1 あの気球はどこへいったのかなー
ゴム風船が計算上、ふわふわとエベレストの頂上にまで昇っていけるなんて、今回の質問者の京谷美羽さんもビックリしたことでしょう。調べた私もビックリさせられました。
ビックリついでにもう一つ。10年以上も前の文化祭でのことです。黒いビニール袋で「熱気球」を作ろうと太陽光線であたためていたところ、予想を上回る浮力(ふりょく)が生じてふわふわと舞い上がり、風に流されて飛んでいってしまったのです。慌てて自転車で追いかけたのですが、つかまえられるわけがありません。とうとう肉眼では見えなくなってしまいました。
2 ワークシートのポイント
(1)ヘリウムや水素の性質
「あたためた空気」やヘリウムなどのガスは、どうして浮く力があるのでしょう。みなさんはお風呂やプールに入ると体が軽くなることを経験的に知っていますね。「水の中に物を入れると、その体積に等しい水の重さだけ浮力(ふりょく)をうける」ために、体が軽くなるわけです。水より軽いもの、言い換えると水より密度の小さいものは浮くことになります。この法則は、発見者の名前をとって「アルキメデスの原理」といいます。同様の現象は大気中でもおこります。熱気球やガス気球(ヘリウムや水素の風船)が、どうして空高くあがるのか「アルキメデスの原理」を用いて説明してみましょう。
≪ヒント≫ 部屋の中でストーブをつけると、あたたかくなって膨張(ぼうちょう)した空気は密度が減って上に昇っていきます。これは密度の高い冷たい空気との間で浮力が生じたことでおこる現象です。「ヘリウム」や「水素」は、あたためるまでもなく、もともと空気より密度が小さいので浮力を生じるのです。
≪チャレンジ≫ 高く上がった風船や気球の場合を考えるときには、さらに気圧や温度の関係も考えに入れる必要があります。「ボイル・シャルルの法則」について理解していないと説明ができません。したがって、ここからは高度な学習になりますから、挑戦してみたい人にのみおすすめします。
≪おすすめの本≫ 『気球をとばす』西村純著(岩波科学の本 14 )
30年ほど前に書かれた本ですが、「気球の歴史」や「気球の原理」などについて、とてもわかりやすくていねいに紹介されています。当時「三陸大気球観測所」の設立にかかわった大気球観測のパイオニア・西村純先生が書かれています。ルビもふられていますから、小学生高学年以上のみなさんなら読み進むことができるでしょう。大気球については、ワークシート(3)で学習します。
(2)高層気象を観測するためのゴム風船
高度約30〜36kmくらいまでの高層気象を観測するために、ゴム気球が使われています。気象庁が全国18ヶ所で毎日決められた時間に温度や湿度、気圧や風速などを計測する機器がゴム気球によってあげられています。この気象観測機器(ラジオゾンデ)や気象観測用のゴム気球について調べてみましょう。
「気球による高層気象観測」気象庁高層気象台
http://www.kousou-jma.go.jp/obs_second_div/index2nd_top.htm
「気象観測器をみつけた方へのお願い」気象庁高層気象台
http://www.kousou-jma.go.jp/obs_second_div/info_sonde/dropsonde.htm
(3)気球の世界記録をもつ三陸大気球観測所
宇宙科学の最先端の研究が気球で行われているなどと考えると、夢とロマンがあってチョッと愉快(ゆかい)な気分になりますね。さっそく岩手県の「三陸大気球観測所」のホームページを活用して、巨大な気球や観測内容について調べてみましょう。
「大気球観測センターへようこそ」宇宙航空研究開発機構(JAXA)
http://balloon.isas.ac.jp/
(4)「風船とばし」について
ののちゃんは「遠くのだれかにお手紙を届けられないかなあ」といっています。ゴム風船を飛ばすことで環境に影響はないのでしょうか。石油化学製品のビニールは、自然に大変もどりにくいものですから、冒頭(ぼうとう)にお話ししたことは大失敗です。それではゴム風船はどうでしょう。
「ゴム風船のお話し」日本バルーン協会
http://jba1.jp/JBArep/rubber.html
「風船とばしについての資料」日本バルーン協会
http://jba1.jp/JBArep/release.html
3 発展学習として
実際に「熱気球」を作ってみましょう。特別なしかけは必要ありません。黒いビニール袋を張り合わせ、大きな(巨大な)風船をつくりましょう。扇風機で空気を入れ、直射日光を利用してあたためてふくらませます。浮き上がるかどうかは、大きな浮力を引き出すための大きな風船を軽く作る工夫と、さまざまな自然条件をうまく利用することが成功の秘訣(ひけつ)です。それでは、成功を祈ります。
〈注意事項〉
(1)飛んでいかないように、ひもで結んでおきましょう。
(2)近くに電線がないところでやりましょう。
(藤沢市立大庭中学校・有馬 進一)