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▲98年9月21日掲載
 東京東部の下町にある小学校の三年生と朝鮮学校の初級三年生が、社会科の合同学習に取り組んだ。「地域学習」として学校周辺の皮革産業について調べることから始め、地元の歴史や在日朝鮮人問題へ。出会った当初、無意識に相手を傷つける言葉を口にしたり、遠慮して言い返すことができなかったりした子どもたちが、一年間の学習の後、どう変わったのか。その軌跡を、子どもたちを指導した雁部(かりべ)桂子先生(五五)がまとめ、韓国で開かれた「日韓合同授業研究会」の交流会で発表した。(佐々木亮)
 歩いて10分、でもどんな子がいるの?
 日朝両語で「名刺」作り交換
 「こんにちは」
 「アンニョンハシムニカ」
 昨年七月、木下川(きねがわ)小学校の三人を、東京朝鮮第五初中級学校の朴希淑(パクヒスク)先生と三十二人の子どもたちが出迎えた。
 木下川小は墨田区にあり、全校児童は約四十人。三年生はこの三人だけだ。
 さっそく、手製の「名刺」を交換して自己紹介。名前、好きなスポーツやタレントを、日本語・朝鮮語を交えて書いた。朝鮮学校の印象を、辰也君は「すごくにぎやか」、未来(みき)君は「日本語を知らないと思っていたのに、知っていたからすごい」と感想文に書いた。
 東京朝鮮第五初中級学校も墨田区にあり、日本の小中学校に当たる。全校で九学年約二百五十人。在日三、四世がほとんどで、朝鮮籍の子も、韓国籍の子もいる。日本で共生していくためにと、三年から週一―二回の社会科の時間に、日本の社会や歴史、在日の生活について学んでいる。スクールバスや電車で通う子が多く、一時間以上かかる子もいるため、学校周辺の人とふれ合う時間が少ない。  木下川小から歩いて十分ほどの距離にありながら、互いにどんな子たちがいるのか知らなかった。
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 木下川小のある町は皮革産業で知られ、全国の豚革の約七割を生産している。  二学期。運動会が終わったころから、合同学習は本格化した。まず、一緒にビデオを見た。豚を殺して肉やソーセージをつくる作業の記録映像。くい入るように見る子、目を背ける子と、反応はさまざまだった。
 ソンス君は「命を大切に」という思いから、「生き物を食べ物にしたり、ランドセルや靴にしたりする人間は、とても残酷だと思う」と感想を話した。
 これに対し、辰也君は「ぼくは残酷ではないと思います。なぜかというと、豚を殺す人は、ちゃんと仕事をしているから。『気持ち悪い』と言いながら、豚を食べるのはおかしいと思います」と言った。
 朝鮮学校の子どもたちは、ハッとした様子だった。
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 「革はどうやって作るのだろう」と、教室を出て皮革工場を訪ねた。豚の原皮がなめされ、染められ、美しい革へと変わっていく。工員らが機械を操る手元を、子どもたちはじっと見つめた。最後に、出来上がったスエード革をもらった。
 オンミさんは思った。「厚さをそろえる人も、形を整える人も、技術がないと出来ない」。ユヒャンさんも「革一枚に、いろいろな人の手がかかっているのが分かった。これからは革で出来たものを大切に使おう」。
 一方で、朝鮮学校のある子は、面白半分に感想を書いた。「工場の中が臭いのに、どうして吐きそうにならないの。工場の人は鼻がつまっているの。だけど、革をもらってうれしかった。今度は、もっといろんな革がほしい」

