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ウィンブルドンチェース小学校の校長室から見た休み時間の校庭。恵まれた施設も人気の理由とか |
学力低下不安の合唱の中で、文部科学省は次々と義務教育改革を打ち出している。日本の教育改革は、学校や教員の評価制度など英国をモデルにしてきたケースが多い。中山文科相は昨年の就任早々、全国規模の学力テストを実施する考えを示した。まず、英国の全国学力テストの現状は――。
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◆1年生、毎朝算数で始業
「こんなに小さなころから読み書きや計算の授業ばかり。もっと学校生活を楽しませたいと思うのですが」
4年前に日本からロンドン郊外のウィンブルドンへ引っ越したジャーナリストの阿部菜穂子さん(46)は次男の1年生、賢司くん(5)の通う公立のウィンブルドンチェース小について話す。
時間割りは、月〜金曜日すべて1時間目(1時間授業)が算数。2時間目(1時間授業)は、水曜日を除き英語。午後の4〜6時間目(25〜50分授業)にも毎日1〜3時間が読み書きに費やされている。「学校が全国学力テストの結果を意識しているから、勉強、勉強となってしまう」と阿部さん。来年度、2年生になると最初の学力テストがある。
英国(イングランドとウェールズ)の義務教育は、4〜5歳児がレセプションと呼ばれ、5〜6歳児の1年生から11年生まである。公立校の2、6、9、11年生が全国共通の学力テストを受ける。試験科目は2年生が「英語」「算数」、6、9年生は「英語」「数学」「科学」。11年生以降は科目が増える。
テスト結果は学校別に公表される。「リーグテーブル」と呼ばれ、新聞にも掲載される。
現行制度は、88年に導入された。当時のサッチャー首相による行政改革で、初めて統一したカリキュラムがつくられ、学校にも競争原理が持ち込まれた。「低学力」が社会問題化したことが背景にあったという。
校長に学校運営上の権限が大幅に委ねられ、テストで教育の質がチェックされる関係にもなっている。英国では学校選択が可能で、保護者はテストの結果を参考にする。学校選択で在校生数が増減すると、それが予算に直結する仕組みだ。
行政側は学力向上の具体的な数値目標をテストの成績で示す。例えば、政府は04年までに、14歳児の75%が学力テストの英語、数学などで標準レベル以上の成績をあげることを政策目標に掲げていた。結果、目標は達成されなかったが、04年末の政府の年間報告書では「すべての科目で得点が向上しており、過去最高の成績だった」と強調した。
テストの是非は盛んに議論されているが、現在の制度に批判的な教員組合も「テストは効果的な教育に不可欠」と認める。行政側は、批判に応えた改革を毎年のように行っている。
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◆公立校の競争激化、不正疑惑も
賢司くんの小学校のスーザン・トムス校長は、昨年12月に発表された小学校の「リーグテーブル」を見て眉をひそめた。
同小の成績は例年、地区でトップ級。全国で266校ある模範校「ビーコンスクール」の一つにも選ばれている。テスト前には、補習授業をする。普段でも、英語の読み書きの授業を各学年で標準より1〜2時間増やしている。保護者から「あなたの学校はテストの成績がすばらしいので、ぜひうちの子どもを通わせたい」という電話がときどきあるほどだ。
だが、今年は近くのマートンパーク小に抜かれた。「数字だけで教育の質は測れない。我が校は伝統があり、施設にも恵まれている。でも保護者はテスト結果を学校選びの重要な基準にする。だから無視はできない」
結果が学校運営に大きな影響を与えるため、テストの不正が疑われる騒ぎも起きた。
エセックス州のウォルサム・ホリー・クロス・ジュニア校は03年のリーグテーブルで、基準を超えた生徒の割合が英語で96%、算数と科学が100%で、国内トップクラスだった。英国主要紙はリーグテーブルの発表直前だった昨年12月、同校でテストの実施方法に不正があったと報じた。テストを管轄する行政側は、04年の同校の成績をすべて「0点」とした。
ウォリック大学が03年秋に実施した調査では、テストについて「教員の余分な負担になっている」「カリキュラムの内容を狭めている」「生徒にストレスを与えている」と考えている教員がいずれも8割を超えた。
一方で、「学力を向上させる」「信頼できる評価方法だ」「学習の問題点を見つけるのに役立つ」と考える教員は1割に満たなかった。
デボン州の公立校、クイーン・エリザベス・コミュニティー・カレッジで校長を務めるリチャード・ニュートンチャンスさん(52)は「将来に役立つ能力を身につけさせることが大切だ」と話した。
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◆日本も統一テスト復活論
学力テストは日本でも、「全国学力調査」として50〜60年代に実施されていたが、学校・自治体間の競争をあおるとの批判を受けて中断した。80年代からは最大でも全体の9%の児童・生徒を抽出する形の「教育課程実施状況調査」が実施されている。
中山文部科学相は、教育現場で競争意識を高めてもらうために新しい全国学力テストを実施する考えを表明している。
自治体レベルではすでに39都道府県、12指定市が学力テストを実施している。このうち22都府県、7都市は特定学年の全員が対象。多くが結果を公表している。
中山文科相は「かつての全国学力テストが序列化を招いて混乱した経緯は承知している。支障のない範囲で、よりよき教育の改善に資するような公表の仕方を検討すべきだ」という。