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どちらの論も無理がある 捕鯨論争(社説)

(朝日新聞東京本社発行 5月19日付朝刊)

 国際捕鯨委員会(IWC)の総会が、20日から山口県下関市で始まる。

 反捕鯨国は、94年の南極海に続いて南太平洋を捕鯨禁止区域(サンクチュアリ)にすることをめざしている。一方、日本は調査捕鯨の拡大と、ノルウェーからの鯨肉輸入を計画している。対立の火種には事欠かない総会になりそうだ。

 IWCはクジラ資源の管理を目的として48年につくられたが、乱獲を防げず、シロナガスクジラなど大型種を激減させた。その反省から、86年から商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を行っている。

 商業捕鯨再開を求める日本やノルウェーと、反捕鯨国との激しい対立で、IWCが建設的議論のない状態になって久しい。

 捕鯨派の主張は、ミンククジラなど増えている種があり、クジラの過剰保護が海洋生態系を乱す、というものだ。世界の漁獲量の3倍から5倍もの魚をクジラが食べて漁業を脅かしている、という。

 反捕鯨派は、海洋生態系は複雑で、クジラを捕ることが漁業資源の保護につながるとはいえない、という。商業捕鯨の再開は乱獲を招く可能性が高い、との主張だ。

 だが、どちらの言い分にも無理がある。

 まず、IWC科学委員会が90年に「南極海のミンククジラは76万頭」との見解をまとめたように、一定の捕鯨をしても絶滅とは無縁の種がいるのは確かだろう。反捕鯨派はこの事実を認め、捕鯨を管理する合理的な仕組み(RMS)作りを引き延ばすのをやめるべきだ。

 一方、捕鯨派も「数があるなら捕っていい」という手前勝手な主張にこだわらず、限定的な捕鯨構想を示すべきだ。「クジラは捕って欲しくない」という反捕鯨国の感情や価値観も考えるべきだろう。

 いまの対立はあまりに感情的で、合意を考えない議論ばかりがまかり通っている。

 捕鯨は日本の食文化だという声も強い。だが、沿岸地域のなかに昔からあった捕鯨・鯨食の伝統と、食糧難をきっかけに国民全体が鯨肉を食べるようになった戦後の経験は、区別して論じるべきだろう。

 捕鯨の再開が認められても、すでに日本には母船団を組むのに十分な船はなく、南極海などでの遠洋捕鯨が商業的に成り立つかは疑問だ。比較的理解されやすく、採算も取りやすい沿岸捕鯨とは条件が違う。

 反捕鯨国のアイルランドは97年に(1)沿岸での捕鯨容認(2)200カイリ外での捕鯨禁止(3)調査捕鯨の中止(4)鯨肉の貿易禁止、という案を出した。現実を踏まえた検討に値する考えだと思うが、両派の関心は低かった。

 ただ、世界自然保護基金(WWF)ジャパンが今年4月に「そろそろ解決に向かう新たな一歩が踏み出されるべきです」として全面反対から対話路線に切り換えるなど、変化の兆しはある。

 今回のIWC総会で、解決に向けた理性的な議論が始まることを期待したい。


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