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学力向上どう活用 「成績楽しみ」「目的議論を」 43年ぶり全国調査2007年04月27日
全員参加型では43年ぶりの全国学力調査は24日、大きな混乱なく終わった。文部科学省は調査の狙いを「学力の検証とその底上げ」と説明するが、この夏にも公表される結果をどう生かすのかはっきりしない。設問を評価する声が多いのと対照的に、調査自体には「結果が楽しみ」から「期待しない」まで、保護者や教育関係者の見方は様々だ。 千葉県浦安市の母親(37)は小6の長男を塾に通わせていない。今回のテストについて「子どもの学力が全然わからないので、全国的にどのぐらいなのか見てみたい」と気になる様子だ。長男は「すっごく疲れた。でも学校のテストより簡単だった」と話したという。 東京都練馬区の母親(48)は「ランク付けにつながるのが気になる」。これまでも都と区の学力テストを受けてきたが、学校は、すべての科目で平均点より良いと報告する。「この地域は選択制で、学校は大いばり。どの学校に行っても良い教育を受けられるようにすることが大事なのに……」と心配する。 東京都品川区の小6の母親(43)は、進学先として私立中学しか考えていない。毎週のように塾のテストを受けている。「塾での勉強量はものすごい。学校がカバーできるとは思えない」。小6と中3の息子が区立の学校に通う練馬区の母親も「やるならどうぞという感じ」と懐疑的だ。学校の教育力など、本当に知りたいことが今回の調査でわかるか疑問だからだ。 「今回の調査については、何が目的なのかもっと議論したほうがいい」。こう強調するのは品川区の若月秀夫教育長だ。「調査で実態がわかったとして、国が自治体に『がんばれ』というだけでは……。現場の改善に生かすのが目的なら、予算措置を含めて支援するべきだ」と語る。 自治体が独自に実施しているテストとの兼ね合いも悩みの種だ。 「国のテストは終わったけれど……」。広島県三次(みよし)市の市立小の先生はため息をついた。5月には市の、6月には県の、それぞれ学力テストがある。「落ち着かない。早く終わって本来の指導に専念したい」 進学塾「早稲田アカデミー」池袋校の坪井慎一校長は「学校の先生たちの間で、いい意味での競争原理が働くようになる」と評価する。一方で「模擬試験でも2週間で返却される時代。(4〜5カ月も先では)子どもや保護者にはあまりインパクトはないかもしれない」と話す。 ◆学校の評価に利用の恐れも 苅谷剛彦・東大大学院教授(教育社会学)の話 90年代末から「学力をはかるデータがない」と指摘してきたが、学年全員を対象とした調査は問題がある。教育再生会議でいま、学校選択制を前提に児童生徒の集まり具合で予算を配分する、といった議論が行われている。全国学力調査の結果が選択制や学校評価に使われる可能性が出てきた。そうなれば、個々の家庭の違いや親の情報収集力、意識の違いが重要になる。格差の問題だ。また、事前にテスト対策をさせたり成績の悪い子どもを休ませたりすれば、正しい実態把握もできなくなる。 ◆教育施策点検、画期的なこと 今回の調査の専門家検討会議委員を務めた耳塚寛明・お茶の水女子大教授(教育社会学)の話 国が教育施策の結果を今回の手法で自己点検するのは画期的で、今後に生かせるのならその意義は大きい。国や行政が、極端に教育水準の低い学校を具体的に把握し、予算や人を投入できる点で、全員調査で実施したことも重要だ。結果を生かす自治体側の姿勢も完全とは言えないので、「国がデータを送って終わり」にならないように活用方法の研究が重要。競争を促すのが目的ではないので当面、結果の公表方法は慎重であるべきだが、本来は住民に知らせるべきだと考える。巨費を投じた以上、きちんと生かせるかどうかが問われる。 ◇厳密指示で実施 8000人が採点、夏にも公表 3万3000近い会場に約233万人。今回の全国学力調査は、735会場で約51万人が受けた今年の大学入試センター試験と比べて会場数で40倍以上、受験者数でも4倍を超えた。 各小・中学校に問題が届いたのは原則、本番前日の23日。A4判で60ページを超える冊子とビデオのマニュアルはひと足先に配られたが、細かい指示がびっしり。 中身の確認は校長室などカギのかかる部屋で行うよう求めたのをはじめ、教室での机の並べ方から答案を返送用の箱に入れる手順まで。約20分にわたるビデオを見た都内のある公立中学校長は「もっと簡潔でいいのに。費用もかけすぎ」。 悪天候に備える必要がある離島では別の手だてもとられた。伊豆諸島のある中学校には、施錠したジュラルミンケースが1週間ほど前に届き、校長室のカギ付きロッカーで厳重に保管。ケースのカギを開けるための暗証番号は23日に知らされた。 答案用紙は各学校が一晩保管し、原則として25日に宅配業者が回収、文科省が採点・集計を委託するベネッセコーポレーションとNTTデータの採点会場に届ける。答案をスキャンして画像処理し、ベネッセが5000人、NTTは3000人の採点スタッフが作業する。 43年前の一斉調査はすべて選択式の問題だったうえ、各学校が採点して結果だけを文部省(当時)に集めた。今回の採点作業は「期間を想定しづらい」(文科省)が、この夏にも結果が公表される見通し。国は都道府県単位の結果の公表にとどめ、市区町村教委や学校は自らの結果を公表できる。 ◇ 文科省によると、インフルエンザのため北海道や島根など30校で学級閉鎖や学年閉鎖があり、調査が行われなかった。東京都足立区の小学校で近所の火事のため一時調査が中断したほか、広島県の一部では鉄道の遅れで開始が遅れた。調査への非協力や妨害活動はなかったという。
(2007年4月25日付け朝刊 1社会)
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