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石見銀山、『環境配慮』で逆転登録 世界遺産へ根回し成功2007年07月06日
【クライストチャーチ(ニュージーランド)=直井政夫、新谷祐一】いったんは「登録延期」を勧告されながら、28日、国内14件目の世界遺産に決まった、「石見(いわみ)銀山遺跡とその文化的景観」(島根県大田市)。クライストチャーチで開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会までには、「世界遺産の価値がある」と信じ、地球温暖化問題を背景に「自然との共生」にアピールの重点を移した日本政府代表部の根回しがあった。
21カ国の代表で構成する世界遺産委員会での石見銀山遺跡の審議。冒頭、ユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)の担当者が「登録延期」の勧告内容を報告し、その際、「この案件は複雑だから」と通常の2倍の10分ほどかけて説明した。 終わると、各国代表が発言を求めるプラカードを次々に上げた。5、6カ国の代表が「自然環境に配慮した素晴らしい遺跡だ」「登録すべきだ」と訴え、「流れ」は一気に登録に傾いた。発言が多く、通常は1件あたり15〜20分の審議時間が約50分に長引いた。 挙手や投票で登録の可否を決める場合もあるが、今回は壇上のオレ・ブリザイド議長代行(ノルウェー)が「登録に異議はありませんか」と問いかけると、発言はなく淡々と「逆転登録」が決定。国内の産業遺産としては初の登録となった。
●各国に接触 石見銀山遺跡は今年5月、イコモスから「普遍的な価値の証明が不十分」などとして登録延期の勧告を受けていた。これに対する日本政府代表部の作戦は、同遺跡が環境保全に配慮してきた点を強調することだった。 代表部は、延期勧告の2日後にユネスコ本部のあるパリで「外交活動」を開始。同遺跡では16〜17世紀の採掘期、銀採掘跡地で計画的に植林が進められていた。このことを数カ国の代表に紹介すると、高い評価を受けたという。 これがきっかけとなり、他国へも同様な働きかけを始めた。日本政府代表の近藤誠一・全権大使は審議終了後、「『環境に優しい』が決め手になった」と振り返った。 大使は勧告後の1カ月半に、委員会に属するすべての国の代表に会った。ニュージーランド入りした後も、各国代表を見つけるたびに駆け寄り、「サポートしてほしい」と訴えた。 文化庁も、委員国などに勧告に対する100ページを超える文書を作り、青木保長官がイコモス関係者らへ書簡を送るなどの努力を続けた。
●「教訓得た」 いったん登録延期が勧告されたことについて、同庁の岩本健吾・記念物課長は東京での会見で「イコモスがどんな点に着目してくるかや、国際的に専門家の理解を得る重要性がわかり、いい教訓になった」と話した。 今後、世界遺産を目指す国内の候補にも触れ、「経済効果を求めるだけでなく、地域の理解を得ながら保存・整備しなければならない。それが『成功の鍵』だと石見銀山が示した」と語った。
(2007年6月29日朝刊38ページ)
オマーンの保護区、リストから削除 世界遺産委員会 世界遺産委員会は28日、オマーンの「アラビアオリックス保護区」を世界遺産リストから削除すると決定した。登録抹消は72年の世界遺産条約成立以降、初めて。保護すべき動物の数が減少し、地元政府も条約の精神を尊重せず、人類共通の遺産としての価値をもはや持ち得ない、と判断された。事務局の国連教育科学文化機関(ユネスコ、本部パリ)が同日発表した。保護に責任を持つオマーン政府は面目を失う結果となった。 同遺産は94年登録。アラビアオリックスは長い角を持つウシ科の動物で、ユネスコによると、96年には450頭近くが生息していたが最近は65頭に減少。オマーン政府は最近、保護区の範囲を10分の1に縮小すると決定。これが遺産条約の精神に反すると判断された。ユネスコによると、同委は「加盟国が遺産保護の責任を果たさず、残念だ」と表明した。(パリ=国末憲人)
(2007年6月29日朝刊7ページ)
