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中学受験は親にとって「投資案件」なのか?

2008年6月2日

  • 筆者 森上展安

 某日我が家の夕食は夏野菜カレーだったが、例によって食事に一言ある次男から、いつもより薄味だという。言われてみればその通りで、母親も同じカレー粉で調理したはずなのにおかしい、と不思議がる。そこで時節柄、小麦粉の成分を落としたのではないかと当て推量を言って何とはなくそれが結論めいたことになった。推論の根拠は、値上げをしないために材料の方を減らす対応をとるという、ある企業の戦略が新聞に出ていたためなのだが、当否は不明である。

 さらにそれからしばらくして町のローカルチェーンの本屋の店頭で近く閉店をするという貼り紙が目に入った。

 いわゆるシャッター街ではないが、地域の商店街はこの10年で様変わりになった。駅前の大手スーパーはいわゆるストアブランドなども駆使して繁盛している様子だが、これに続く地元商店街の方はお茶の店がつぶれ、酒屋がつぶれ、洋食屋がつぶれ、惣菜屋がつぶれ…と果たして何軒なくなったか今では記憶していられぬくらいだ。そのかわりに蕎麦屋が出来、寿司チェーンが出来、となって今でも変わらないのはマクドナルドととんかつ屋、豆腐屋、中華料理屋、洋服修理の店、めがね屋、婦人服、靴屋など半数に満たない。 まだもっている店の一つであるパン屋などは食パンの値段も急激にここで3度も上げたと家人はうったえる。

 街がこうでは税収も厳しく、地元公立中学の英語の特任講師の紹介を尊敬する校長から頼まれたのは良いが、市から支給される時給が千円という話を聴いたときには、天をあおいだ。

 過日の新聞記事には筑波大の吉田あつし教授が中学受験―私立中進学ブームの背景に大卒者と高卒者との賃金拡大がそのことと踵(かかと)を接するように拡大している事実も一因だとしている。経済のグローバル化で親世代の所得格差が拡大したことが、親を私立中進学に駆り立てたと分析されている。

 だとすれば私立中学は石油や小麦粉のような投資案件のような趣があって貴重な「成長株」と親に受け止められたことになる。例え親の事情がそうであったとしても、いわば動機は何であれ私立が私立として一人の人間の成長にかけがえのない生き方考え方を育んだ、とすれば教育の目的は果たされた、といってよいと思う。

 しかしながら親の投資期待に応えてお子様が世俗的な成功をすればよし、案外に成功しなかったなら失敗ということになるのかどうか。なるとすればそれは親の失敗でもあろう。しかし子どもの人生はその子しか生きられないのである。

森上展安 プロフィール

森上展安

森上展安(もりがみ・のぶやす)

東京都内で森上教育研究所を主宰する。中学受験や中高一貫教育、学習塾の問題に詳しい。著書に『中学受験図鑑』『入りやすくてお得な学校』(いずれもダイヤモンド社刊)など。

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