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(わが家のミカタ歳末スペシャル)今年もシメます:前編 しめ飾り、ルーツに謎2007年12月24日 「しめ飾り、ウチのは普通だよ」。しかし、全国2000種類以上… お正月の玄関には、やっぱ「しめ飾り」でしょ。それは家内安全と五穀豊穣(ごこくほうじょう)をもたらす年神様(としがみさま)を迎える飾り。ところが、形は地域でまちまち。しかも各地の玄関でかけるようになった経緯も、イマイチはっきりしないミステリアスな存在なのです。そこで歳末のわが家のミカタは特集「今年もシメます」。(神田剛) * 東京都杉並区のグラフィックデザイナー森須磨子さん(37)は、しめ飾り研究家としても知られている。この10年ほどの年末年始は、地方のしめ飾りを探し求めて一人旅。宿の人に傷心旅行と勘違いされ、やたらと気を使われるのにも、もう慣れた。 1年のうち、しめ飾りを探し歩けるのは、この時期だけだ。数日間の旅では可能な限り多くの街を訪ね、年末は露店で買い、年明けは家々に飾られたものを写真に撮る。 時刻表片手に、乗り換えの合間にも街を駆ける旅は、西村京太郎サスペンス顔負け。東北地方を回って元日未明に帰宅。2日の朝には京都へ向けて出発したこともある。 体力的には相当キツい。しめ飾りでパンパンの袋をかついで雪道で転倒。散乱した中身を独り拾い集めた時はさすがにヘコんだ。だって重いんだもん。涙が出ちゃう。 高校の時から興味を持ち、今や自宅には200個の現物と2000種類の写真がある。成果の一部は今月、絵本「たくさんのふしぎ」(福音館書店・08年1月号)にまとめた。 でも、旅先で会う人の多くは不思議そうに言う。「しめ飾り? ウチのは普通だよ」 いえいえ、一体何が普通かわからないほど、形のバリエーションは多いのだ。 綯(な)う、撚(よ)る、編む、組む、結ぶ、束ねる、巻く。わら細工は、たった七つしか手法がないのに、農家の人たちの手が生む形は、「山ひとつ、川1本越えて異なることも。私が見たのもまだ一部です」。 ゴボウやダイコン、縄状や輪っか状が基本形だが、細部はばらばら。金沢には亀型、宮崎は鶴型とおめでた系アニマルも。「柿食えば」の法隆寺がある奈良は干し柿付き。北海道ではわら代わりにスゲで作られ、高知はウラジロの葉がなぜか表向きで緑色だ。 森さんは、広島市内のしめ飾りにはない御幣が、厳島神社のある宮島には不思議とついていることにも気づいた。 「そりゃ神の島だから」。地元のおばちゃんはこともなげに言ったが、正確なルーツは不明。実は、このよくわからないところも魅力なのだ。 古事記には、天照大神(あまてらすおおみかみ)が再び岩戸に隠れぬよう「尻久米縄(しりくめなわ)」を張ったとある。平安時代の土佐日記にも、正月に家を縄で囲む下りがある。だが絵がない分、今のしめ飾りになる過程がよくわからない。 各地に広がった経緯もそうだ。江戸時代から飾っていた所もあれば、明治時代に東京から持ち帰って広がったという所も。一般化したのは戦後という所だってあるのだ。 伝統であり、変化を続け、今も存在感を放つ。生活や住宅が変わっても、森さんにはしめ飾りが「消えそうで消えない文化の種火」と映る。 そんな種火を絶やさぬ人のお話は、来週の回でご紹介。
(12月18日付け朝刊26ページ 生活2)
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