現在位置:asahi.com>教育>NIE>ののちゃんの自由研究> 記事 色鮮やかキトラ古墳2007年07月20日 朝日NIEスクール ●古代の高貴な人眠る? 壁に中国起源の守り神、子丑寅…十二支も 想像上(そうぞうじょう)の動物や天井を覆(おお)う天文図(てんもんず)……。奈良(なら)県明日香(あすか)村のキトラ古墳(こふん)の石室(せきしつ)に壁画(へきが)があることがわかったのは83年のこと。ファイバースコープを使った調査によってでした。98年、01年には小型カメラでよりくわしい写真が撮影され、今年1月からは壁画修復のための調査が続いています。キトラ古墳とは一体、どんな古墳なのでしょう。 奈良・飛鳥(あすか)地方に日本の中心があった7世紀は古墳時代の終末期にあたります。このころ、それまで大王(のちの天皇)や有力豪族(ごうぞく)たちが造ってきた巨大な前方(ぜんぽう)後円墳(こうえんふん)は消え、古墳は小さくて単純な円形などになってしまいます。キトラ古墳もそんなひとつ。7世紀末〜8世紀初頭の高貴な人の墓とみられていますが、この地に住んだ渡来(とらい)系の人という意見もあります。 そして世間を驚かせたのが、白いしっくいを塗った石室内の壁をキャンバスにして描かれた、写実的で色鮮やかな壁画でした。極彩色(ごくさいしき)の壁画は72年、キトラ古墳から北に約1キロの高松塚(たかまつづか)古墳で初めて見つかり、キトラ古墳は2例目ですが、多くの共通点がある一方で違いもあります。 それでは、どんな絵が描かれているのか、鎌倉時代に墓泥棒(はかどろぼう)が開けたらしい南壁の穴からのぞいてみましょう。 まず、目に飛び込んでくるのが北壁の「玄武(げんぶ)」。カメにヘビが巻き付いた空想上の動物です。右の東壁には「青竜(せいりゅう)」がいます。かなり汚れているのが残念ですが、口から出た赤くて長い舌が見えます。一方、左の西壁にいるのは「白虎(びゃっこ)」。文字通り白いトラですが、ずいぶんとスリムですね。 そして、南壁には「朱雀(すざく)」。高松塚古墳では確認できなかった真っ赤な鳥です。今にも飛び立とうと大きく翼を広げた姿は、まるで手塚治虫(てづかおさむ)の「火の鳥」のよう。 これらは、東西南北をつかさどる中国起源の「四神(ししん)」という守り神なんです。朝鮮半島北部から中国東北部にまたがる地域に栄えた高句麗(こうくり)という国の墓にも見られますから、大陸文化の影響で描かれたのは間違いありません。
あれっ、四神の下に変な絵がありますよ。頭が獣で体が人間という不思議な生き物ですね。高松塚古墳には「飛鳥美人」で知られる華やかな人物像がありましたが、キトラ古墳には代わりに、「獣頭人身(じゅうとうじんしん)像」が複数見つかりました。ほとんど消えかかっていますが、どうやら十二支を表しているようです。そう、お正月でおなじみの子(ね)(ねずみ)、丑(うし)、寅(とら)……というアレですね。時計回りに3人ずつ、描かれたとみられます。最近、赤外線写真を撮ったところ、そのひとつにトラの顔がくっきりと浮かびました。
●天井に満天の星座、保存修復へ大忙し 次は天井を眺めてみましょう。金箔(きんぱく)を張ったたくさんの星が赤い線で結ばれ、中国式の星座が満天に広がります。ずれながら重なり合う複数の円は、天の赤道や太陽の通り道である黄道(こうどう)など。太陽や月もあって、まるでプラネタリウムみたいです。 古代の人々はなぜ、こんな不思議な動物たちを描いたのでしょう。トラ顔の像は武器を持っており、四神も中国由来の守り神ですから、そこには、墓の主が死後も外敵に侵されることなく安らかに眠れるように、との願いが込められているのではないでしょうか。 ただ、彩色壁画古墳がなぜ、たったの2例しかないのかは謎です。 装飾を施した古墳は5〜6世紀の九州などにもありますが、いずれも原始的な絵で、飛鳥の壁画とは異質なものです。 さて、今、このキトラ古墳に大変な問題が持ち上がっています。壁のしっくいが所々はげかけていることがわかったのです。このままでは貴重な壁画もはがれ落ちてしまうかもしれません。早急に保存修復が必要です。 作業を進めるには、100%近いという湿度など本来の環境を保たなくてはなりません。昨年夏にはそのための覆い屋もできました。でも、墓道や壁にカビが生えるなど思わぬトラブルもあり、研究者たちは悪戦苦闘中。1300年もの間、生き抜いてきたキトラ古墳の壁画はこれからも守っていかなくてはならない貴重な遺産ですから、頑張って欲しいですね。 (文化部・中村俊介)
<調べてみよう!> ●壁画にはどんな色が使われているのかな ●お墓に葬られたのは誰だろう ●みんなが住んでいる町の近くには、どんな古墳があるかな
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