アウシュビッツ、名称を変更 世界遺産委員会 ニュージーランドで開かれている世界遺産委員会は27日、世界遺産に登録されているポーランド南部の「アウシュビッツ強制収容所」の名称を変更することを決めた。 今後は「アウシュビッツ・ビルケナウ――ナチスドイツ強制・絶滅収容所」となる。昨年の委員会でもポーランドの要請で名称変更が議論されていたが、全会一致の賛成が得られなかったため、先送りされていた。 ポーランド政府が改名を求めるようになったのは、メディアの報道で「ポーランドの強制収容所」と表現されたことがきっかけ。ポーランドがユダヤ人虐殺の当事者であると誤解を与えかねないなどと指摘して、名称の変更を求めていた。各国のユダヤ系団体では賛否が分かれていた。 ポーランドのウヤズドフスキ文化相は「これは歴史的真実の勝利だ」と語った。(ベルリン=金井和之)
(2007年6月29日朝刊7ページ)
石見銀山が世界遺産に 登録延期勧告から逆転 国内14件目、産業遺産で初 【クライストチャーチ(ニュージーランド)=直井政夫】ニュージーランド南島のクライストチャーチで開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は28日、「石見(いわみ)銀山遺跡とその文化的景観」(島根県)の世界文化遺産への登録を決めた。同遺跡については、ユネスコの諮問機関が登録延期を勧告し、日本が推薦した候補では初の登録見送りが懸念されていたが、逆転で世界遺産入りが決まった。
国内の世界遺産としては、紀伊山地の霊場と参詣(さんけい)道(和歌山、奈良、三重)、知床(北海道)などに続き、14件目。国内の産業遺産としては初となる。 石見銀山は16世紀以降約400年にわたり採掘された。17世紀ごろには世界の銀産出量の3分の1を占めた日本銀の主産地だったとされる。採掘跡や街道などが01年、世界遺産の暫定リストに登録された。 しかし、ユネスコの諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)は今年5月、「普遍的な価値の証明が不十分」などとして登録延期を世界遺産委に勧告していた。この勧告を受け、政府は、自然と調和した「文化的景観」としての魅力などを関係国などに訴え、今回の登録に結びつけた。 文化庁の土屋定之・文化財部長は今回の世界遺産委での討議について「『自然環境と共生してきわめてユニークな遺跡』などと各国代表から評価を受けた」と話した。 最終的に登録が決まったとはいえ、一度は登録延期の見通しが強まっていたこともあり、所管の文化庁は今後、推薦や暫定リスト記載の基準を再検証するとみられる。来年の登録を目指す平泉(岩手)など、国内で暫定リストに載っている候補7件も、より慎重な戦略を求められそうだ。
■石見銀山遺跡の主な構成資産■ 【銀鉱山跡と鉱山町】 銀山柵内(さくのうち)、大森銀山、熊谷家住宅、羅漢寺五百羅漢 【街道】 鞆ケ浦(ともがうら)道、温泉津(ゆのつ)・沖泊道 【港と港町】 鞆ケ浦、沖泊、温泉津
◆キーワード <世界遺産> 顕著で普遍的な価値を持つ人類共通の資産。建造物、遺跡、文化的景観などの文化遺産、生態系などの自然遺産、両方の特質を備えた複合遺産からなる。今回の世界遺産委員会までに830件が登録されている。エジプトのダム建設などをきっかけに国連教育科学文化機関(ユネスコ)が1972年に採択した世界遺産条約にもとづき、締約国のうち21カ国で構成する世界遺産委員会が定める。締約国は自国の遺産を損傷や破壊から守り、国際的に資金面などで援助するよう求められる。日本は92年に条約を批准し、06年10月現在で183カ国が締約。
(2007年6月28日夕刊1ページ)
(もっと知りたい!)世界遺産へ石見銀山、正念場 国内候補地、狭き門に嘆き 確実とみられていた石見(いわみ)銀山(島根県)の世界遺産登録。初の延期勧告となったが、文化庁や地元自治体らは近く出る最終決定までの逆転を期待する。地元の思惑通りシルバーラッシュの再来となるかどうか。 (細沢礼輝)
