◇ののちゃん 連休(れんきゅう)に、家族(かぞく)で水族館(すいぞくかん)へ行(い)ったんだ。すごーく大(おお)きな水槽(すいそう)があって、きれいな魚(さかな)やでっかい魚がたくさん泳(およ)いでたよ。
◆藤原先生 巨大(きょだい)水槽や、人(ひと)が水中通路(すいちゅうつうろ)を通(とお)れるドーム形(がた)の水槽には、いろんな魚が同居(どうきょ)していて、まるで自分(じぶん)が海(うみ)の中(なか)にいるみたいな感(かん)じになるわね。
◇ののちゃん うっとりながめてるうちに、なんか変(へん)、て感じだしたの。
◆先生 なぜ?
◇ののちゃん だって、体長(たいちょう)2メートルもある人食(ひとく)いザメの仲間(なかま)や、1メートルを超(こ)えるマグロなんかと、イワシやアジ、サバが一緒(いっしょ)にいるんだよ。これが海だったら、イワシたちはサメたちに食(た)べられちゃうでしょ。なぜ水槽の中だと安全(あんぜん)なの?
◆先生 おもしろいところに気(き)がついたわね。ズバリ、そのわけは、水槽の肉食魚(にくしょくぎょ)は飢(う)えていないからよ。アジ、イワシ、イカなどのエサをやっているわ。
◇ののちゃん それは死んでる魚でしょ。それでも食べるの? オタマジャクシを育(そだ)てたことがあるけど、カエルになったら生(い)き餌(え)しか食べないんで、虫取(むしと)りに苦労(くろう)したよ。カマキリもそう。肉食の魚ではそういうことないの?
◆先生 タツノオトシゴみたいに生き餌じゃないとだめなものもごく少しあるけど、たいていは生き餌じゃなくても大丈夫だそうよ。
◇ののちゃん でも、水槽にワンサといる魚たちのほうが、鮮度抜群(せんどばつぐん)でおいしいはずでしょ。それに、「飢え」までいかなくても、エサの時間(じかん)の前(まえ)にはおなかもすくでしょうに。
◆先生 あのね、大きな誤解(ごかい)があると思(おも)うわ。陸(りく)の動物(どうぶつ)でも同(おな)じなんだけど、肉食動物の「狩(か)り」は、私たちが漠然(ばくぜん)とイメージしてるより、ずっと大変(たいへん)な作業(さぎょう)なの。成功(せいこう)する率(りつ)も実(じつ)は低(ひく)いのよ。そうでなければ、エサになる動物は食い尽(つ)くされて絶滅(ぜつめつ)し、それによって肉食動物は自分(じぶん)の首(くび)も絞(し)めてしまったはずでしょ。
◇ののちゃん そうか。
◆先生 狩りがそれだけ難(むずか)しいから、肉食動物たちはなるべくエネルギーをムダにしないように暮(く)らしてるわ。苦労(くろう)しなくてもエサが食べられるのに、わざわざ狩りはしないのよ。
◇ののちゃん でも、まさか仲良(なかよ)く暮(く)らしてるわけでもないんでしょう?
◆先生 サメやマグロと、イワシやアジがまじり合って泳(およ)ぐことはないわ。小(ちい)さな魚の群(む)れはやっぱり肉食魚を避(さ)けてるし、マグロなどもあえてその群れを追(お)わない。でも、疲(つか)れやケガで弱(よわ)って、群れの動(うご)きに遅(おく)れる魚がいると、「捕(と)りやすい」とみるらしく、襲(おそ)って食べちゃうそうよ。
(朝日新聞社発行 10月22日付be)
(取材協力=東京都・葛西臨海水族園の松山俊樹・教育普及係長、大分マリーンパレス水族館「うみたまご」の熊代徹・魚類課リーダー、構成=武居克明)
◇調べてみよう
(1)近(ちか)くの水族館では、「食べる―食べられる」関係(かんけい)の生き物(もの)が一緒に暮らしている例(れい)はないかな?
(2)サメやマグロに食べられる立場(たちば)のアジやイワシは、何(なに)を食べているのか「食物連鎖(しょくもつれんさ)」を調(しら)べてみよう。