかどうか、あまりしなくなった。
ちぃちぃを湯船から出すと、また食卓のテーブルの上に広げたタオルへ移動。そうっと体を押さえるようにふいてやる。急いでおむつをして産着を着せてやる。たまに、間に合わずにおしっこをしてしまうこともあるけれど。それからが、母と私の一番の楽しみ。赤ちゃん用の体重計に乗せてみる。日に日に体重が増えていく。肥満児になるんじゃないかと心配になるくらい。1日に50グラムのペースで増えていくこともあった。毎日量っては、夫に報告して喜び合った。
この体重計は高校時代の親友のお下がりだ。彼女もママ友からもらったそうだ。すぐに使わなくなり、置き場所をとるだろうからといったんは断ったが、次第に体重が順調に増えているかどうかが気になってきて、結局送ってもらった。
「赤ちゃんのお世話しかすることがないし、極度の心配性だからちょうどいいんじゃない」と彼女。
さすが、お見通し。3人の母親である彼女は、いつも的確な助言をくれる。いつか私も彼女の役に立ちたいと思うのだが、教えてもらってばかりで頭のあがらない関係は、放課後に残って私の大の苦手の数学を教えてくれた高校時代から変わらない。
大人にとってお風呂上がりの1杯のビールは格別のようだが(私は下戸なので分からない)、ちぃちぃにとっては、お風呂上がりの一眠りがたまらないようだ。産着を着せると、すぐ眠そうになる。布団に置くと、1日のうちで一番気持ちよさそうにスヤスヤと眠る。
日中はとにかく、よく寝てくれる。長いと4時間ぐらい続けて眠る。おっぱいとオムツ交換で起きるが、その後の寝付きもよい。だが、夜になるとそうはいかない。寝付きがよくならないかと、お風呂の時間を昼間から夜に変えてみた。名案と思いきや、そうは問屋がおろさなかった。
1995年朝日新聞入社、34歳。前橋、福島総局、東京・名古屋本社学芸部などを経て、04年9月から東京本社文化グループに在籍。現在、第一子を出産し育休中。