◇ののちゃん 納豆(なっとう)のネバネバが気持(きも)ち悪(わる)くて、食(た)べられないんだ。
◆藤原先生 おいしいのに嫌(きら)いとは気の毒(どく)ね。納豆の原料(げんりょう)は大豆(だいず)で「畑(はたけ)の肉(にく)」といわれるほどたんぱく質(しつ)が多(おお)いけど、さらに消化(しょうか)しやすくしたのが納豆なの。
◇ののちゃん だれが大豆を変(か)えたの?
◆先生 納豆菌(きん)という細菌(さいきん)よ。煮(に)た大豆に納豆菌をかけて約(やく)40度(ど)で20時間(じかん)温(あたた)めると、納豆菌がふえて大豆の養分(ようぶん)を分解(ぶんかい)するの。1グラムの納豆には20億個(おくこ)も納豆菌が入(はい)っているそうよ。
◇ののちゃん 納豆菌? どこにいるの。
◆先生 稲(いな)わらや土(つち)の中(なか)など、どこにでもいるの。昔(むかし)はわらの中にゆでた大豆を入(い)れて作(つく)っていたそうよ。いまの納豆は人間(にんげん)が培養(ばいよう)した納豆菌を使(つか)っているわ。100年(ねん)前(まえ)にみつけた菌を85年前から大量生産(たいりょうせいさん)しているの。納豆菌は、大豆にない栄養(えいよう)やビタミンのほか、血圧(けつあつ)をさげる物質(ぶっしつ)や血(ち)の塊(かたまり)を溶(と)かす物質も作るので、注目(ちゅうもく)されているわ。
◇ののちゃん 目(め)にみえないけどすごいんだね。でも、あのネバネバはなんなの?
◆先生 ネバネバは、納豆菌が作った細(ほそ)い糸(いと)がたくさんからまったもの。それぞれの糸は、グルタミン酸(さん)というアミノ酸が5000個から1万(まん)個もつながったもので、けっこう丈夫(じょうぶ)なの。
◇ののちゃん そんな変(へん)な糸、作らなきゃいいのに。
◆先生 ネバネバの糸は、納豆菌にとってはとても大事(だいじ)なものよ。食料不足(しょくりょうぶそく)に備(そな)えた非常食(ひじょうしょく)だし、快適(かいてき)な住宅(じゅうたく)でもあるらしいわ。ウイルスの攻撃(こうげき)を防(ふせ)ぐ、よろいの役目(やくめ)もはたすのよ。
◇ののちゃん ネバネバはなくせないのかぁ。納豆はにおいも嫌いだな。
◆先生 たしかにそうね。納豆のにおいは、汗(あせ)まみれの靴下(くつした)のにおいとにているよね。古(ふる)くなったり冷蔵庫(れいぞうこ)からだして放(ほう)っておいたりすればアンモニアのにおいもしてくるわね。ただ最近(さいきん)は、においが少(すく)ない納豆菌も開発(かいはつ)されているわ。
◇ののちゃん やっぱり、腐(くさ)った大豆はいやだな。
◆先生 あら、腐っているわけじゃないのよ。発酵(はっこう)というの。みそや酒(さけ)、チーズなども、微生物(びせいぶつ)が作る発酵食品(しょくひん)よ。
◇ののちゃん 発酵と腐るのは、どうちがうの?
◆先生 どの細菌も、食べものを分解して養分にして生(い)きているわ。このとき結果(けっか)として人間のために役に立(た)つなら発酵、人間の害(がい)になる変化(へんか)を起(お)こせば腐ったというの。
◇ののちゃん なんだ、人間の都合(つごう)だったんだ。
◆先生 そうよ。納豆菌にとっては、せっかく蓄(たくわ)えた食料と家(いえ)を横取(よこど)りする人間は最大(さいだい)の害獣(がいじゅう)かもね。
(取材協力=食品総合研究所発酵細菌ユニット・木村啓太郎主任研究員、構成=斎藤義浩)
(朝日新聞社発行 9月24日付be)