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|記事と写真|学習のポイント|ワークシート|バックナンバー| ダムが寸断、「死んだ」川 電源の開発に重い代償(朝日新聞東京本社発行 11月18日付朝刊)
○河口は海岸線後退 「ダム街道」と呼ばれる天竜川。支流も含めた水力発電所の総出力は約190万キロワットにのぼる電源地帯でもある。 長野県の諏訪湖から静岡県の遠州灘まで213キロの本流には、10〜20キロごとに五つの発電用ダムがある。 上流から中部電力の泰阜(やすおか)、平岡ダム、政府系の電源開発が管理する佐久間、秋葉、船明ダム。いずれも、ダムでせき止められた川の水はほとんど流れず、濁った緑色をしている。長さ10〜20キロの川がダム湖と化し、階段状に連続していると思えばいい。かつて「暴れ天竜」と恐れられた面影はない。 土砂のたまり方も激しい。堰堤(えんてい)の高さが50〜60メートルの泰阜、平岡ダムは総貯水量の8割以上が白っぽい土砂で埋まり、ダム湖はほとんど歩ける状態。水深はひざぐらいしかないところもある。 泰阜ではダム湖だけでなく、堰堤の直下も土砂がたまっている。次の平岡ダムの上流部ですでに堆積が始まっているわけだ。電発の最初のダムとして56年に完成した佐久間ダムは総貯水量3億2000万トンの34.7%が埋まり、堆砂量は日本最大となっている。 下流に行くと、水の干上がった「河原砂漠」が目立つ。河口の静岡県竜洋町などでは海岸線が後退し、消波ブロックが積まれている。 こうした事情は、江戸時代に「越すに越されぬ大井川」といわれるぐらい水量の多かった大井川も、急流で知られる黒部川も同じだ。 3水系のある地域は地質境界の中央構造線も通り、いまも「山が動いている」といわれる。浸食に弱い花崗岩(かこうがん)などが山から崩れ、その土砂が水と一緒に川に流れ込む。発電ダムはそれをせき止めるだけではなく、ダムの取水地点から発電所まで導水管で流す。放流地点までの間は余計に水が少なく、土砂だらけになる。 ○後背地に水害の危険 ダムの堆砂が進むと、水害の危険が増す。上流部の川床も上がり、洪水時にダムの後背地にはんらんしやすくなる。バックウオーターといわれる現象だ。 実際、長野県飯田市周辺は、泰阜ダムが戦前の36年に完成して以来、「水難の里」と呼ばれている。61年の洪水や83年の台風10号でも市内に大きな被害が出た。水害地区では数メートル規模で土盛りされ、JR飯田線も一部区間が付け替えられた。 発電用ダムの堆砂率が軒並み高いのは、電力会社が浚渫をしなくてもいい仕組みだからだ。 発電所まで導水管で水を運ぶので、堆砂が進んでも取水できる限り発電には影響しない。浚渫には巨額の資金がかかり、電力料金にはね返るので、できれば避けたい。しかも、発電用のダムは国の治水計画に組み込まれていない例が多く、実質的な貯水量が減っても問題にならない。 水力発電を所管する経済産業省は浚渫を促さず、国土交通省もそれを黙認してきた。 中部電力は「川床や水位の上がる影響は危惧(きぐ)している」と説明するものの、本格的に浚渫を進めているわけではない。業界団体の電気事業連合会は「各社で取り組んでいると認識している」と素っ気ない。 また、電力会社はダム湖の水を発電に使う強い水利権を持ち、川にほとんど水を流さなくていい。これが「枯れ川」の原因になっている。 ○下流に排砂、漁業にツケ 堆砂問題に解決の決め手はない。 関西電力が85年に完成させた黒部川の出し平ダムは、堰堤に排砂ゲートを備えつけている。土砂を川に流す仕掛けだ。 91年12月、初めて排砂のゲートを上げ、40万トン余りを流したところ、ヘドロのようなもので富山湾の漁業にまで被害が出た。落ち葉などが湖底で腐った影響だという。 それでも、下流に00年に完成した国交省直轄の宇奈月ダムとも連携し、排砂を続けている。水かさが多い時に流せば、下流に悪影響を与えないと電力側は主張する。 しかし、漁協の霜野久一さんは「漁業への影響は否定できない」と心配する。新潟大の大熊孝教授は「国は排砂を切り札にしたかったが、漁業への影響を無視できなくなった」とみる。 浚渫は土砂を運ぶトラックの交通公害も生む。