■(beReport)地域や趣味の検定続々 東京・京都・長崎・鹿児島・世界遺産…
姫路や鹿児島など全国各地の「ご当地」や、世界遺産や映画などに関する新しい検定が次々と誕生している。合格しても、仕事を得たり、昇給したりするようなメリットは期待薄。一定水準の知識があることを証明できるだけだ。それでも増え続けるのは、一昨年に始まった京都・観光文化検定が1万人近い受検者を集めたから。知識を深めたり、広めたりするのに有効だという認識が主催者にも受検者にも広がっている。ブームの渦中にある人たちの事情を追った。(平出義明)
京都市の会社員篠部幸雄さん(55)は昨年12月、京都・観光文化検定の1級試験に臨んだ。1級は記述式の問題と小論文で時間は90分。「久しぶりにアドレナリンが噴き出す感覚を味わった」
篠部さんが、受検を思い立ったのは、東京、ニューヨークで20年近く勤務した後、2年半前に生まれ育った京都に帰ってきたからだ。「いい寺を知らないか」「伝統文化が息づく生活とは」。京都出身ということで、そんな質問を受け、「京都の知識を、きちんと蓄えておかないと、失礼になる」と感じていた。
試験勉強は大阪市の勤め先との往復1時間の電車の中だった。「京都の魅力は平安時代から現在まで複合的にからみつながっている点。それを解き明かすように勉強した」
合格した篠部さんはいま、検定で得た知識を生かす方法を探る。会社の名刺を携えていれば、ほとんどの人に会うことができる。しかし、ビジネスを離れると人間的な面白さ、魅力が頼り。「ポケットに詰め込んだ知識をもとに、京都の楽しさを伝えたい」
「東京シティガイドクラブ」。東京のご当地検定「東京シティガイド検定」の合格者のうち約450人が04年につくった親ぼく団体だ。ボランティアガイドになるための勉強会を開いている。
同クラブ代表幹事隅田憲平さん(68)は4月、ガイドの資料づくりに、江戸時代から栄える下町の門前仲町周辺を5回歩いた。深川不動尊や深川江戸資料館などを回り、1回に5〜6時間かけた。
「実際に歩いてみないと、建物や風景の変化に気づかない。歴史の重みを認識でき、町が好きになります」
クラブのメンバーはグループに分かれ、模擬ガイドを行う。客役のメンバーと質疑応答もして本番に備える。昨年は中国の留学生の団体などのガイドに。実費程度の費用で浅草などを案内した。
京都と東京の受検者は、20〜50代はそれぞれ10〜20%前後で分散している。京都商工会議所は「若い世代は観光産業の従事者が占めるが、40代以上は知識を試す人が多い」とみる。
趣味の世界の検定も同様の傾向だ。6月に初めての試験がある映画検定でも申込者の年代はさまざま。印刷会社に勤める山崎茉莉子(まりこ)さん(23)は「いい映画を知るために受検する」と問題集を開き、解説を読む。映画館や自宅のビデオで1週間に1〜2本見てきたが、知らない映画は山ほどあった。テキストを読んで、「これからどんな映画を見ていったらいいか、はっきりした」と話す。
仕事や資格に直接、結びつきにくい検定のブームについて、桜美林大学の瀬沼克彰教授(余暇社会学)は「勉強の成果を世の中が認める風潮が出てきたためだ」と話す。
高学歴層が増えた上に、休日を趣味や生きがいのために充てる人も多くなった。なかでも知識や見識を身につけようと勉強する人が増え、社会の側でも、その姿勢を評価する。検定合格も価値あることと認知され始めたという。
合格した後も、興味や関心を持ち続け、生きがいに結びつけていけるかが課題。「講習会やボランティアなどをうまく組み合わせたプログラムの開発が重要だ」と話す。
●05年以降に約40誕生
京都・観光文化検定の昨年の受検者は、1万2662人。初回の前年より2861人増えた。
「観光分野で働く人や市民に京都の知識を深め、観光客らをきちんともてなす」のが目的だが、京都府以外の受検者が初回で3割、2回目は4割を占める。
京都が手本にしたのが、03年11月スタートの東京シティガイド検定。初級のみで、初回は1017人が受けた。
京都が始めたころ、札幌や、秋田県男鹿市観光協会などによるナマハゲに関する検定など、「ご当地検定」が広まる。05年以降をみると、長崎や鹿児島、奈良、北海道、映画など40近い検定が実施または計画されている(表)。
受検者数は、鹿児島など全県を対象とする団体が主催する検定で1千〜3千人、市や地域クラスの団体が主催する検定だと、数十人から1千人。1万人以上を集める京都は特異な存在だ。
京都商工会議所の西川実人材育成担当課長は「神社や仏閣、歴史、国際性など京都ブランドあってこそ」という。
一方、趣味に関する検定も、京都の影響を受けたところが多く、ファン層の獲得やその分野の振興をねらう。
ベガルタ検定はサッカーJ2「ベガルタ仙台」のサポーター向けの試験。ベガルタ仙台・市民後援会理事長佐々木知廣さん(50)は「チームに関するうんちくを試す遊び」。
6月に実施される世界遺産検定の主催、NPO法人「世界遺産アカデミー」は「世界遺産を見る時に役立つ知識を身につけ、どう保護するかも考える試験」を目指す。
