1.「M&A」って何?
2005年はあなたにとってどんな年でしたか。今年の流行語大賞も決まりましたが、「M&A」もよく耳にしたことばのひとつではないでしょうか。
「M&A」ということばは英語の「merger and acquisition」を略したもので、「企業の合併・買収」と訳されています。今年の日本の企業がかかわるM&Aは12月になって2000件を超えています。
軽水炉を使う原子力発電システムの名門メーカーであるアメリカ・ウェスチングハウス(WH)が売りにだされています。日本の原発メーカーの三菱重工、東芝も名乗りを上げました。今回は「WHの売却」という経済記事からエネルギー問題の窓をひらいて、いっしょに考えていきましょう。
2.ワークシートのポイント
(1)「M&A」から世界の動きがみえる
日本はM&Aが活発ではありませんし、一般的でもありませんでした。M&Aへの関心が高まったのは、やはりニッポン放送株をめぐるライブドアとフジテレビジョンの攻防ですね。
新聞記事を丁寧に読むと、M&Aに関連する記事がたくさん掲載されています。記事を収集し、スクラップしていくと世の中の動きが見えてきますよ。冬休みに挑戦してみませんか。
(2)なぜ、どうして買収するのか
2000億円規模の買収額にもかかわらず、いくつもの企業が名乗りをあげているのはなぜなのでしょうか。契約締結の運びとなれば、三菱重工にとっては初の大型M&Aとなるわけですが、どうして買収に名乗りをあげたのかを調べてみましょう。
記事にもあるようにWHが、1957年に加圧水型を世界ではじめて商品化し、世界の原子炉の4割超がWH社の特許を使っていることも影響しているようですね。19日に締め切られた最終入札をはじめ、1月末には売却先が決まるということですから、情報を収集することからはじめましょう。
「加圧水型」「沸騰水型」の違いについても調べてみましょう。原子力百科事典「ATOMICA」が参考になります。
http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/
(3)バブル崩壊以後にM&Aの件数増加
佐山展生一橋大学大学院教授によれば、敵対的買収には大きくわけて2種類あるそうです(『M&Aがやってきた!』日本経済新聞社編)。ひとつは単にもうけをだそうと狙っている場合、もうひとつは事業の発展や再編を狙う同業他社によるケースです。
バブル崩壊以降、経営の悪化で会社を売却せざるをえない状況に追いこまれた会社が増えたことが、売却への抵抗感をなくし、M&Aの件数を増加させたということです。M&Aは企業の経営戦略のひとつとして浸透してきました。
『企業買収―M&Aの時代―』奥村宏 岩波新書
『M&Aの基本』前川南加子・野寺大輔・松下円 日経文庫
『M&A−20世紀の錬金術―』 松井和夫 講談社現代新書
などを読んでみましょう。
(4)WHとはどんな会社?
WHの原子力部門は、1999年にイギリスの核燃料会社BNFLに売却されています。BNFLはイギリスの中での原子力発電の競争力低下なども影響し、WHの売却を決めたようです。総合電気メーカーであるWHは、原発以外にもいろいろなものを作ってきました。詳しく調べてみましょう。
一方、日本では原子力発電プラントの建設技術が存続の危機にあります。もともとWHから技術を導入して展開してきたわけですから、WHを買収することは、大変重要なことになります。
3.発展学習として
今回の買収は、単なるM&Aとは違いますね。イギリス国内で新設される原発の見込みがない一方、アメリカで新たな原子力発電所建設の機運が高まっていることなども影響しているようです。いずれ枯渇するエネルギー資源についての問題、ものつくり、技術力の維持、継承という視点からも、今回の買収について注目していきましょう。
冬休みに家族みんなで新聞を囲んで、ゆっくり話をしましょう。2006年がよい年になりますように。
(大阪市立天王寺中学校・植田恭子)