和歌山市内を中心に落語を披露している小学2年生の男児がいる。落語に目覚めたのは3歳、人前で演じるようになってから1年以上といい、今年7月には子ども対象の全国大会で特別賞を受賞したほどの腕前だ。市内の落語愛好会関係者も「和歌山の落語が活気づく」と期待している。
男児は和歌山市西浜の中部晴陽(なかべ・はるひ)君(8)。普段は国語や図工が得意科目で、テレビアニメ「ポケットモンスター」が大好きな小学生だ。しかし、和服に着替え、座布団を敷いた「高座」に上がると、滑らかな語り口の落語家「勇気出し亭うな晴(はる)」になる。
母親の直美さん(40)によると、うな晴君が落語と出会ったのは2007年、ヒロインが落語家を目指すNHKの連続ドラマを見たことだという。うな晴君は自分で座布団を敷き、拍子木に見立てたカスタネットを打ち鳴らして遊んだ。直美さんは「カスタネットの使い方も教えてないのにびっくりした」と振り返る。
寝る前に落語のCDを聴くのが日課となり、自然と内容を覚えた。「せんねん(先年)しんぜんえん(神泉苑)のもんぜん(門前)のやくてん(薬店)……」と、一続きの文の中に「ん」が43回登場する長い言い回しがある約10分間の古典落語「んまわし」も頭の中に入った。
昨年8月、和歌山市内を中心に落語を披露する愛好会「わかやま楽落会」の寄席を見て、同会の落語教室に入り、本格的に稽古をスタート。同10月には、市内で開かれた落語会で「んまわし」を人前で披露し、デビューした。
うな晴君は人見知りしない性格だが、デビュー時は「緊張し、声が出なかった」と振り返る。芸名の「勇気出し亭」は緊張を克服するため、「勇気出して」とかけて自分で決めた。ちなみに「うな」はウナギが好きな食べ物だからだという。
楽落会の寄席や、高齢者施設の訪問など、人前での落語は十数回に上る。経験を積み今年7月、小中学生37人が出場した「こども落語全国大会」(宮崎県)に出場。出番直前に前歯が欠けたトラブルも、登場のあいさつで「歯がすーすーします」と審査員の笑いを誘った。大会では得意の「んまわし」を披露し、審査員特別賞を受賞した。
楽落会の池田信義事務局長(57)は「受賞はほかの子どもたち励みにもなる。うな晴君を見に来るお客さんも増えた」と顔をほころばせる。うな晴君は「将来はマジックもできるような落語家になりたい」と話し、稽古を続けている。(野中良祐)