映画検定は、ビデオを含め映画業界に役立つ検定を目的にしており、主催のキネマ旬報社は「昔の映画にも目を向け、時代の扉としての映画の魅力を知ってもらう内容」という。
江戸東京博物館と小学館などが主催する江戸文化歴史検定は今年11月に始まり、江戸時代にまつわる問題を出題する。小学館は01年に発売した「週刊古寺をゆく」が初回に異例の45万部を売り中高年男性から反響があったことから、受検者も「中高年男性が中心」と予想する。
■ご当地や趣味に関する主な検定
(05年以降にスタートした検定。東京シティガイド検定と京都・観光文化検定除く)
検定 スタート(初回実施)時期検定
スタート(初回実施)時期検定
東京シティガイド検定 03年11月9日
京都・観光文化検定 04年12月12日
九州観光マスター検定 05年10月30日
彦根城下町検定 05年11月12日
金沢検定 05年11月20日
萩ものしり博士検定 05年11月27日
岡山文化観光検定 05年12月4日
宇和島「通」歴史・文化検定 05年12月10日
岐阜市まちなか博士認定 06年2月12日
明石・タコ検定 06年3月5日
長崎歴史文化観光検定 06年3月5日
伊賀学検定 06年3月5日
松山観光文化コンシェルジェ検定 06年3月25日
有馬学検定 06年3月27日
姫路観光文化検定 06年3月12日
かごしま検定 06年4月16日
越中富山ふるさとチャレンジ 06年11月23日
検定お伊勢さん 06年11月実施予定
四国観光検定 06年12月実施予定
六甲・摩耶学検定(仮) 06年内実施予定
宮島検定 06年度実施予定
北海道観光マスター検定(仮) 06年度実施予定
十勝ガイド検定(仮) 06年度実施予定
広島検定(仮) 06年度実施予定
奈良まほろばソムリエ検定 07年1月実施予定
松本検定(仮) 07年2月実施予定
但馬検定(仮) 07年3月18日実施予定
新潟市観光・文化検定 07年3月実施予定
函館シティガイド検定(仮) 07年3月実施
大阪検定(仮) 07年実施を検討中
滋賀県の「観光検定(仮)」 07年度以降実施を検討中
松江・観光文化検定 07年度実施予定
丹後ふるさと検定(仮) 07年度実施予定
篠山検定(仮) 07年度実施で検討中
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お祭り検定 05年1月23日
ベガルタ検定 06年3月4日
世界遺産検定 06年6月18日
映画検定 06年6月25日
江戸文化歴史検定 06年11月3日
きもの文化検定 06年11月19日
●問題例:東京
写真の名称(または説明)としてあてはまるものを語群からそれぞれ選んで解答用紙の所定欄にその番号をマークしなさい。
1.ニコライ堂 2.国技館 3.東京都立慰霊堂 4.講道館 5.武道館
(初級問題から)
●問題例:京都
京野菜には産地名が頭につくものがある。ごぼうの頭につく産地名はどれか。
(ア)壬生 (イ)堀川
(ウ)九条 (エ)桂
(3級問題から)
●問題例:鹿児島
屋久島のヤクスギは樹齢何年以上のスギをこのように呼ぶのか。
1.100年 2.500年 3.1000年
(標準クラスの問題から)
●問題例:映画
次のセリフで(外国映画は日本語訳)有名な作品を選びなさい。
「フォースと共にあらんことを」
(ア)「史上最大の作戦」 (イ)「博士の異常な愛情」
(ウ)「スター・ウォーズ」 (エ)「パリは燃えているか」
(映画検定公式問題集、4級問題から)
○正解
東京…2.国技館 京都…(イ)堀川
鹿児島…3.1000年 映画…(ウ)「スター・ウォーズ」
<グラフィック・宮下洋輔>
参考情報 検定の実施には、問題作成、会場の用意、採点などの費用がかかる。検定料は数千円のところが多く、テキストや講座による収入を事業運営に充てるところもある。「受検者向けの有料講座を実施して採算がとれる」「人件費を除いてトントン」などと、検定が大きな収益をもたらしているところは少ない。
(2006年5月27日 be週末b3)
■手結ぶ「ご当地検定」 ナマハゲ・ソムリエ… きょうから京都で「連絡会」
各地で広がる「ご当地検定」の全国連絡会が8、9の両日、京都市で開かれる。京都のノウハウを生かし、検定による地域ブランドづくりや観光振興を全国で盛り上げるのが狙いだ。
北海道フードマイスター認定、明石・タコ検定、ナマハゲ伝導士認定、九州観光マスター検定……。地域に根ざした検定は実施予定を含め数十にのぼる。連絡会は「京都・観光文化検定」(京都検定)を主催する京都商工会議所が呼びかけ、36都道府県の56地域から計78人の実務担当者が参加する予定だ。
上京区のホテルと中京区の同商工会議所を会場に各地の取り組みを紹介し、商標管理や問題集の情報交換をする。商工会議所の担当者は「全国的に盛り上がれば、受験者も増える」と期待する。奈良まほろばソムリエ検定を来年始める奈良商工会議所は「伝統文化体験など新しい要素も盛り込む予定で、他地域の状況を聴きたい」と話す。
(2006年6月8日 大阪・夕刊 2社会)