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幼稚園や学校で、チャイムや音楽をスピーカーで流すのをやめる動きがある。近所に迷惑をかけず、静けさを大切にすれば子どもに自主性が芽生え、教育効果も高まるという理由からだ。(神田剛)
○肉声に耳をすます園児
住宅地と隣り合う東京都青梅市の私立「青梅ゆりかご第2保育園」ではスピーカーの出番がない。例外は月1度の防災訓練だけだ。
同園ではわらべ歌を使った音感教育に力を入れている。伴奏なしで保育士が子どもたちと肉声で「かごめかごめ」や「なべなべそこぬけ」を歌う。聴くことを大切にするため、放送など音の垂れ流しは避けている。
「自分の声で歌うと、人の歌にも耳を傾けるようになる。テレビをつけっぱなしの家も少なくないようだが、せめて園では静かな環境にしてあげたい」と保育士の塩野たつ子さん。
今春赴任した白井利明園長は、遠足で号令用に持っていった笛の出番が全くなかったことに驚いた。「大きな音を流すと子どもはより大きな声で話す。悪循環は断つ時期にきています」
広島県大野町。「安芸の宮島」を見下ろす高台のニュータウンにある私立「かえで幼稚園」もスピーカーを使わない。登園や帰りの音楽、チャイムもない。
スピーカーをやめたのは10年ほど前の運動会から。「物足りない」という声とほぼ同数の「競技に集中できた」という声が保護者から寄せられた。中丸元良園長は「2年続けると、これが当たり前になった」。近所の苦情も消えた。
午後1時。庭で遊びの時間が終わると、「そろそろ片づけようか」と前にいた園児に話す。子から子へと伝わり、片付けの輪は数分で約170人の園児に広がった。「普通の声で十分。園児は耳をすまし、自分から動いてくれる」と石田敦子教諭は目を細める。
静けさの最大の効果は、子どもたちに芽生えた自主性だ。「放送や音楽で指図しない分、自分で時間を意識するようになった。世間にはスピーカーの音があふれ、情操教育として音楽を使う例も多い。でも音はそこまで必要でしょうか」と中丸さんはいう。
○時計見て行動する児童
教育施設でチャイムや音楽を流す根拠は「特にない」(文部科学省)という。
東京都杉並区立松庵小学校は10年ほど前から段階的にチャイムをやめ、今は完全に廃止した。登校や清掃時の音楽もない。小島康校長は「子どもは校舎の時計を見て早めに動いている。新入生も1カ月ほどで慣れてくれているようです」。
同区教委は、総合学習などで授業時間が弾力的に設定できるようになり、一斉にチャイムを鳴らす必要性が減ったことも背景にあるとみる。
神戸市立山の手小学校でも、数年前からチャイムを減らしているが、教室の移動などで教員が声を張り上げる必要はないという。
近隣の住環境を守るよう配慮を求める動きもある。学校や幼稚園のスピーカー音について、文部科学省の「施設整備指針」は「周辺へ支障を及ぼすことのないよう」に注意するよう定めている。この項目は90年代ごろに加わったという。
○近隣にも配慮を
大阪市の音楽評論家、井上和雄さん(65)は、自宅近くの小学校から流れるチャイムと朝の音楽に悩まされてきた。元気な子どもの声は構わないとしたうえで、「チャイムや音楽は部外者の耳に入れる必要はないはず。夜勤明けや受験生、寝たきりなど多様な生活を送っている人がいることを意識すべきです」と話す。
(朝日新聞東京本社発行 9月20日付朝刊)
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