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奈良の法隆寺から最古の壁画片 高熱で変色、焼失・再建説裏付け

2004年12月10日

出土した法隆寺の壁画片。右上のもので約3センチ×3センチ=1日、奈良県斑鳩町役場で

出土した法隆寺の壁画片。右上のもので約3センチ×3センチ=1日、奈良県斑鳩町役場で

 奈良県斑鳩町の法隆寺で、7世紀初めの彩色された壁画片約60点が出土したと1日、同町教委が発表した。創建法隆寺(若草伽藍<がらん>)跡の西側で見つかり、日本書紀に記述される670年の火事で焼失した寺の金堂や塔の壁画とみられる。絵柄は不明だが、壁画としては国内最古。破片は1千度以上の高温にさらされていることが分かり、創建法隆寺の焼失を裏づける有力な物証ともなった。

 法隆寺の門前広場整備に伴い、南大門の南東約30メートルで9月から約110平方メートルを発掘。壁画片は地下約2メートルの20〜30センチの層から見つかった。一緒に出土した焼けた瓦が7世紀初めの飛鳥時代の様式だった。

 壁画片は最大のものが約5センチ×4センチ。壁土に白土(はくど)を薄く塗った下地に、高熱で変色したとみられる赤褐色や鉛色、肌色、くすんだ緑色などの彩色が残っていた。うち1点を奈良文化財研究所(奈良市)が鑑定した結果、赤の顔料の成分である鉄と、緑か青の成分の銅を検出した。

 別の壁土を調べたところ、1千度以上の高熱で焼いた陶磁器と同じような状態になっており、溶けた金属片も確認された。壁画は屋内にあることから、創建法隆寺は内部まで焼き尽くす火災に遭ったことが推測される。

 壁画片を鑑定した百橋明穂(どのはしあきお)・神戸大教授(美術史)は「現法隆寺の金堂にあった浄土図のような大画面の絵ではなく、釈迦の前世物語の本生図(ほんじょうず)のような説話的な壁画ではないか」とみる。さらに、聖徳太子の死を悼んで作られたといわれる刺繍(ししゅう)「天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)」(国宝、飛鳥時代)に似ている部分もあると指摘した。

 出土場所は、若草伽藍の金堂と塔の中軸線から西約100メートルで、当時は深さ約3メートルの谷だった。町教委は、焼け残ったがれきをこの谷に捨てたとみている。

 国内最古の寺院壁画は、浄土世界が描かれた現法隆寺(7世紀後半〜8世紀初め)のものと神将像などを描いた上淀廃寺(鳥取県淀江町)の例がある。法隆寺の金堂壁画は一部を除いて1949年の火災で焼失した。

 現地説明会は4、5の両日午前10時〜午後3時、南大門近くの発掘現場で。

 ●書紀の通りの大規模火災か

 東野治之・奈良大教授(日本古代史)の話 若草伽藍では焼けた瓦の発見が少なく、火災を疑う主張の根拠にもなってきたが、焼失を裏付ける考古遺物が発掘された意義は大きい。日本書紀の通り、かなり大規模な火災だった様子もうかがえる。見つかった壁画片の図柄は小さいようだ。線の描き方が現法隆寺の金堂壁画と比べて古風で、一時代前のものとわかる。

◇キーワード

 <法隆寺> 日本書紀の解釈によると606年、寺伝によると607年に聖徳太子が建立したとされる。

 創建時の法隆寺(若草伽藍)は670年に焼失したと日本書紀にあるが、現存する金堂の様式の古さから創建時のままだとする説もあり、「再建・非再建論争」が繰り広げられた。

 1939年に若草伽藍の遺構が発掘され、現在の法隆寺金堂と五重塔は遅くとも711年までに再建されたとの説が有力になった。

(朝日新聞東京本社発行 12月2日付朝刊)


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