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(環境ルネサンス)「お近く食材」力 減らせ「フードマイレージ」2007年10月08日
for a Sustainable Society 明日の地球環境のために
買い物に行って食材を選ぶとき、何を気にするか。味と値段、安全性が大方の選択基準だろう。これに加え最近、「距離」という指標が注目されている。遠くでとれたものより、近くでとれたものを選ぶ。それによって輸送に伴う二酸化炭素(CO2)の排出を減らし、地球温暖化の防止に役立てようとの発想だ。「フードマイレージ」という指標を使い、食卓から地球環境に目を向ける動きが広がっている。
◆遠くから運べばCO2増 地産地消で地球冷やせ フードマイレージの直訳は「食料輸送距離」。食料は主にトラックや船、飛行機で運ばれる。輸送距離が長ければ長いほど、石油がたくさん使われ、CO2の排出が増える。航空会社のマイレージは増えればいいが、こちらは減らすことに価値を与える。 元々は英国の消費者運動から始まった考え方だ。01年ごろ、農水省の農林水産政策研究所長だった篠原孝氏(現・民主党衆院議員)が、日本に紹介した。 経済のグローバル化が進むなか、物の輸送がいかに環境に負荷を与えるかという点を問題視した。英国では理念的な運動だったことから、篠原氏は部下だった中田哲也氏(現・九州農政局消費生活課長)に、フードマイレージの数値化を提案。食料の重さと距離を掛け合わせる計算方法ができあがった。 中田氏の試算によると、01年の日本の輸入食料のフードマイレージは約9000億トン・キロにのぼった。各国と比較すると、米国と韓国は日本の3割、フランスは1割にすぎなかった。この数字からCO2排出量を計算すると、1690万トンにのぼる。これは国内の食料輸送に伴うCO2排出量の2倍近い値だった。 中田氏は「想像はしていたが、日本の値は極端に高い」と話す。ただ、「あくまで輸送面だけにしぼった数字。国内産でもハウスで加温したり、化学肥料を使ったりすると、環境負荷は上がる」とも指摘する。 今年の環境白書によると、05年度の日本のCO2排出量のうち、運輸部門は2割を占め、90年と比較すると1.2倍に膨らんでいる。 篠原氏は「物の輸送が、いかに環境へ負荷が大きいか。国際分業がさらに進むと、地球環境はパンクする。国内農業の保護を訴えている訳ではない。今やどんな問題にも環境の価値が優先する」と話す。
「POCO(ポコ)」 2年半前、こんな単位が生まれた。有機農産物など安全な食品を宅配する「大地を守る会」(東京・六本木)が、CO2の量を分かりやすく表示しようと、約8万人の会員向けに編み出した。 1ポコはCO2.100グラムに相当する。例えばこんな使い方だ。 豆腐がある。一つは佐賀県産の大豆で作られた。もう一つは米国・ノースダコタ州産の大豆からだ。東京の消費者がこれらの豆腐を食べる場合、輸送に伴うCO2排出量は佐賀産が0.5ポコ、米国産が2ポコになる。佐賀産を食べた場合、1.5ポコ、つまり150グラムのCO2を減らせることになる。 「守る会」はフードマイレージを基に70品目の食材について国産と輸入品のポコの差を算出し、ホームページで公開している。なるべくポコの少ない食材を、と会員らに呼びかける。 ポコの語源は、CO2を固化したドライアイスが水の中で「ポコポコ」と音を出すのと、「ちょっと」という意味のスペイン語の「ポコ」をかけたそうだ。少しずつポコを減らそうというメッセージでもある。 環境省は、国民1人が家庭で排出するCO2の量を1日6キロと算出。京都議定書の削減目標を達成するため、「1人1日CO2を1キロ減らそう」と呼びかけている。 有機農業を推進してきた「守る会」はフードマイレージを、食べ物と地球温暖化対策を結ぶキーワードとして位置づける。その削減事業は、05年度に環境省のモデル事業に選ばれた。 昨年からは宅配の対象商品にポコを表示し、請求書に減らせたポコ量を記入し、会員の意識を高めている。また、年内には、フードマイレージを表示したカフェを都内にオープンする予定だ。 ただ、国産保護が目的で、世界貿易機関(WTO)の自由貿易体制に逆行するとの指摘を受けることがある。守る会の広報担当、大野由紀恵さんは「国産以外はだめ、と言っているわけではありません。できるだけ近くのものをという趣旨です。世界中を巻き込んだ価格競争が広がるなか、消費者がカロリーや値段を気にするようにポコを気にしてほしいのです」と話す。
