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義務教育の人件費負担、過疎地抱える県ほど重く

各年度の義務教育人件費構成(全国)
  

 義務教育の人件費負担は、過疎地を抱える県ほど重くなる。教育社会学者が全国レベルで実施した人件費の試算によって、教育の地方分権を進める上で、こうした県の財政が大きな課題となることが、改めて浮き彫りになった。公立小中学校などの教職員給与の半分を国が負担する「義務教育費国庫負担金」の存廃をめぐる議論も、大詰めを迎えている。

◆給与削減踏み切る県も

 人件費の試算をしたのは、東京大学大学院の苅谷剛彦教授ら。(1)給料・諸手当(2)退職手当(3)年金にあたる共済費長期給付の三つを合わせた人件費総額は、07年度から11年間にわたり、国内全体でいまより3000億〜4000億円高くなるという結果が出た=表。

 都道府県別に分析すると、特にへき地校を多く抱え、財政力が弱い自治体で、今後人件費が高まる傾向が見られた。

 高い伸びを示した県の危機感は強い。

 5年後までの人件費推計を行っている長崎県の立石暁(さとる)教育長は「早期退職勧奨制度や高齢者の昇給停止などに努めたい」と話す。「離島や過疎地域のへき地学校が県全体の3分の1を占める長崎の教育水準が保たれているのは、国庫負担制度による。現行制度の根幹は守るべきだ」と教育長は訴える。

 田中康夫知事が国庫負担制度廃止に反対を表明している長野県。来年度は小学4年生まで30人規模学級を推進し、教職員数も増加する。瀬良和征教育長は「教職員に理解してもらい、厳しい給与カットを実施した」と苦しい胸の内を明かした。

 「具体的な試算はない」という鳥取、鹿児島、沖縄の3県。藤井喜臣・鳥取県教育長は「財政状況に応じて柔軟に対応できるよう、年齢構成の平準化などを一層進めていきたい」と述べた。鹿児島県の福元紘教育長は「教職員の年齢構成から、試算のような状況は想定される。財政面と教職員の高齢化を関連づけた対応策が今後の課題」とした。山内彰・沖縄県教育長は「教職員定数の確保、給与水準の維持に努める」と述べるにとどまり、具体的な対策には触れなかった。

◆都市と地方にズレ

 今後約15年にわたり義務教育の人件費が高い水準で推移する原因は、40歳代半ばの教職員が大勢いて、これから高い給与を払い続ける必要があるからだ。

 なぜ偏った年齢構成になっているのか。文部科学省初等中等教育企画課の前川喜平課長は「第2次ベビーブーム(71〜74年)世代が小中学校に入学する80年代に先生が足りなくなった。この時期の大量採用が、いびつな年齢構成を招いた」という。

 ところが、東京や大阪などの大都市圏は、数年程度で給与費が減少に転じる。前川課長は「大都市では60〜70年代の高度成長期に大規模な人口流入があり、その時点で先生の数が増えていた」と説明する。大都市の人件費はピークを越えつつあり、地方はこれから大変な時期にさしかかる、という差が生じている。

 現在は第2次ベビーブーム世代が親になる時期。出生率は低くても、親の数が多いので子どもの数は減らない。前川課長によると、0〜5歳の子どもの数は、いずれの年齢も約110万人台で、40人学級を維持する限り、必要な教員数は減らない計算だ。小規模校を抱える自治体ほど人件費が減らない理由は、ほかにもある。

 例えば、1学年200人いる大規模校と、40人の小規模校を比較する。仮に少子化で児童数が2割減ると、大規模校では160人になって5学級が4学級に減る。しかし、小規模校では2割減って32人となっても、学級をなくすわけにはいかず、先生の数は減らない。大規模校を抱える都市以外では、少子化でも人件費は下がりにくい。

◆教育の質にも影響

 義務教育の人件費は財政問題にとどまらず、教育の質に直接響く。40人学級より教員が必要となる少人数学級や習熟度別指導にブレーキがかかり、給与の低い非常勤の教諭がさらに増えることになりかねない。

 教員の質の向上策として中央教育審議会で議論が始まった教員養成の専門職大学院づくりにも、人件費の負担増が影を落とす。中山文科相はこの10月の諮問で、大学院の役割や位置づけのほか、大学院卒の教諭の給料を学部卒より高く設定することについて具体的な検討を求めている。

 「財政難の下で給与の高い大学院卒を積極的に採用するゆとりが、果たして地方にあるのか」と苅谷教授は言う。「学部卒の一般の教員の給与が低く抑えられるなか、一部の大学院卒が優遇され、格差が広がる。それで関係者の納得が得られるかどうか考えなければならない」と話している。

     ◇

 今回の試算で解析をしたのは、苅谷教授のプロジェクトチームの法政大学大学院エイジング総合研究所特別研究員の妹尾渉、東京大学大学院教育研究創発機構教務補佐の諸田裕子、同大基礎学力研究開発センター特任研究員の堀健志の3氏。

 データは、都道府県から報告される学校基本調査などを利用。全国的な傾向を算定するために、各都道府県一律の方式で人件費を推計した。このため、県独自で給与カットを実施している場合など自治体ごとの対応は結果に反映されていない。

 退職者数は、毎年度ごとに過去3年の実績・予測値から早期退職者数を推計して加味している。退職金の額については一律の単価を当てはめた。

(11/22)








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