天竜川の支流にある長野県の美和ダムのように、洪水時に土砂がダム湖に入るのを防ぐバイパストンネルを建設すれば、数百億円の税負担が必要だ。米国のようにダムを撤去するとしても、土砂の扱いが問題になる。 土砂の移動を止め、生態系を壊すダムをどうするか。ダムの寿命とされる100年を待たず、真剣に考える時期が来ている。 ◆堆砂率の高い50ダム (総貯水容量100万立方メートル以上、00年度国交省調べ、東芝セラは東芝セラミックス。堆砂率は堆砂量/総貯水容量) ダム名 (道県・水系、管理者) 堆砂率%(完成年) 1 千頭 (静岡・大井川、中部電) 97.7(1935) 2 小屋平 (富山・黒部川、関電) 95.0(1936) 3 梵字川 (山形・赤川、東北電) 94.5(1933) 4 黒又 (新潟・信濃川、東北電) 89.3(1927) 5 春別 (北海道・静内川、北電) 89.2(1963) 6 大間 (静岡・大井川、中部電) 88.8(1938) 7 雲川 (福井・九頭竜川、福井県) 88.7(1956) 8 西山 (山梨・富士川、山梨県) 88.6(1957) 9 平岡 (長野・天竜川、中部電) 84.5(1952) 10 黒部 (栃木・利根川、東京電) 81.7(1912) 11 雨畑 (山梨・富士川、日軽金) 80.8(1967) 12 岩知志 (北海道・沙流川、北電) 80.7(1958) 13 芦別 (北海道・石狩川、国交省) 79.8(1957) 14 泰阜 (長野・天竜川、中部電) 78.9(1936) 15 中岩 (栃木・利根川、東京電) 76.5(1924) 16 品木 (群馬・利根川、国交省) 75.8(1965) 17 大井 (岐阜・木曽川、関電) 74.7(1924) 18 利賀 (富山・庄川、関電) 70.1(1943) 19 山口 (長野・木曽川、関電) 68.5(1957) 20 川迫 (奈良・新宮川、関電) 67.7(1940) 21 赤芝 (山形・荒川、東芝セラ) 67.7(1954) 22 薮神 (新潟・信濃川、東北電) 66.9(1941) 23 清水沢 (北海道・石狩川、北海道) 64.7(1939) 24 小原 (富山・庄川、関電) 63.7(1942) 25 新猪谷 (岐阜・神通川、北陸電) 63.4(1964) 26 久瀬 (岐阜・木曽川、中部電) 61.5(1953) 27 岩松 (北海道・十勝川、北電) 61.3(1942) 28 境川 (静岡・大井川、中部電) 61.3(1944) 29 岩清水 (北海道・新冠川、北電) 61.3(1959) 30 戸崎 (宮崎・小丸川、九州電) 60.3(1943) 31 三成 (島根・斐伊川、島根県) 58.8(1953) 32 旭 (福島・阿賀野川、昭和電工) 56.9(1935) 33 神一 (富山・神通川、北陸電) 56.4(1954) 34 笹間川 (静岡・大井川、中部電) 56.3(1960) 35 川端 (北海道・石狩川、国交省) 56.0(1963) 36 祖山 (富山・庄川、関電) 55.1(1930) 37 胎内第2(新潟・胎内川、新潟県) 54.9(1959) 38 落合 (岐阜・木曽川、関電) 54.7(1926) 39 岩屋戸 (宮崎・耳川、九州電) 54.7(1942) 40 読書 (長野・木曽川、関電) 54.7(1960) 41 西平 (岐阜・木曽川、中部電) 52.6(1940) 42 道志 (神奈川・相模川、神奈川県) 51.6(1955) 43 上郷 (山形・最上川、東北電) 50.1(1962) 44 九尾 (奈良・新宮川、関電) 50.0(1937) 45 芦別 (北海道・石狩川、北電) 49.9(1953) 46 出し平 (富山・黒部川、関電) 49.6(1985) 47 奥泉 (静岡・大井川、中部電) 49.2(1956) 48 川原 (宮崎・小丸川、九州電) 48.6(1940) 49 古賀根橋(宮崎・大淀川、宮崎県) 45.9(1959) 50 丸山 (岐阜・木曽川、国交省・関電)45.3(1956) |
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