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(観流)直筆「坊っちやん」 夏目漱石の誤字・当て字に味わい

2007年11月05日

写真直筆で読む「坊っちやん」書影
写真「坊っちやん」原稿

 夏目漱石の『坊っちゃん』を直筆で、それも原稿用紙150枚全文を新書で読む。今月発売の『直筆で読む「坊っちやん」』(集英社新書ヴィジュアル版)は、原稿をカラー写真でそのまま収録して話題になり、現在4万部近くに上る。文豪の誤字、癖字、書き直しをみんなで楽しんでしまおう、という新機軸の新書だ。

 〈親譲りの無鉄砲で小供(こども)の時から損ばかりしている〉という有名な書き出し。だが、ここでさっそくひっかかる。「か」が「可」の崩し字で読みづらい。くじけそうだ。

 最近では手書きの文章を読み書きする機会が減っている。そもそも100年前の、旧仮名遣いの作品だ。そうやすやすと読みこなせるものではない。

 本文が始まる前に、崩し字を判読できるように早見表がつく。漱石ルールを頭に入れることがまず必要だ。「胡魔化(ごまか)す」や「何でも蚊(か)んでも」、「焼持(やきもち)」「尻持(しりもち)」に「食(く)ひ心棒(しんぼう)」と、漱石の言葉は時に単なる当て字とは言い切れないおもしろさがある。

 名作の裏舞台をのぞき見できるのも楽しみの一つ。〈山嵐て何ぞなもし〉と、松山の方言がたびたび現れるが、「もし」だけは筆跡が異なる。これは松山出身で編集者だった高浜虚子が書き込んだからだそうだ。

 漱石の直筆原稿は70年に番町書房から複製版が出ている。だが、限定2000部で当時の定価は3万円。

 「国民文学の『坊っちゃん』でなければ新書で出せなかった。中編で長さもちょうど良い」と、集英社新書編集部の忍穂井(おしほい)純二さんは言う。元々直筆ファンで、様々な文豪の直筆を集めている。

 「漱石ってこんな字なんだ、という驚きだけでも伝わるとうれしい。横書きのケータイ小説が売れているが、紙好きのおじさんが究極の抵抗をしています。しかも編集作業としては、究極の手抜きです」

 書家が見ると、マス目に1字ずつ収まっている漱石の原稿は達筆で読みやすいという。とはいえ、漱石の孫の夏目房之介さんでさえ巻末のエッセーで〈我慢して数ページ読んだが、すぐ挫折してしまった〉……。

 でも大丈夫。書店では、活字版の『坊っちゃん』がそばに並んでいる。

(10月27日付け朝刊30ページ 文化)

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