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ままならない人生に思いがけない出会い

2008年3月10日

  • 筆者 森上展安

 人生はままならないものだ。

 長男は慶応大学に行かせようと思っていたが、学習院大学に内部進学した。次男は東京大学に行かせようと考えていたが、慶応大学に入学した。三男は高校で留学させようと考えたが、何の因果かキャッチアップ型のいかにもそれらしい進学校に入ってしまった。

 そもそも夫も妻も、どのような伴侶を得るかからしてままならない。まして子どもからすればなおさらだ。

 幼稚園の運動会の日、父親参加の競技でわが長男を肩車に乗せ走り出したらもんどり打って転倒し、長男が負傷した。長男曰く「こんなお父様の子どもに生まれてくるのではなかった」。長男も5歳にして父親を間違ったことに気付いたのだ。もっともその後、長男も次男と口げんかをするときまって当時4歳の次男から「こんなお兄ちゃんじゃなければ良かった。もっと優しいお兄ちゃんだったら良かった」と責められた。次男も兄を間違えたのだ。

 ある日、公園で三男とキャッチポールをしていると、彼の同級生の女の子が近寄ってしげしげと私を見つめるので、どうしたのか、と尋ねた。その当時小学校2年生のおしゃまな女の子たちは三男の父親か、と聞くのでそうだと答えると「モリちゃん(三男の愛称)のお父様にしてはしっかりしてるね」と言って去って行った。

 当時三男には学校で3人のお世話係の女の子がついていて(今日ではいずれも難関進学校にご進学されているはずである)介護状態だった。「この親にしてこの子あり」でなかったことに彼女たちは驚き、人生の真実に目を見張ったのだろう。利己的遺伝子風に言うならば、それなりの夫を選んだとしてもわが子もそうなるとは限らないということを本能的に嗅ぎ取ったのかもしれない。

 かくの如く人生はままならないものである。が、それは人生の事実であって真実ではない。失敗も成功もされたある中小企業社長から、困ったときに手を差し伸べてくださった方はいつも実に思いがけない人でしたよ、といつぞや感慨を伺ったことがある。また、その昔、早大山岳部のリーダーだった方からご子息の慶応中等部の合格のご報告をいただいた折の言葉。「思いがけないご縁を頂きました」。麻布ほかを落ち続けて2月6日を過ぎての朗報と記憶している。

 確かに人生はままならない。しかし、それ以上に人生には思いがけない出会いがある。そのような経験をすることで心は謙虚になり、表情に豊かさが加わるのである。

森上展安 プロフィール

森上展安

森上展安(もりがみ・のぶやす)

東京都内で森上教育研究所を主宰する。中学受験や中高一貫教育、学習塾の問題に詳しい。著書に『中学受験図鑑』『入りやすくてお得な学校』(いずれもダイヤモンド社刊)など。

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