◇立命館・大ゲーム使って学ぶ 鳥取環境大・学食の献立見直し 立命館大学(京都市北区)で、「買い物ゲーム」を使ってフードマイレージを学ぶ授業があった。 9月10日の集中講義。40人ほどの学生が8班に分かれ、食材の写真と産地、値段が書かれたカードを集めていた。カードの食材は、大阪市の中央卸売市場のデータを基に作成されたものだ。 学生らは現代チームと1970年チームに分かれ、4人家族の夕食の買い物をしていた。それぞれの時代の物価を反映させ、予算の上限は現代チームが1400円、70年チームは550円。 さて、何を競うのか。カードの裏の星(★)マークがポイントだった。星1個が、CO2.20グラムに相当する。カードを集めるときは、星は見えないようにしてあり、買い物を終えた時点でその合計を集計する。 たとえば兵庫のジャガイモは星1個だが、メキシコのバナナは星23個。各班は、星マークの合計の少なさを競った。結果は「70年」の夏チームが、星12個で最も少なかった。献立はカレーとサラダ。学生は「旬の材料を選んだのがよかった」と講評した。 授業を担当した小幡範雄・政策科学部教授(環境工学)は「地球温暖化問題は研究者がことを難しくしているきらいがある。こうした身近な生活から考えていくことが大切」と話す。 この買い物ゲームは、排ガスやばい煙に苦しんだ西淀川公害訴訟の原告らでつくる「あおぞら財団」(大阪市)が企画し、教材として貸し出している。 どういう手段で買い物に行くかもポイントだ。同財団の研究員、林美帆さんは「往復9キロのショッピングセンターに車で買い物に行くと、星は105個にもなる」と言う。「今の社会、ちょっと先のコンビニに行くのも車を使う。こうした行動をどう変えていけばいいのか」と林さんは問いかける。
「フードマイレージによるCO2削減プロジェクト」 約1000人の学生が通う鳥取環境大学(鳥取市)は05年から、学長直轄のこんな取り組みを始めた。 鷲見育亮(すみ・やすあき)教授が学生らに呼びかけ、学生食堂の献立のフードマイレージを調べた。一番高かったのが、鶏肉のバター焼き。鶏肉がブラジル産だった。人気の高いカツ丼もその次に高く、豚肉はチリ産だった。これらの肉を鳥取産に替えると、一皿当たり45グラムのCO2が減らせることが分かった。 だが、実際に鳥取産の肉を使う場合、値段が高くなり、安定供給できるかという課題が残った。使われている野菜も、鳥取産は半分しかなかった。 古沢巌学長は「地元産のものを使えば地域の活性化にもつながる。どこかに風穴をあける必要があり、そうした政策をつくるのが大学の役割でもある」と話す。 日本の食料自給率は4割を切った。輸入食料から地元の食材に換えることが、温暖化対策と自給率アップにもつながる。古沢学長は「まず学食から、地産地消を」と意欲を燃やす。
◆主な食材の輸送に伴うCO2排出量(ポコ)の比較 1ポコ=CO2、100グラムに相当
●食パン 1斤(小麦 250グラム) 産地 北海道産 米・モンタナ州産 輸送距離 831キロ 1万327キロ 輸送手段 トラック トラック、船 ポコ 0.35 1.45 ………………………………………………… 差 1.1ポコ
●タコ 1匹(200グラム) 産地 北海道産 モーリタニア産 輸送距離 1005キロ 2万1302キロ 輸送手段 トラック 船 ポコ 0.34 1.62 ……………………………………………… 差 1.28ポコ
●ウナギ 1串(85グラム) 産地 鹿児島産 台湾・高雄産 輸送距離 955キロ 2435キロ 輸送手段 トラック 飛行機 ポコ 0.14 3.13 ……………………………………………… 差 2.99ポコ
●アスパラ 1本(30グラム) 産地 長野産 オーストラリア産 輸送距離 167キロ 7728キロ 輸送手段 トラック トラック、飛行機 ポコ 0.01 3.41 ……………………………………………… 差 3.4ポコ
●ブルーベリー 1パック(200グラム) 産地 長野産 米・ミシガン州産 輸送距離 167キロ 1万1853キロ 輸送手段 トラック トラック、船 ポコ 0.06 27.8 ……………………………………………… 差 27.74ポコ (消費地は東京。「大地を守る会」の試算から)
■ポコの計算の仕方 (1)重さ(トン)×(2)輸送距離(キロ)×(3)排出係数(グラム)÷100
………………………………………………………………………………………………………… ※排出係数=1トンのものを1キロ運ぶときに出るCO2排出量(グラム) トラック 167 飛行機 1510 船 38 鉄道 21
■ポコで見るCO2排出量 サッカーボール10個分の体積 1ポコ 日本人1人の1日排出量 60ポコ 環境省が進める1人1日の削減目標 10ポコ
◇フードマイレージとは 輸送量(トン)に、食べ物がとれたところから食べるところまで運ばれる距離(キロ)を掛けたもの。輸送に伴うCO2排出量を推計でき、環境への負荷を表す指標として利用されている。
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