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国立公園、曲がり角 保護と利用の間で揺れ 法施行50年の今夏、指定拡大2007年08月10日
この夏、日本の国立公園が大幅に広がる。1日に石垣島が指定され、下旬には、尾瀬が新たに1万ヘクタール以上を加えて単独の公園となる。今年は自然公園法の施行50年。瀬戸内海など最初の公園が選ばれたのは70年以上前で、当初と現在では、こうした公園の役割も変わってきた。保護と利用のバランスの取り方も難しくなっている。 海を見下ろす高台で、牛が草をはむ。沖縄・石垣島の平久保半島。案内標識もない砂利道の先、緩やかな傾斜に放牧地が広がる。地元の人が「他にはない」と自慢する風景だ。 1日、この島の北部地域が西表国立公園とくっつき、新たに「西表石垣国立公園」となった。白保のサンゴ礁を含み、南の豊かな生態系の揺りかごだ。 島はいま、論争を呼んだ空港建設が始まり、開発ラッシュ。移住ブームで人口も増え続ける。「北部地域を守らないと島の価値は半減する」と石垣市の担当者は危機感いっぱいだ。開発への期待は高いが、自然を壊しては元も子もない。 今月下旬、日光から独立する「尾瀬国立公園」。尾瀬地域に福島、栃木県側の会津駒ケ岳や田代山周辺などを加え、面積は1万ヘクタール以上増える。国立公園の歴史上、分離は初めてだ。 同地域の昨年の利用者は34万人。ピークの96年のほぼ半数だ。尾瀬の名をアピールできる公園の誕生に、地元観光業者も喜ぶ。 国立公園全体の利用者は減少傾向が続く。環境省は今春、中国語や英語などの冊子を作って、PRに躍起だ。来年夏に支笏洞爺国立公園を一望する会場で開かれるサミットでも、日本の国立公園を内外にアピールするチャンスとみる。 ●自然体感、ニーズ変化 「優れた自然の風景地を保護するとともに利用の増進を図り、国民の保健、休養及び教化に資する」。自然公園は半世紀、こうした目的で指定・管理されてきたが、「優れた自然の風景地」の解釈は、時代によって変わってきた。 戦後の一時期、観光客を呼び込む起爆剤として、国立公園指定の陳情合戦も繰り広げられた。文化的な景観である日光・東照宮が特別保護地区に含まれるなど、国立公園といってもさまざまなタイプがある。 だが生態系や生物多様性を守る考えが広まるにつれ、利用者が求める公園像は変わりつつある。 「時代に応える自然公園を求めて」。環境省の検討会は3月、国立・国定公園制度の見直しを提言した。エコツーリズムの活用を考えて照葉樹林や里地里山、海域を公園に指定するよう促し、鹿児島・奄美群島と沖縄・やんばるの照葉樹林の新たな指定を求めた。提言を受けて、世界有数のサンゴ礁がある沖縄・慶良間諸島などでも指定に向けた動きが出ている。 単なる観光から、自然を体感する利用のニーズが高まっているのに応じて、生物多様性保全の面をより強く打ち出すのが狙いだ。 提言は、尾瀬が独立するように、雲仙天草や富士箱根伊豆など分かりにくい区域を見直し、名称を分ける必要も指摘。環境省は今年度から5年間で国立・国定公園を点検し、公園の再配置を進める考えだ。 ◆景観と生態系、一元的な保護を 日本自然保護協会・横山隆一常勤理事 現在の国立公園の管理は、保護の制度はそろってきたが肝心な場面で機能していない。自然公園法は大規模開発から風景を守るには有効だが、生物多様性を積極的に守るという面では不十分だ。景観には音やにおい、気配などの要素や本来の生物群集が持つ世界も含むというのが景観生態学の考え方だが、こうした概念の拡大に沿って公園の管理と保全を進めてほしい。 景観と生態系の保全は、目の向け方が違うので限界もある。自然そのものの保全には自然環境保全法が、国有林には保護林制度がある。国立公園のあり方を見直すのなら、制度の整理統合も必要だ。 ■日本の国立公園 ・利尻礼文サロベツ ・大雪山 ・知床 ・阿寒 ・釧路湿原 ・支笏洞爺 ・十和田八幡平 ・陸中海岸 ・磐梯朝日 ・尾瀬 ・日光 ・上信越高原 ・秩父多摩甲斐 ・中部山岳 ・富士箱根伊豆 ・南アルプス ・白山 ・伊勢志摩 ・吉野熊野 ・山陰海岸 ・大山隠岐 ・瀬戸内海 ・足摺宇和海 ・阿蘇くじゅう ・雲仙天草 ・西海 ・霧島屋久 ・小笠原 ・西表石垣 (尾瀬は8月下旬に正式誕生)
(2007年8月1日夕刊4面)
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