島根県中央部に位置する大田市。日本海を背に10キロほど山あいに入り込むと、しっくい壁が並ぶ町並みが現れる。16世紀から17世紀にかけ、世界有数の銀産出地として栄えた石見銀山。大正期の閉山後は過疎化が進んでいた集落に、「銀の国 世界へ再び」と書かれたのぼりがはためく。 05年秋、政府が世界遺産への推薦を決めて以来、地元は400年ぶりのシルバーラッシュに沸いてきた。飲食店は新たな名物料理づくりに励み、土産物屋には「銀山」や「天領」の名を冠した新商品が並んだ。市名を「石見銀山市」に改める構想も浮上。遺跡周辺では今も、「世界遺産にふさわしい景観」をめざした電柱撤去と11億円をかけた遺跡紹介施設の建設工事が急ピッチで進む。 * 新潟県佐渡市に5月12日、ともに世界遺産をめざす大田、佐渡(佐渡金山)、愛媛県新居浜(別子銅山)の3市長が集まった。「世界遺産に最も近い」として、大田市の竹腰創一市長が討論会に臨んだ当日夜、延期勧告の知らせが飛び込んだ。 地元住民の多くは「まだ信じられない」と話すが、「登録予定」と刷り込んだ旅行パンフレットを回収する業者も現れた。バスツアーを企画していた大手旅行会社は「登録直後の夏休みに銀山ブームを狙っていたが、見通しが立たなくなった」と落胆する。 「顕著な普遍的価値の証明が不十分」とする勧告内容に、県や市は「意外だ」「価値観が違うのか」と不満をあらわにする。しかし、「遺跡の価値がわかりにくい」という弱点がささやかれていたのも事実だ。 遺跡は鉱山本体から鉱山町、積み出し港など440ヘクタールに及ぶが、調査が済んでいるのは0.1%。600カ所を数える坑道のうち、一般立ち入りができるのは1カ所だけだ。栄華をしのぶ町並みも大半は1800年の大火で焼けている。 ここ数年観光客は急増し、今年の大型連休は過去最高の5万2000人を集めた。しかし、横浜市から訪れた観光客(70)は「古い町並みだったら、木曽の妻籠にかなわない。興味がある人はともかく、自分にはなぜ世界遺産の候補なのかわからない」と不満げだ。 文化庁と県、市は反論文書を作成したり、パリのユネスコ本部で説得活動を展開したりして、あくまで逆転登録をめざす姿勢だ。一方、地元には「遺跡の環境は見違えるように整い、知名度も上がった。もう世界遺産の看板にこだわらなくてもいい」という声もある。 * 地域おこしの狙いもあり、世界遺産候補に「お国自慢」を担ぎ出す動きは各地で熱を帯びている。文化庁が昨年始めた公募制には、出羽三山や善光寺、錦帯橋など24カ所が名乗りを上げた。 一方、ユネスコは世界遺産の総数が830件にのぼることから、新規登録を抑える姿勢だ。04年に34件だった登録数は06年は18件で、審査件数に対する登録率も82%から64%に下がった。登録数の少ない国を優先する傾向もあり、いっそう狭き門となっている。 日本の推薦候補が登録勧告を得られなかったのは初めて。政府の「お墨付き」が通用しなかったことへの不安も広がる。 岩手県の平泉はイコモスの現地調査を今秋に控える。県は「価値は十分証明されている」というが、地元の観光業者は「登録確定と思い込んでいると、石見銀山の二の舞いになりかねない」と話す。1月に富士山の暫定リスト入りを果たした静岡県内の旅行業者は「10年以上かかってリスト入りしたら、審査のハードルが高くなっているなんて」と嘆く。
《メモ》 ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関「イコモス」は、日本政府が世界遺産に推薦していた石見銀山遺跡について、推薦内容の大幅な見直しを求める「登録延期」を勧告。最終的に、登録の可否を決める世界遺産委員会は23日に始まる。国内の暫定リストには平泉など文化遺産8件と自然遺産の小笠原諸島が名を連ねる。
■国内の世界遺産 <登録済み> 知床 白神山地 日光の社寺 白川郷・五箇山の合掌造り集落 古都京都の文化財 古都奈良の文化財 法隆寺地域の仏教建造物 紀伊山地の霊場と参詣道 姫路城 厳島神社 原爆ドーム 琉球王国のグスク及び関連遺産群 屋久島
<暫定> 平泉の文化遺産 富岡製糸場と絹産業遺跡群 古都鎌倉の神社・寺院ほか 富士山 彦根城 飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群 石見銀山遺跡 長崎の教会群とキリスト教関連遺産 小笠原諸島
(2007年6月20日朝刊33ページ)
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