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(もっと知りたい!)1億円「金塊」運命いかに 盗難、「身売り」…救世主も

2007年09月17日

図  

 バブル期のふるさと創生事業で、青森県黒石市が買った純金こけしが身売りの危機にさらされている。当時、使い道自由で全国にばらまかれた1億円のおかげで、純金カツオやシャチホコがあちこちに出現した。各地の金ぴかのシンボルは今どうなっているのか。

 長良川沿いにそびえたつ天守閣の頂で、反り返った金色のシャチホコが陽光を照り返す。太閤記の出世物語で知られる岐阜県旧墨俣町(現大垣市)。史実では小さな砦(とりで)程度だったとされる城跡に、町が建設した天守閣型の歴史資料館「墨俣一夜城」だ。

 ふるさと創生は88年、竹下内閣が地域活性化の目玉事業として打ち出した。「自ら考え自ら行う地域づくり」を名目に、全国約3300の市町村に、使い道自由の1億円を一律に交付した。

 旧墨俣町が「町おこしの切り札」として選んだのが、計27キロの純金にくるまれた天守閣用と、5分の1に縮尺した展示用の2対のシャチホコだ。天守閣にのせる91年の「シャチ上げ式」には、竹下元首相も姿をみせ、名誉城主に任命された。

 しかし、自慢の金シャチが招き寄せたのは、観光客ばかりではない。

 入り口正面で入城者を出迎えていたミニシャチホコは、02年3月の閉館時間中に雌雄とも盗まれた。翌年、町は800万円をかけて2代目を作ったが、06年10月に再び盗みに入られ、腹びれなどをもぎ取られた。

 以来、展示ケースは空っぽのまま。大垣市は「展示の目玉なので早く再登場させたいが、二度と盗まれるわけにもいかない」として、防犯対策に頭を悩ませる。

    ◇

 金ぴかのサカナの受難はこれだけではない。

 高知県中土佐町が作った純金カツオ像は、県に所有が移った後の93年、高知市の坂本龍馬記念館に展示中に盗まれた。後に逮捕された容疑者の供述などによると、約800万円で売り払われた末、溶かされてしまったという。

 金の換金性は、1億円の活用アイデアに悩む市町村にとっても魅力だった。とりあえず金塊に換え、ふさわしい事業が決まれば換金すればいいと考えたからだ。

 しかし、バブル崩壊後、財政難に見舞われた自治体の中には、事業らしい事業を決めないまま金塊を手放す事態に追い込まれたところもある。たとえば、青森県黒石市の純金こけしは、「財政難の穴埋め」に売りに出された。

 また、50キロの金塊を買った山梨県旧白根町(現南アルプス市)の場合、金塊の使い道は「合併」だった。03年の合併を前に、町は振り分けられた負担金を金塊で「物納」しようとした。しかし、ほかの町村に拒まれ、差損覚悟で7000万円で売却。90年の公開当初こそ人気を呼んだ金塊も、96年からは盗難防止を理由に金庫に預けられたままだった。

    ◇

 盗難、換金。降りかかる苦難を乗り切ったのが、金塊購入のさきがけとなった兵庫県旧津名町(現淡路市)だ。

 淡路島ほぼ中央部にある「静の里公園」は静御前ゆかりの地だが、今や「金塊公園」の方が通りがいい。89年の公開以来360万人を呼び寄せた金塊は、黒いカーテンに囲まれた展示室におごそかにおさまっている。表面の「津名町」の刻印が薄れてみえるのは、なでられ続けた証しという。

 町内の家屋約1500棟が全半壊した阪神・淡路大震災。換金して復興費にあてるつもりが、国費負担が決まって免れた。02年サッカーW杯でイングランド代表キャンプを迎えた際は警備費工面のあてにされたが、ベッカム選手が触ったことで見物客が急増。05年の合併前に換金して町内で分けようという町議会案は町民の反対で立ち消えとなり、2度の盗難の危機も未遂に終わった。

 当初63キロだった金塊は、金相場に応じて107キロから53キロにまで増減したが、製造業者とはいつでも1億円で引き取ってもらう契約を結んである。合併まで7期26年間町長を務めた柏木和三郎さん(76)は「金塊は何度も町のピンチを救ってくれた。宣伝効果も抜群で、立派なふるさと創生になった」と話している。

〈メモ〉

 青森県黒石市が、ふるさと創生の1億円でつくった「純金こけし」の売却を検討している。人口4万人足らずの同市は400億円を超える負債を抱え込み、財政危機に陥っているためだ。売却に反対する住民らは1口1万円で今月末までオーナーを募っているが、2万口の目標に対し、これまでの応募は約5000口にとどまっている。こけしは約58キロの純金が用いられ、市内の「津軽こけし館」で純銀こけしとペアで展示されている。

(2007年9月6日朝刊35面)

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