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比較・競争とは無縁 学習到達度「世界一」のフィンランド

2005年02月25日

国語の教科書を音読するフィンランドの小学3年生=04年12月、ヘルシンキ市内で、忠鉢写す

国語の教科書を音読するフィンランドの小学3年生=04年12月、ヘルシンキ市内で、忠鉢写す

(朝日新聞東京本社発行 2月20日付朝刊)

 昨年末に発表された経済協力開発機構(OECD)の国際的な学習到達度調査(PISA)でトップの成績をあげたフィンランドに、日本から注目が集まっている。しかし、その反響に戸惑っているという内容の電子メールが現地の日本人女性教師から朝日新聞へ寄せられた。「フィンランドは日本で言うような意味での教育熱心な国ではない」。調査結果の見方についても、専門家から「正しい分析を」という指摘がある。

(忠鉢信一)

 フィンランド在住の菊川由紀さん(46)は96年からヘルシンキ市内の高校で日本語を教えている。

 最近、男子生徒に「フィンランドはPISAで世界一だったのよね」と聞いた。どの生徒も一様に「特別なことは何もしてない。どうしてだろう」と、不思議な顔をした。

 子どもたちの学習態度はどうか。たとえば、学校が出す宿題について、子どもの受け止め方は日本とは違う。

 一方的に、これをやってきなさいと言っても、なかなかやってこない。しかし、「もっと勉強したい人は、この問題を解いてみたら」などと投げかけると、ほとんどの生徒が取り組むという。

 菊川さんの話では、日本のような塾や予備校はない。高校進学は中学卒業時の成績で決まり、自分で卒業成績が低いと思えば、もう一年余計に中学へ通うことも可能だ。その場合、「落ちこぼれ」と言われるどころか、むしろ「長い期間、勉強した」というとらえ方をされる。日本のような受験競争とは無縁だ。

 「他人と比較して上か下か、という考え方をしない。私自身、初めてこの国に住んだ中学生のころは、意識の違いの大きさに戸惑った。個人主義が徹底された社会が背景にあるのだと思う」

 PISAの発表があった昨年末、菊川さんは日本へ一時帰国していた。外国語として日本語を教える教師のための研修に参加し、日本の教育事情を調べるためにある教育系大学を訪れた。

 ある研究者は、フィンランドの学校について「各学校が互いに競い合って特色を打ち出している。現場に裁量を与える手法」という見方をしていた。

 00年のPISAでフィンランドが総合的にトップとされて以来、日本から数え切れないほどの視察があった。菊川さんは何度も通訳を務めた。そこでも、特色を出すことが競争につながっていると誤解している人が少なからずいた。

 菊川さんは「国はカリキュラムの大枠で目標を定めるだけで、達成方法は各学校の校長に委ねられている」という基本概念を教育省や国家教育委員会で何度も説明され、通訳した。現場への裁量は与えられているが、他の学校と比べて意識的に競い合ってはいない。

○「楽しんで学ぶ」貫く

 フィンランドのヘルシンキ大で講師を務めたこともあり、現地の教育事情に詳しい中嶋博早大名誉教授(81)はOECDが主催した1月の講演で「義務教育世界一と言われるフィンランドは授業時間が日本より少ない。今年の総合カリキュラム見直しでは日本で言う『ゆとりの時間』が増やされる」と指摘し、PISAの結果を受けた「総合的学習」の見直し議論に疑問を投げかけた。

 中嶋名誉教授は、PISAが00年に始まった経緯にも触れ、「PISAの調査結果には、これからの教育をどうしていくべきかという処方箋(せん)が書かれている。だからこそ正しく分析しなければ」。これまでの反応を見た限り、誤解があると感じるという。

 「日本や韓国が高得点をあげていた従来の国際調査は、詰め込まれた知識量をみるものだった。それを見直して、生涯にわたって学習する能力を身につけているかどうかをみるための指標として始まったのがPISA。だから、暗記や暗唱が中心の教育に戻したり、授業時間を増やしたりする方法では、日本の教育が抱えている課題は解決できない」

 授業の組み立て方や教科書の選定など教育内容の大部分を現場の裁量に任せたのがフィンランドの教育制度。中嶋名誉教授は「落ちこぼれをつくらない、というだけでなく、楽しんで学ぶことがフィンランドの教育の特徴」と強調した。

 ◆年間平均標準授業時間の比較

         日本   フィンランド

 7〜8歳   709時間  530時間

 9〜11   761    673

 12〜14  875    815

 (注)「図表でみる教育 OECDインディケータ(2004年版)」から。このデータは02年現在。

政治主導の「脱ゆとり」 中山文科相、教育見直し発言

(朝日新聞東京本社発行 2月20日付朝刊)

 雪崩をうったかのようにゆとり教育の大転換が始まった。「もはや世界のトップではない」。文部科学省が学力低下の現状をかつてない調子で認めた国際学力調査の結果公表から2カ月。この間、自民党から「ゆとり批判」の火の手が上がり、中山文科相の路線転換発言が相次いだ。いまの学習指導要領も全面見直しに向けて審議が始まった。きちんとした検証もない性急な改革に、学校現場では先取りの動きが出る一方で、関係者からは無力感も漂う。

(大島大輔、野上祐、編集委員・氏岡真弓)

 「担当局長はこの結果を予想していたのか」

 「ゆとり教育の失敗は明らかだ。誰が学力低下の責任をとるのか」

 昨年12月17日、自民党本部で開かれた文教関係議員の会合は、直前に相次いで公表された国際学力調査結果を巡り騒然となった。同席していた歴代局長の近藤信司・文科審議官と御手洗康・事務次官(当時)が矢面に立ち、「つるし上げ」は延々と続いた。

