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(変わるアフリカ)「笑顔」増やす闘い 脱貧困へ食糧増産

2007年12月17日

写真トウモロコシのパンと小魚、野菜の給食を食べる小学生たち=ケニア西部サウリ村で、中野智明氏撮影

 温かい料理を受け取った子どもたちから笑顔がこぼれた。ケニア西部サウリ村。貧困やエイズに苦しんできた村は食糧増産に成功し、学校給食を軌道に乗せた。変化を後押しするのが、先進国の援助資金を集中させ、成果を引き出す「ミレニアム村」プロジェクトだ。国連主導の「実験」はアフリカ各地に広がる。だが貧困問題への日本や世界の関心はまだ低い。

 サウリ村のニャムニニア小学校。午前の授業が終わるやいなや、子どもたちが歓声を上げながら教室を飛び出し、給食室の前に列を作った。

 それまで多くの子どもは昼に帰宅していた。だが2年前、給食が毎日配られるようになってからは、670人の児童全員が午後も勉強を続けている。「子どもたちの栄養不足が治り、成績も上がった。村人も喜んでいる」とミリセント・アキンオキン校長は話す。

 人口5000人のサウリ村は、04年に始まったミレニアム村プロジェクトの最初のモデル村だ。

 「耕地があり、雨も降るのに農業が弱い。まず食糧増産に的を絞り、それを突破口に生計向上を図ってきた」。約70人の現地事務所を率いるムトゥオ代表はこう語る。

 「食卓に食べ物を、ポケットにはお金を」。こんなスローガンを掲げて、化学肥料と高収量のトウモロコシの種が無料配布され、普及員が指導に回った。それまで農民は肥料を使えず、種も、収量の少ない伝統品種しか入手できなかった。

 食糧増産の成果は目覚ましかった。1ヘクタール当たり収量は04年の約1.9トンから05年4.9トン、06年6.2トンと2年間で3倍以上に。栽培面積も倍増した。村人は穀物組合を設立し、仲介業者を通さずに売買、利益を手にした。収量の10%を寄付することで給食が実現した。

 支援は他の分野にも広がる。診療所の開設や蚊帳の配布などによって、マラリア感染率や乳幼児死亡率は大幅に減った。

 国連MDGセンターのマティアス・ヨハンソンさんは「村のニーズを吸い上げながら、井戸の改修や道路の補修なども進め、生活全般を底上げしていきたい」と語った。(論説委員・脇阪紀行)

 ◇援助強化、足踏み

 暗黒大陸と呼ばれたアフリカに、最近、経済成長や紛争の減少など明るい変化が生まれている。

 だが一方で、大きな影を落とすのが貧困だ。サハラ砂漠以南では、2割近い乳幼児が5歳までに命を落とす。ミレニアム村プロジェクトを提唱する米コロンビア大のサックス教授が「時は命なり」と訴え、モデル村で「特効薬」を示そうとする理由もここにある。

 ただ壁も見えてきた。プロジェクトは原則5年で終わるため、この間に住民の能力をいかに高め、開発を持続させるかが最大の課題だ。

 これは、貧困削減を目指す取り組みすべてに共通する。援助と自助努力が両輪となってこそ、目標の達成は可能となる。

 だが現実は厳しい。主要先進国の首脳は05年の英グレンイーグルズ・サミットで、アフリカの貧困撲滅に向けた援助増強を約束。だが援助はさほど増えていない。「MDGsの達成期限は8年後に迫っているのに、先進国側に緊急性の認識がなく十分な援助を提供していない」。サックス教授は、いらだちを隠さない。

 ◇明確な戦略欠ける日本

 日本は支援強化に向けた国際社会の旗振り役を期待される。来年、5年に1度の国際会議「第4回アフリカ開発会議」(TICADIV)や、アフリカが主要議題の一つとなるG8サミットを主催するからだ。日本は村落開発や感染症対策、教育支援に加え、援助と民間投資で経済発展を実現した「アジアの成功体験」を意識し、アフリカでも経済成長と貧困解消を目指す。

 問題は、これらの支援をどんな規模で、どれだけ速く実施するかだ。国連安保理常任理事国入りを目指していた05年、小泉首相(当時)は「アフリカの安定なくして21世紀の世界の安定と繁栄はない」として3年間で援助倍増を約束。さらに先進国間の国際公約「ODAの国民総所得比0.7%」の達成に努力すると踏み込んだ。だが、常任理事国入り失敗や財政難でODA予算はピーク時の6割の水準まで落ち込んだ。

 これに対し、英、仏、独などが15年までの0.7%達成を目指してODAを増額する一方、資源獲得を狙う中国がアフリカ支援に力を入れる。

 明確な戦略を欠いた日本に対する落胆や不満が募る中、アフリカ援助の再構築を求める声が強まっている。(望月洋嗣)

 ●毎月報告します

 アフリカと聞いて何を連想しますか? 広大な自然、極端な貧困、医療の遅れ、民族紛争、難民流出……。その姿が国際社会の援助や自立への努力で変わりつつあります。

 例えば、貧困を脱した地域がある半面、貧富の差の拡大や環境破壊などが起きています。地下資源をめぐり、中国などを巻き込んだ新たな外交戦も生まれています。

 日本の役割も問われています。来年にはアフリカ開発会議が横浜で、7月にはG8サミットが北海道・洞爺湖で開かれます。いずれも「環境と開発」が大テーマ。日本の「外交力」の正念場です。私たちは来年夏に向けて毎月、現場と国際社会の視点を重ね合わせ、地球が抱える問題の縮図であるアフリカを報告します。(外交・国際エディター 市川速水)

 ◆キーワード

 <ミレニアム開発目標(MDGs)> 00年の国連ミレニアム・サミットで採択された貧困と開発に関する目標。(1)極度の貧困と飢餓の撲滅(2)普遍的初等教育の達成(3)ジェンダーの平等推進(4)乳幼児死亡率の削減(5)妊産婦の健康の改善(6)HIV、マラリアなど疾病の蔓延(まんえん)防止(7)持続可能な環境の確保(8)開発のための地球規模協力の推進、の8分野で15年までに達成すべき目標を掲げている。

 <「ミレニアム村」プロジェクト> 「十分な援助があれば、貧困からの脱出は可能」の主張を実証しようと、アフリカ10カ国の79村(計40万人)で実施。1人あたり年110ドル(約1万3000円)を農業や教育、医療、水、道路などの分野に集中投資する。国連事務総長特別顧問のサックス米コロンビア大教授の提唱で始まった。資金は政府や財団・企業などが負担。日本は06年、国連の「人間の安全保障基金」から約10億円を拠出した。

■ミレニアム開発目標とアフリカ

○極度の貧困(1日1ドル以下で暮らす人の割合)

サハラ以南アフリカ 41.1%

途上国       19.2%

<サハラ以南アフリカの2015年の目標値 23.4%>

○初等教育就学率

サハラ以南アフリカ  72%

途上国        85%

日本        100%

<目標100%>

○5才未満の乳幼児死亡率(1000人あたりの人数)

サハラ以南アフリカ 172人

途上国        83人

日本          4人

<目標60人>

○HIVの感染者数 3320万人

サハラ以南アフリカ 2250アジア        490東欧・中央アジア   160ラテンアメリカ    160その他        260<サウリ村の問題と変化>

【問題】・約7割が1日1ドル以下の暮らし・学校給食実施は小学生の20%以下・住民の5割超がマラリアに感染

【変化】・トウモロコシの生産量3倍に・学校給食の完全実施で成績も向上・蚊帳配布でマラリア感染率8割減

(12月9日付け朝刊2ページ 2総合)

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