3カ月健診で、股関節の開きが悪いことを指摘されてからというもの、育児の合間に時間を見つけては、「先天性股関節脱臼」について調べる日々が始まった。3週間後に保健所で、3カ月健診でひっかかった赤ちゃんたちを小児整形外科医が詳しく診察してくれることになっていた。それまでに、私も知識を身につけ、最善の道を探らなくては。
最初は、単に股関節がかたいだけだったらいいなとも思ったが、おむつを交換する時の足の付け根の様子を思い出すと、腑に落ちる点が多く、次第に覚悟を決めた。早期発見が大事で、将来歩くことができるようしっかり治してやらなくては。
調べていくと、逆子の場合、おなかの中で無理な姿勢をとっているためか、股関節が脱臼してしまうリスクが通常の5〜6倍になることがわかった。そして冬生まれの子もリスクが高いという。足を自由に動かせるようにしておかないといけないのに、冬は寒いので毛布などでグルグル巻きにして、股関節がはずれてしまうこともあるそうだ。ちぃちぃは両方に該当する。
無理に足を伸ばしたり、曲げたりしてもいけないらしい。後の祭りだが、やってはいけないことをしていた。生後1カ月のころ、泣くと毛布でグルグル巻きにして抱っこしていた。産院でタオルでしっかり巻かれた赤ちゃんがおとなしくなった様子を見て、まねしてみたのだ。ちぃちぃとのお遊びの一環で、あんよを持って屈伸も何度かしてしまった。
先天性股関節脱臼というが、産後、赤ちゃんの扱い方が原因で股関節がはずれてしまうこともあるらしい。事前に知っていれば、もっと気をつけたのに。向き癖の強い子も、いつも向いている方の半身に、もう片方の足が引っ張られて、脱臼しやすいこともわかった。
ちぃちぃは、生まれた時から左側ばかり向いて寝る癖があった。おかげで、左側の頭の側面が平らになってしまったほどだ。寝ている間に飲んだおっぱいを戻して、窒息させるのが怖くて、生後1、2カ月のころは頭にタオルを挟むなどして、無理に向き癖を直すのはやめていた。だが、このことを知ってからは直すことにした。
ちぃちぃの布団の位置を変えた。左側を壁にして、私はちぃちぃの右側に寝てみた。ちぃちぃの布団は、大人用を二つ折りにして使っているのだが、折り目を壁側に向けて、私がいる方に向かって軽い傾斜を作り、ちぃちぃが自然に右側を向きやすいようにした。少し向き癖を解消したら、多少足の開きがよくなってきたような気がした。3週間後の詳しい診察までに改善されれば、大丈夫かもしれない。淡い期待を抱きつつ、ちぃちぃの向き癖を直すよう知恵を絞った。
そんな期待を抱く一方で、脱臼が判明した場合の治療方法や医師についても必死で調べた。3カ月健診では、保健師さんから保健所での詳しい診察の時は、レントゲンを撮ってその場で診断してもらうことができるから、効率がいいですよと教えてもらっていた。そのときは、なんて便利なと思っていた。ところが、だんだん小さな体のちぃちぃに、レントゲン撮影をしても大丈夫なのかと心配になってきた。超音波診断の方がよいと書いてある育児書もある。名古屋市内の様々な病院を調べてもみたが、どこがよいのかわからない。そんなとき、普段から育児情報の収集で愛用している子育てサイトを思い出した。母親たちの育児情報交換のスレッドを検索してみると、股関節脱臼で子どもが治療中の母親が何人かいることがわかった。思い切って、治療に詳しそうなママさんにメールを出してみた。
ハラハラしながら待つこと3日間。ママさんから返信メールが届いた。股関節脱臼の治療で有名な医師のホームページと病院を教えてくれた。早速サイトにアクセスしてみると、もともとは京都大学の医師だった。素人にもとてもわかりやすく、しかも赤ちゃんのことを第一に考えた治療法について解説してある。やはりレントゲンは極力避けるべきだという考えで、超音波での診察がよいらしい。そして、何より医師の技量で大事なのが、レントゲンや超音波の前にまず触診し、目で見ることだという。様々な治療方法の長所、短所も詳しく書いてある。メールでの相談も受け付けていた。なんとありがたい! 早速、相談のメールを出した。
2日後には、近郊にあるこども病院の小児整形外科医を推薦してくれるメールが届いた。その医師は、すでに私も調べていて、この先生に診ていただくとよいかなと思っていた人物だった。翌日、こども病院に初診の予約の電話を入れると、一番早くて3週間後と言われた。保健所で詳しい診察を受ける1週間後に予約が入った。まずは保健所での診察で、どう言われるか。レントゲンを撮るかどうかは、当日まで決心がつかなかった。
1995年朝日新聞入社、34歳。前橋、福島総局、東京・名古屋本社学芸部などを経て、04年9月から東京本社文化グループに在籍。現在、第一子を出産し育休中。