 国際学力調査について「世界のトップから転落」という文科省の見解は、中山文科相の意向を強く反映したものだった。「なかなか文科省は学力低下を認めたがらなかった。ゆとり教育のせいじゃないかといわれるのが嫌だということだった」。のちに中山文科相はそう明かしている。

 腰が重い文科官僚に対して、中山文科相の「脱ゆとり」発言が続いた。

 「土曜日に授業をやりたいという現場の要望がある。学校や市町村などの裁量に任せてもよい」(昨年12月、朝日新聞のインタビューで)

 「総合的な学習の時間や、選択教科をどうするかを含め、国語とか算数とかにもう少し力を注ぐべきではないか」(今年1月、宮崎県内のスクールミーティングで)

 今月15日の中央教育審議会総会で、中山文科相は「ゆとり教育」を軸とする学習指導要領を秋までに全面的に見直すよう審議を要請した。検討事項には総合的学習の授業時数や土曜日の活用など、一連の文科相発言がすべて盛り込まれている。

 ある文科省幹部は、文科相の発言がゆとり見直しの方向をリードしたとみる。「学力調査の結果公表後、中教審に検討課題を示せないまま2カ月が過ぎ、大臣の発言が続いてしまった」

 別の幹部は「大臣が求めているのは『スピード感』。場合によっては、一部を取り出して五月雨式に指導要領を改訂するかもしれない」と明かした。見直しはさらに加速するかもしれない。

○文教族には異論も

 中山氏は元大蔵官僚で、長く商工畑を歩んできた。教育政策にも熱心で文科相就任間もない昨年11月に、教育改革案「甦(よみがえ)れ、日本!」を発表した。「世界は国際的な『知』の大競争時代。国家戦略としての教育改革が重要だ。このままでは日本は東洋の老小国になる」。国家を前面に出した危機感を強く訴えている。

 こうした意識は産業界とも重なる。日本経済団体連合会が今月1日、中山文科相に基礎学力や倫理観などの養成を柱にした「提言」を手渡すと、文科相は「同感だ」と上機嫌だったという。

 だが、これまで「ゆとり教育」を進めてきた自民党の文教族議員からは異論が上がり始めた。

 河村前文科相は「授業時数を増やせば、問題が解決するものではない」と述べ、習熟度別授業などによって学力の下位グループに手を打つことこそ重要だと強調する。

 文教族の重鎮である森前首相も「ゆとり重視派」の一人。中山氏も出席した17日の派閥総会で「私は文科相と多少意見が違う。ゆとり教育は大賛成」と言い切った。

 ただ、学習指導要領の見直しについて本格審議する中教審には無力感もある。ある委員は「中教審はお墨付きを与えるだけ。方向はもう決まっているじゃないか」と話した。

○学校現場は流れ先取り

 「もう教科重視でいくしかないな……」。東京都内の中学校長はため息交じりに話す。1月の中山文科相の総合的学習見直し発言の時、ちょうど4月からの指導計画を立てていた。総合的学習に重点を置くつもりだったが、教育委員会の指導主事は新聞記事を見て「教科、特に国語に力を入れた方がいい」。教員らも「総合的学習はどうせ削られるんだから」。「指導要領の改訂前に、現場は流れを察知して先に変わる」と校長は語る。

 研究者はどう見るか。

 藤田英典・国際基督教大教授(教育社会学)は指導要領スタート時から「4年で改訂される」と発言していた。「『自ら学び自ら考える』といっても基礎的な知識がなければ不可能だ」。週5日制については「毎週からまず隔週に戻して各教科の授業時数を考え、残った土曜休みは学校が地域と連携して、子どもの居場所確保を考えた方がよい」と語る。

 一方、加藤幸次・上智大教授(学校教育学)は「詰め込み時代の再来になる。いじめや不登校が深刻化するのでは」と危惧(きぐ)する。「授業時数を増やせば学力が上がるというデータは何もない」と指摘し、「総合的学習は主体的に学習に取り組む姿勢を育てるのが狙いで、教科よりむしろこちらが基礎基本」と反論する。指導要領のあり方も「地方分権の時代、国が教育内容をすべて決める前提で検討するのはおかしい。拘束力を弱める大綱化の方向に踏み出すべきだ」と話している。

●学習指導要領、強い影響力

 学習指導要領は学校で学ぶ内容や量、教科書の中身も決める。文科省の建前は「最低基準」だが、図のような流れで徹底され、現場は強い影響を受けざるを得ない。

 中教審答申から新指導要領が改訂・告示されると、ただちに事務次官通知が各都道府県教委に流される。

 文科省から指導要領の「解説書」も出され、学校が趣旨を逸脱しないよう内容の徹底と浸透が図られる。

 学習指導要領の改訂を踏まえて、学校でこれに基づく授業が始まるまでには数年かかる。新指導要領に準じた教科書を作成する必要があることと、2〜3年の移行期間を設けるためだ。

 ■教育改革と学習指導要領の改訂

 <教育改革>

 (年)

 92 学校5日制月1回

 93 文部省、中学校から業者テストの排除通知

 95 学校5日制月2回

 02 遠山文科相、補習・宿題奨励の「学びのすすめ」

    現学習指導要領・完全学校5日制始まる

 04 中山文科相、私案で「全国学力テストを」

    国際学力調査の発表で文科省、学力低下認める

    中山文科相「土曜事業容認」発言

 05 中山文科相、総合的学習見直しに言及

 <学習指導要領改訂>

 (年)

 77〜78 授業時数削減に転じる

       「ゆとりの時間」導入(「ゆとり路線」始まる)

 89    「生活科」新設

 98〜99 学習内容の3割削減・「総合的な学習の時間」新設

 03    「発展的内容」教えてかまわないと明示する一部改正


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