現在位置:asahi.com>教育>子育て>朝日新聞記者の子育て日記> 記事 防災意識に火がついた(女性編)2008年04月21日 防災にうるさい母親の影響で、昔から地震の備えには熱心だった。会社では走って逃げられるようスニーカーを常備し、火災で猛毒の煙が立ちこめても無事社外に逃げ出せるよう防毒マスクを引き出しにしまっていた。ちぃちぃが生まれてからというもの、私の防災意識はさらに強まった。こんなに苦労して産んだんだもの。絶対に、家族で生き延びてやる!私が、家族を守らなくては。 そんなわけで、新居のマンションに引っ越してからは、せっせと防災の準備に精を出した。寝室となる和室にはいっさい家具を置かず、居間にも必要最低限の家具しか置かなかった。テレビやファクスの下には、グラッと来てもすぐに転倒しないように、粘着性のストッパーを張った。タンスや冷蔵庫には、夫に天井までのつっかえ棒をはめてもらった。カセットコンロやレトルト食品なども買い込んだ。 ところが、防災の準備半ばというときに、切迫早産で入院してしまった。自宅に戻ってからは、育児でてんてこ舞いの日々。とても防災グッズを買いにいく時間はない。ちぃちぃが生後2カ月を過ぎて、ようやくその機会が訪れた。注文している食品の宅配業者のカタログに、防災フェアをうたった週があったのだ。 早速、いろんなものを買い足した。簡易トイレ20回分に保温シート。手巻き式携帯電話充電器とラジオがついた懐中電灯。水を入れるタンク。シートベルト切断カッターのついたハンマー。ゆがんで戸が開かなくなった場合に必要な斧。斧は防犯も兼ねて、寝室に置くことにした。近くのドラッグストアで、おっぱいが出なくなったときに避難所で飲ませるための粉ミルクやミネラル水、カイロなども買い足した。 さんざん買いあさったが、忙しくて、まだ持ち出せるようキャスターにまとめていない。今後の課題だ。 日頃の生活にも、とても気を付けている。ちぃちぃを寝かせる位置は、照明の下を外すなど、寝室の中でも一番安全そうな場所を選んでいる。押し入れの中身が、ふすまを破って飛び出してきても大丈夫なように、上の段には布団しか入れないようにした。ちぃちぃを守るには、両親がけがをしてはお話にならないので、夫や私の布団も窓ガラスが割れても大丈夫な場所に敷いている。 お風呂に入れた後、脱衣所でちぃちぃを寝かせて体をふくときも細心の注意を払っている。絶対に、洗濯機の前にはちぃちぃを置かない。もし、グラッと来て、洗濯機が倒れてきたら! と考えるだけで、ゾッとしてしまう。抱っこして歩く時も、気を付けている。物が落ちてこなさそうな道を選んでいる。 先日、マンションで防災訓練があった。通路中に「火事です。火事です」という警報が響き渡った。訓練を知らせる張り紙がエレベーター前にあったものの、いざ当日警報を聞くとあわててしまい、夫に電話をした。「マンションの前に消防車が来ていなければ大丈夫だよ」。そうよね。窓からのぞいてみると、外はいつも通り。やはり訓練だった。 訓練の翌日、ちぃちぃをお風呂に入れようとした夜のこと。玄関の外から轟音が聞こえる。びっくりして、ドアを開け、暗い外を見ると、通路の非常灯の赤いランプが点灯しているではないか!胸が高鳴った。 こ、これはいよいよ本番だわ。寒いので、ちぃちぃに「さあ、避難するわよ」と声をかけながら、コートを着せた。急いで、マンションの管理会社に通報する。「119番通報した方がいいですか」と聞くと、「すぐ様子を見に行きますので待ってください」という。「分かりました」と言って受話器を置き、ちぃちぃを抱えて、上の階のママ友のところへ駆け込んだ。 玄関の呼び鈴を押すと、彼女が赤ちゃんを抱っこして出てきた。「ねえ、この轟音、サイレンじゃない」と私が聞くと、「あら、これはお隣のマンションの工事の音よ。いつもしてるわ」という。えっ! 階下に戻ると、管理人さんが駆けつけていた。「あ、あのこの轟音は、もしかして工事の音ですか」と聞くと、「そうですよ」と管理人さん。非常ボタンがついている赤いランプはいつも点灯しているとのこと。「本当に火事になると、『火事です』っていうアナウンスが流れますから。でも、何事もなくてよかったですよ。ぼやとか放火とかありますからね」 平謝りに謝り、翌日お詫びに菓子折りを届けた。でも、管理人さんの言葉をもう一度思い出してみる。えっ!「放火がある」? それでも絶対に生き延びてやる。私の防災意識に、さらに火がついた。 女性記者プロフィール(07年10月15日から)
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