◇ののちゃん 今年の冬は本当に寒かったね。
◆先生 雪もたくさん降(ふ)ったしね。
◇ののちゃん でも、ペンギンさんのいる南極や、白クマがくらす北極はもっと寒いんでしょう。
◆先生 そうよ。ののちゃんは南極と北極のどっちが寒いか知ってる。
◇ののちゃん うーん、北にあるから北極かな。
◆先生 残念(ざんねん)でした。地上の気温(きおん)は地面(じめん)から1.5メートルの高さで測(はか)るのだけど、南極の冬の平均(へいきん)気温はだいたいマイナス50〜60度。北極はマイナス25度ぐらいだから、南極が正解よ。
◇ののちゃん どうして南極の方が低いのかな。
◆先生 北極点は北極海という海に浮(う)かぶ氷(こおり)の上にあり、南極点は南極大陸(たいりく)という陸地(りくち)を覆(おお)う厚(あつ)い氷の層(そう)の上にあるの。この違(ちが)いが気温の違いにつながるのよ。
◇ののちゃん へぇ、北極って海の上にあるんだ。
◆先生 氷の表面(ひょうめん)では放射冷却(ほうしゃれいきゃく)という現象(げんしょう)によって熱(ねつ)が奪(うば)われ続けているの。北極の氷の厚さはだいたい10メートルで、氷の下の海水が氷になるぎりぎりの温度のマイナス1.8度だから、氷に比べたら温かいその熱が下から伝わって氷の表面を温めるの。それで、それほど温度が下がらないの。
◇ののちゃん ふーん。
◆先生 一方の南極大陸は陸地の上には、氷の層がぶ厚く積(つ)み重(かさ)なっているのよ。厚さは、平均約2450メートルあるわ。地面の下からは地熱(ちねつ)が伝(つた)わってきて、ちょうど陸と氷の境目(さかいめ)あたりは、海水と近い0度くらいの温度なの。ボストーク湖(こ)と呼ばれる、水をたたえた湖(みずうみ)が広がっているといわれているわ。でも、その熱が厚い氷の層を表面まで伝わるうちに、すっかり下がっちゃうのよ。
◇ののちゃん 南極より、氷が薄(うす)い分だけ北極の方が寒くないわけね。
◆先生 北極点に近いロシアやアラスカなどでは北極点より温度が低いところがあるのよ。シベリアのオイミャコンという村ではマイナス71.2度という記録(きろく)があって、人間が定住(ていじゅう)する地で最も低い気温とされているわ。ちなみに、日本では1902年に北海道旭川(あさひかわ)市で記録したマイナス41度が最低よ。
◇ののちゃん じゃ、南極の最低記録は?
◆先生 南極では標高(ひょうこう)約3500メートルにあるボストーク基地(きち)で、83年にマイナス89.2度を記録したの。同じくらいの標高にある日本の観測拠点(かんそくきょてん)ドームふじ基地の記録はマイナス79.7度。ここで冬を越(こ)した日本の研究者によると、耳を澄(す)ませて息(いき)を吐(は)くと、ソーダ水の泡(あわ)がはじけるような「シュワ」という音がして息の中の水蒸気(すいじょうき)が凍(こお)るそうよ。
(取材協力=平沢尚彦・国立極地研究所極域情報基盤センター助手、構成=嘉幡久敬)
(朝日新聞社発行 3月5日付be)
◇調べてみよう
(1)ボストーク湖はどうやってできたのだろう。
(2)どうして海水はマイナス1.8度でも凍らないのかな。
(3)北極や南極の気温は、地球温暖化(おんだんか)の影響(えいきょう)でどのくらい上がっているのだろう。