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(時時刻刻)再生紙、まさかの不信 リサイクル優等生・製紙各社が古紙配合率を偽装2008年02月04日
「再生紙」への不信が急速に広がっている。古紙を混ぜる割合を日本製紙など製紙各社が偽っていたことが発覚。17日も業界首脳らが相次ぎ陳謝して回ったが、複写機メーカーなど顧客企業がコピー用紙の取引を中止するなど不買の動きも出てきた。リサイクルの優等生のはずだった製紙業界が、なぜこんなことをしたのか。消費者をだました「エコ偽装」のツケは重く、混乱は当分おさまりそうにない。 ●購入ボイコット次々 「ご迷惑をおかけしました」 17日午後、日本製紙グループ本社の中村雅知社長は東京・霞が関の経済産業省を訪れ、甘利経産相に頭を下げた。 前日の16日、中村社長は突然会見し、同社の再生紙の多くで古紙の配合率を偽っていたと発表。引責辞任を表明しているが、甘利経産相は「本来、製紙業界はリサイクル社会を先導するリーダー役。極めて遺憾」と突き放した。 中村社長の3時間後には、日本製紙連合会(製紙連)会長の鈴木正一郎・王子製紙会長が細野哲弘・製造産業局長に「大変遺憾。局長には深く陳謝申し上げたい」とわび、「偽装した製紙各社の社内調査をまとめ、来週中にも報告したい」と話した。 業界最大手の王子の幹部は17日、遅くとも06年から再生紙の古紙配合率の偽装が始まっていたことを明らかにした。「談合ではないが、業界ではみな知っていたと思う」(幹部)。この通りなら、王子首脳の責任を問う声が強まるのは必至だ。 製紙会社からコピー用紙を仕入れて顧客に売っている複写機メーカーは17日、相次いで日本製紙との取引中止を決めた。 富士ゼロックスは「古紙配合率の基準を下回っていた」として、日本製紙から調達している再生紙の販売や受注を中止したと発表。キヤノンマーケティングジャパン(MJ)やリコーも同様の対応を決めた。「顧客に迷惑をかけないよう代替案を検討している」(キヤノンMJ)、「ほかの製紙会社にも問い合わせ中」(リコー)という。 コニカミノルタホールディングスは「再生紙を使わないなども含めて対応を検討中」。紙ファイルなどの文具メーカーのキングジムも、古紙配合率について製紙会社への問い合わせを始めた。 宮城県は昨年末、プロ野球楽天が本拠地にしている県営球場の命名権で日本製紙と契約し、球場名を「日本製紙クリネックススタジアム宮城」にしたばかり。命名権は年2億5千万円で3年契約。同県幹部は「成り行き次第で貴重な財源を失いかねない」と気をもんでいる。
●「より白く」競争背景 なぜ、製紙各社は偽装に走ったのか。 経済産業省の加藤庸之・紙業生活文化用品課長は17日、記者団に「再生紙の品質と古紙配合率を両立できないということなのでは」と解説した。 再生紙は古紙を溶かしてインクを抜き、通常のパルプに混ぜてつくる。最近は家庭用プリンターの普及で、求められる品質が高まるが、日本製紙は「(年賀はがきの品質の維持には)当社の技術では、(古紙の)配合率は1〜5%が限界」(中村社長)という。 製紙業界には、高い配合率が必ずしも環境に優しいわけではない、との主張もある。品質維持には、燃料の重油や、紙の色を白くするための化学薬品が多く必要で、二酸化炭素の排出量も増える、という理屈だ。ただ、製紙各社はそうした事情を、日本郵政などの顧客に率直に伝えなかった。背景には過当競争がのぞく。 業界のある幹部は「顧客は、『よその再生紙は、おたくのより白いし、チリも少ない。価格をまけてほしい』などと言いがち。そういう声に応えようとする各社の競争の結果、こういうことになった」と話す。 日本製紙は当初、工場内で発生する「損紙」も古紙の材料にすれば40%でも品質を維持できるとみて年賀はがきを受注。その後、古紙とは認められないと判明したと説明する。一度手にした受注は、ウソをついても手放したくなかったわけだ。 かさばるわりに商品価格の安い製紙業界は内需の依存度が高いが市場は頭打ち。官公庁や民間の安定した発注がある再生紙市場の魅力は大きい。再生紙の古紙配合率を事後に科学的に検証する方法も技術的に難しい。 中部大学の武田邦彦教授(資源材料工学)は「『古紙配合率は高いほどいい』という誤った固定観念が社会にあるのは事実。製紙会社は、これに流され、ばれないとみて偽装したのかもしれない。が、そのやり方は許されない」と指摘する。事情をきちんと説明するより、偽装を選ぶ体質。その一端は昨夏にもかいま見えた。 日本製紙や王子製紙など15社25工場で大気汚染防止法違反事件が発覚。計測値を記録するペンを記録紙から離したり、計測値を書き換えたりといった隠蔽(いんぺい)行為が各地で行われていた。「法令順守」を甘く見る業界の「ならい」は否定できない。
●稼げる「エコ」、背伸びの一因 いち早くリサイクルの仕組みを確立したはずの再生紙での偽装の発覚に、専門家からは「環境重視のかけ声が先行する中で、他業界を含め、エコをうたう商品は本物なのかという疑問がわきかねない」(大和総研の河口真理子・主任研究員)との声が出ている。 経営や商品・サービスに環境への配慮を求める声は年々強まり、「企業へのプレッシャーは10年前とは比較にならず、環境を前面に出さない選択肢はない」(河口氏)。 今後想定される温室効果ガス排出の規制強化が、企業の生き残りを左右しかねないという事情に加え、「商品を差別化する際に『エコ』が有力な武器になり、企業を実力以上の環境重視に走らせている」(三菱総合研究所の萩原一仁・主任研究員)という。 実際、日本製紙の中村社長は偽装の動機について「顧客の要望を何とか取り入れようというのが強かった」と釈明。裏付けのない看板を掲げようとする実態が露呈した。
◆グリーン購入法、見直しも 「コピー用は古紙100%、印刷用なら70%以上」 環境次官が表明 環境省の田村義雄事務次官は17日の記者会見で「多くの方の努力を踏みにじり遺憾だ」と述べた上で、国や独立行政法人に環境配慮製品の調達を促すグリーン購入法の見直しを検討する考えを明らかにした。月内にも専門家による検討会で議論を始める。 01年に施行されたグリーン購入法は、紙、文具や家電など222品目について細かく購入する際の判断基準を設定。民間も参考にしている。紙製品では、コピー用紙は古紙100%、印刷用紙は同70%以上と定めているが、メーカーの自己申告だけで、基準を満たしているか国などが確認しているわけではなく、違反への罰則もない。 このため検討会では、今回の偽装の実態を把握した上で、再生紙の定義や表示、古紙配合率を確認するための検証方法に加え、契約のあり方などグリーン購入法にも改善すべき点がないか、問題点を洗い出す。
(1月18日付け朝刊2ページ 総合2面)
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