◇ののちゃん うー、寒い。使い捨てカイロがあって良かったよ。
◆藤原先生 袋から出すとすぐに温かくなるから便利よね。
◇ののちゃん 何で、あったかくなるのかな?
◆先生 布のような肌触りの内袋の中には、鉄の粉がたくさん入っているの。外袋は空気を通さないけれど、内袋には針で開けるよりも小さな穴がいっぱい開いているから、外袋を破ってカイロを出すと空気が急に内袋の中に入って、空気と反応して鉄が変化するのよ。
◇ののちゃん どうなるの?
◆先生 空気の中の酸素と鉄がくっついて、さびるのよ。ものが燃えるというのは、物質と酸素がくっつくことなのね。それと同じ変化なので、熱が出るというわけ。
◇ののちゃん 公園の鉄棒はさびてるけど熱くないよ。
◆先生 鉄棒のさびは表面だけでゆっくり進むので、熱が逃げてすぐに冷めちゃう。でもカイロの鉄は細かい粉だから、あちこちで同時に鉄がさびるので熱が逃げるひまがないの。今のカイロは活性炭という炭や塩水を含んだ木の粉を鉄に混ぜて、さびるスピードを速くしたり、さびずに残る鉄が出ないように工夫しているのよ。
◇ののちゃん 海の近くにとめてある車は潮風のせいでさびやすいって聞いたことがある。塩水をまぜることで、さびやすくなるんだね。
◆先生 そうよ。もう一つの活性炭は、ヤシの実などを数百度で焼いた、小さな穴がたくさん開いた炭のこと。空気をどんどん吸い寄せる力があって、鉄のそばにいつも新しい空気を送り込むので、反応が長く続くの。小指の先ほどの活性炭が、ジュース缶と同じくらいの量の空気を吸い寄せるらしいわ。
◇ののちゃん ふうん。内袋を破って中身を見たいなあ。
◆先生 一人でそんなことをしてはだめよ。新品の鉄粉と活性炭などを袋の外に出して混ぜると、さらに多くの空気が入ってきて反応が一気に進んじゃう。温度は100度近くにもなるんだって。
◇ののちゃん それじゃ、やけどしちゃうね。
◆先生 そうよ。カイロの温度は40〜50度に保たなければ危険だわ。だからちょうど良い量の空気だけを通すように、内袋の穴の大きさや数を工夫しているのよ。それでも、長い間、肌に直接触れたままにしておくとやけどすることがあるから、下着の上につけたりハンカチに包んだりして使う方がいいわ。
(取材協力=ロッテ電子工業、小田廣和・関西大教授、構成=長野剛)
◇調べてみよう
(1)使い捨てカイロのほかにも、体を温めるための道具や工夫はいろいろあるよ。調べてみよう。
(2)活性炭には空気を吸い寄せるだけでなく、水に溶けたものをより分ける力もあるよ。家の中でどう使われているか探してみよう。