 皮革工場の悪口に言い返せず
 友だちなら「間違い」と言って
 工場の人をばかにした言葉に、地元の木下川小の子らは思った。
 「においがあるのは当たり前。いい革を作ろうと、一生懸命なのに」
 「『臭い』と言いながら、『革がほしい』というのは、おかしい」
 ところが、話し合いになると、三人は押し黙ったままだ。
 朝鮮学校の子の中にも「いけない言葉だ」という意見があった。だが、「冗談で書いたことにムキに怒っても……」「思った通りに書いた感想文を、責めるのはおかしい」という声の方が大きかった。
 雁部先生は問いかけた。以前、朝鮮学校の前を通りかかった他校の子が「キムチ臭い」という言葉を投げつけた。「みなさんはこう言われたら、どう思いますか」
 朝鮮学校の子が答える。
 「その子に言い返す」
 「朝鮮人が朝鮮料理を食べるのは、いけないことではない。日本人だってキムチを食べるのだから、けちを付けることはよくない」
 父母や祖父母が受けた「民族差別」へと話が広がっていく。話すうちに、子どもたちは「あっ、そうか」と、表情を変えていった。「キムチ臭い」と言われた時の自分たちの気持ちと、「皮革工場は臭い」と言われた木下川小の子が重なることに気付いたようだった。

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 「怒っていたのに、どうして言い返さなかったの」
 朴先生は辰也君に聞いた。
 「臭い」と言った子は、辰也君が一番仲良しになった子だった。「言い返したら、遊んでもらえないと思ったから」
 「そんなことないよ」と、朝鮮学校の子どもたち。朴先生も「友だちだと思うなら、『間違っている』と言ってほしかった」。
 辰也君のおばあちゃんは革工場で働いている。「今度友だちが革工場のことを悪く言ったら、その子にちゃんと注意します」

 肉や皮を取る「と畜」は残酷?
 「命もらって人間は生きる」
 「皮革工場で材料に使う豚皮は、どこから来るの」
 冬が近づくころ、木下川小と朝鮮第五の合同学習は、こんな課題に進んだ。
 肉や皮を取るための「と畜」を、子どもたちは「人がいやがる仕事」だけど、「がまんして」「しょうがなくて」「私たちのためにやってくれている」と考えていた。
 雁部先生と朴先生は思い悩んでいた。
 「親が働く焼き肉屋や皮革工場は、と畜という仕事なしにはあり得ない。それなのに私たちは子どもにと畜を見せようとせず、『残酷な仕事』と差別さえしてきたのではないか」
 「どんな仕事にも、技や誇りがある。生き生き働いている姿を教えたい」  と場で働く人を教室に招いて、話をしてもらった。
 「私たちは、皮や肉を良い品にするように真剣です。その品が、多くの人の生活を支えているからです。それが私たちの誇りであり、良い品を作る技術もまた誇りです。自分は食べたり着たりしているのに、『動物を殺すのは残酷』と言う人がいます。でも、米にも野菜にも命があり、人間は命をもらって生きているのです」
 教室訪問のお礼の手紙に、ヤンテ君はこう書いた。「人のために働くということが素晴らしいと思った。僕もそういう人になるよう勉強したい」

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 「木下川のことや朝鮮のことを、もっと知りたい」
 二学期終了間近の十二月、学習中に出た疑問を調べ、意見を発表する会が開かれた。
 出会ったころには、遠慮がちにしか言葉が出なかった子が、みんなの前ではっきりと話をしていた。雁部先生は手ごたえを感じていた。「自分たちで考え、調べ、やり遂げたという自信が、子どもたちを変えた」
 学習を振り返って、エミさんは考えた。「初めは『残酷。気持ち悪い』なんて言っていたのに、今は逆だ。(と場の人たちに)『ごめんなさい』の気持ちでいっぱいです」
 光瑠さんは書いた。「『なぜ朝鮮人が日本にいるのか』という発表を聞いて、『日本人はひどいことをしたな』と思った。もし、私が朝鮮人なら、『なんで差別するのだろう』と思います」
 ソンジン君は「最初は木下川小の子と話さなかったのに、今はすごく仲良くしている」と書いた。この間の自分たちの変化に、ちょっと驚いている。

