午前1時半になると、どういうわけか、ちぃちぃは必ず目を覚ます。どんなにぐっすり眠っていたとしてもだ。今晩ぐらいは、さすがにこれだけ熟睡しているから大丈夫だろうと思っても、午前1時半になると、ふぇっふぇっふぇっと泣き出す。
そこからが大変。昼間はあんなにおとなしいちぃちぃが、夜になると豹変する。なかなか寝付いてくれず、おっぱいをやったり、抱っこをしたり。カーディガンを羽織り、毛布にくるんだちぃちぃを抱っこして、居間をぐるぐる歩く。壁には私の父方の祖母が手縫いしたベッドカバーと、母方の祖母が手縫いしたバッグが飾ってある。母が、祖母たちのご加護がありますようにと、安産を祈願してかけたそうだ。
花柄の刺繍やパッチワークの模様を、ちぃちぃに見せながら何度も話しかける。「このお花はね、ツバキっていうのよ。ちぃちぃのひいおばあちゃんが好きだったお花よ」
なかなか寝てくれないと、午前4時過ぎまで抱っこして、居間をグルグル歩いていることもあった。やっと寝ても、午前6時過ぎには、また泣き出す。さすがに意識がもうろうとして、その時間帯はオムツをうまく替えてやることができず、ますますちぃちぃを泣かせてしまう。
午前9時前にまた起きるのだが、それからのちぃちぃは寝付きがとてもよくなる。朝がくるたびに、ほっとしつつ、私もぐったり。かつて、助産師さんが「赤ちゃんは、夜行性だから夜になるとお目々がぱっちりするのよ。大変よぉ」と笑って話してくれたことを思い出した。そういえば、ちぃちぃはおなかにいたときから、夜になると元気におなかをけっていた。特に午前1時半ごろになると活発だった。訪問してくれた保健師さんによると、赤ちゃんの体内時計は25時間。徐々に体内時計は24時間に調整されていくのだが、1日の中でどうやってもぐずる時間帯があるという。
私の隣で寝ているちぃちぃがあまりにも熟睡していると、時々生きているのか心配になってしまう。何度もガバッと起きては、鼻の下に手を当てて、息をしているか確かめてみる。小さな小さなお鼻で息をしているので、よく分からない。体の一部が呼吸で動いているか、じっと観察してみる。それでも心配になると、指でつんつんしてみる。結局起こしてしまうこともあった。だが、起こされてぐずり始めると、ああ、元気なんだと、安堵した。
ちぃちぃは当初、タオルを敷いた二枚重ねの座布団の上に寝ていた。身長は50センチ足らずなので、十分の大きさだった。ところが、日中は座布団で熟睡してくれるのだが、夜になるとぐずるようになった。試しに、私の布団に移してみると、おとなしく寝てくれる。一緒に寝ると、うっかり踏みつぶしてしまわないか気が気ではない。ちぃちぃはぐっすりだが、私はよく眠れない。ちぃちぃの頭は、三角おにぎりのような形をしていて、大きい。布団から出ている頭だけをみると、一体どんなに大きな体をしているのかと思うが、掛け布団をめくると、ちんまりと小さなからだが芋虫のように縮こまっている。3頭身といったところか。
そんな小さな体なのに、存在感は抜群。いつのまにか私の布団を占拠し、私は端っこで気を遣いながら寝るようになった。もう熟睡しただろうと思って、座布団に移すと、まもなくふぇっふぇっと泣き出す。一度、寝ぼけてちぃちぃをひじ鉄しかけてからは、一緒に寝ることはやめた。ちぃちぃが熟睡すると、私がそうっと布団を抜け出して、もう一枚敷いておいたぺっちゃんこの薄い布団に移るようになった。
寝てばかりのちぃちぃだったが、せっせと携帯で写真をとっては、夫に送った。遠方に住んでいて、なかなか会いに来ることができない義父母にも様子を知らせたい。大の子ども好きの義父は一念発起して、初めて携帯アドレスを取得した。夫が電話で操作方法を伝授して、何とか写真や動画を見られるようになった。しばらくは、夫や私の携帯に、義父母から1日に何度も無言電話がかかるようになったが。「もしもし」と言うと、なにやら懸命に写真を見ようと操作している音がする。メールを見ようとして、間違って電話をかけているのだ。最近は、電池がもったいないと携帯の電源を切っていた母も、初めてアドレスを取得し、メールのやりとりができるまでになった。恐るべし、孫力!
1995年朝日新聞入社、34歳。前橋、福島総局、東京・名古屋本社学芸部などを経て、04年9月から東京本社文化グループに在籍。現在、第一子を出産し育休中。