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志・夢・不屈…骨太に NHK「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」

(朝日新聞東京本社発行 5月14日付夕刊)

 戦後、日本で画期的事業に挑んだ人物に迫る「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」(NHK総合)。視聴率はヒットドラマほどではないが、「ともかく反響がすごい」とNHKの看板番組の一つになった。放送2年、中島みゆきが歌う「地上の星」のテーマ曲が耳に入るだけで、涙腺が刺激される人もいるらしい。収録現場で考えた。(羽毛田 弘志)
かつて世界制覇を狙ったオートバイを前にリハーサル。スタッフらがゲストへの「思い」を募らせる時間だ=NHK放送センターで

 暮らしを変えた家電、地域の交通を変えた工事、ビル建設、医療、災害現場…。様々な分野で挑戦をしてきた人々に焦点を当て、当事者をゲストに迎える。

 7日放送のテーマは、61年にホンダの技術者がオートバイの世界最高峰レースで頂点に挑んだ話。国井雅比古(53)、膳場貴子(27)両アナは朝9時からリハーサル。午前11時、2人のゲストがスタジオに入った。ゲストとの対面は、いつも収録直前だ。

 事前打ち合わせをすると「互いに筋書きを考え、素顔が出ない」。国井アナがこだわった点だ。「当時、世界との差は…」とひざを乗り出して切り出すと、相手が遠くを見つめた。「重い何十秒かの沈黙を、そのまま画面に流したい」と国井アナはいう。

 「毎回、膨大な資料戦」というのは今井彰チーフプロデューサーだ。「僕が描きたいのは人間の可能性。新しいプロジェクトに組織は決してエリートを投入しない。窓際と言われる人が想像を超える力を発揮する。それが日本社会」と。

 企業や組織活動への評価は難しい。思いが強くなるあまり、作品が偏りがちになったこともあった。

 例えば、昨年夏に放送した「白神山地・マタギの森の総力戦」に対し、青秋林道反対運動を担った青森県側の元メンバーらが「事実と違う点が多い」と抗議、訂正を求め、別の形で番組を流したこともあった。

 しかし、「それでもプロジェクトX」という思いが制作スタッフを支える。「光を当てるべき人選に迷いはない」と今井チーフプロデューサー。

 青函トンネル建設に20年近く単身赴任で打ち込んだ技術者の人生とは何か。20代から腎臓病と闘いJリーグを立ち上げたサラリーマンは、義母の励みを支えに4000回の透析に耐えた。

 開始当初は一けただった視聴率もじりじりと上がり、今は十数%台だ。しかも、視聴者のアンコールにこたえた再放送が、初回の放送を上回ることもある。

 「自らを幸せだった、なんて言い切る人はいない。戦争をどこかで引きずりつつ、夢や志をあきらめない。番組は、そんなことを訴える骨太の小説のようなドキュメンタリーなんです」。国井アナは今、そう思っている。

 ○田口の声は「天から」

 この番組に欠かせないのが、俳優田口トモロヲのナレーションだ。オーディションでの第一声は「富士山頂に…」だった。深く、哲学的なものを響かせるような声。「天からこの番組に授かった声」とスタッフは感じたという。

 田口は「無名な人たちの大きな足跡。一期一会で向き合うつもりで収録にむかいます。脚本を読みながら、毎回、目がうるみます。言葉に思いを託すという意味を、改めて知りました」と話す。


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