 教師レベルの信頼築く
 日韓合同授業研究会
 雁部先生が合同学習を発表した「日韓合同授業研究会」交流会は、今夏ソウルなどで開かれた。朝鮮学校での実践や子どもの様子が韓国で報告される機会はあまりなく、韓国の教師たちは熱心に聴き入っていた、という。研究会の日本側代表・善元幸夫さんは「授業実践の積み重ねと先生レベルの交流が、日本・南北朝鮮の架け橋になれば」と話す。
 研究会には、日本と韓国の教師らが参加している。戦後50年の1995年にスタートし、今年で4回目。「歴史文化」を縦軸に、「同時代にアジアで生きる仲間」という視点から「環境」を横軸に、授業実践を持ち寄り、フィールドワークに出かけるなど交流の幅を広げてきた。会が始まった当初は、韓国側の根強い「反日感情」など、両国の溝の深さを再認識させられることが多かったが、回を重ねるごとに「互いの顔が見える信頼関係」を築けてきた、という。
 研究会は、今年の交流会の報告会を26日午後6時半から、東京・文京シビックセンターで開く。問い合わせは、原さん方(電話047・332・5074、午後7時−10時)へ。


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▲98年9月4日掲載
 京都大大学院は今夏実施した修士課程入学試験で、在日朝鮮人向けの外国人学校である朝鮮大学校(朝大、東京都小平市)の出身者三人の受験を認め、一人が合格した。文部省は、朝大のような各種学校を修了しただけでは大学院の受験・入学資格はないとしてきたが、理学部の大学院である理学研究科が「出身学校によって資格の有無が決まるのはおかしい」として、国立大大学院で初めて朝大への門戸開放に踏み切った。外国人学校出身者の大学受験資格をめぐる議論にも、一石を投じそうだ。
 理学研究科などによると、数学、物理学、化学系の三専攻に朝大理学部を今春卒業した三人が出願。先月から今月にかけ実施されている試験を受けていた。入学は来春になる。
 尾池和夫・理学研究科長(理学部長)は「本来は受験を申し込んだ個々人について学力などを判断すればよく、出身校を問題にするのはおかしい」と説明。募集要項の中で出願資格に挙げている「本研究科において、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」の項を適用したという。こうした方針は七月に開いた研究科内の臨時会議で了承された。
 文部省は「学校教育法一条の枠外の学校出身者は、国公私立大を問わず、基本的に大学や大学院の入学資格はない」との見解を取り続けている。一条では学校の範囲を小、中、高校、大学、高等専門学校などと規定。それ以外の「学校教育に類する教育を行うもの」は八三条で各種学校としている。
 だが現在では公私立大の過半数が文部省の指導を無視し、朝鮮学校やインターナショナルスクールなど「一条校」枠外の外国人学校からの受験を認めている。大学院も、都立大などで朝大出身者の入学実績がある。
 日本弁護士連合会は今年二月、外国人学校出身者に対する国立大の受験拒否などは「重大な人権侵害」だとして、政府に是正を勧告した。 の出場を目指している。

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▲98年9月8日掲載
 「日本人とタイ人が結婚するときは、どんな手続きが必要なの?」「約束どおりの賃金を払ってもらえなかったら?」――日本の非政府組織(NGO)と在日タイ大使館が協力して、「タイ・日ハンドブック 家族編」「労働者編」を作った。日本で暮らすタイの人やその家族に向けて、家族や労働にまつわる法的手続きや対応策を、タイ語と日本語でわかりやすく説明している。
 中心になったのは、在日外国人女性の人権問題にかかわってきた「女性の家HELP(ヘルプ)」(東京都新宿区)。
 東京のタイ大使館やタイ労働事務所の職員、両国の弁護士、日本の福祉事務所職員らが編集委員となり、離婚、出産や医療、労働上の問題を洗い出した。  「初めは、日本の法律の解説をタイ語に訳せばいいと思っていたが、タイ人スタッフから『生活習慣が違うのに、法律だけ言われても理解できない』と指摘され、かなり書き直した」とHELPの東海林路得子(るつこ)ディレクターは話す。
 家族編、労働者編を各千部作った。日本人は一冊千円、タイ人は無料。申し込みはHELP(電話03・3368・8855=平日午前10時―午後5時)へ。
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