
(図表1)
◆聖和学院の教育理念
世界を知り(WORLD)自分を見つめながら(IDENTITY)理解力と分別を兼ね備えた(SENSIBLE)真の聡明さをもつ女性を育てる(EDUCATION)ことを教育テーマとする聖和学院は1942年武藤功女史によって湘南女学塾として創立されました。宣教師のいるミッション校ではありませんが、キリスト教精神に基づき、神は愛なりの言葉の下、教師と生徒が聖書を中心に和をもって学ぶ、を教育理念としています。
◆聖書を通した心の教育
聖和学院の教育目標のひとつが聖書を通した心の教育です。創立当初から朝の礼拝や聖書の授業、花の日礼拝、感謝祭礼拝、クリスマス燭火礼拝などの月1回の宗教行事を通して、自分自身を見つめ心を豊かに育てる本当の「心の教育」を実践しています。生活の中で困難に出会ったときに聖書を開き心を落ち着けることが習慣となった卒業生は、社会に出てからも様々な困難を自力で乗り越えていけるようになっています。このほかにも人間として生活する上で必要なことは、学院生活の中で学習とともに自然に身についていきます。聖和学院を知る人からは「安心して預けられる学校」と評され、近隣の方々からは「聖和の生徒は学校の内と外で本当に変わりませんね」という声が寄せられるということが、生徒の心が育っていることの何よりの証でしょう。
◆『生きた英語』を通した国際理解教育
もうひとつの教育目標が『生きた英語』を通した国際理解教育です。聖和学院の高等学校には様々な許認可項目をすべてクリアした神奈川県で唯一の英語科があります。英語のスペシャリストとして活躍できるよう、3年間での英語の総単位数は32単位にも上ります。これひとつをとってみても、いかに英語に力を入れているかを推し量ることができますが、「英語の聖和」の英語教育は中学入学前から始まるのです。
◆中学入学前から始まる英語教育
聖和学院の英語に対する基本的な考え方は1、英語力を飛躍的にアップさせる2、日本語を習得するのと同じ環境を作る3、英語に「慣れて」「好きになる」環境を作る、の3つです。この考え方から作られたカリキュラムは中学入学前の英語事前学習から始まります。入学前の3日間、ネイティブスピーカーの教師とゲームをしたり、アルファベットや英単語を学習し、簡単な日常会話を学んだり、鎌倉を散策したりと、英語が自然と身につく環境への第一歩を踏み出します。これは4月からの授業にスムーズに入っていくためのウォーミングアップでもあるのです。
◆英語に慣れて好きになるための徹底した環境作り
中学1年生の担任にはネイティブスピーカーの教師がつきます。これは最初から正しい発音で学ばせることと、登校から昼食、掃除も含めた下校までの学院生活を共にすることで、英語でのコミュニケーションに自然と慣れ親しむことを目的としています。とは言え、入学したばかりの生徒が学院生活に戸惑わないように日本人の副担任もついた二人担任制をしき、生徒の目線での対応も充実しています。
初めての英語に親しむための工夫はこれだけではありません。昼休みやホームルームの時間を利用して『Tea Break』を実施しています。これはリラックスした雰囲気の中で、生徒になんとなく話してみようかなと動機付けをするとともに、国際人としてのマナーまでも自然と習得していくための時間なのです。
このように、まずは英語に慣れて、好きになるための環境を充実させている背景には、単に教科としての英語教育ではなく、コミュニケーションツールとしての「生きた英語」を日本人が日本語を話せるようになるのと同じように自然に楽しく習得させたいとの願いが込められているのです。ネイティブスピーカーとの会話もわかるようにならなければいけないという強制されたものではなく、とりあえず側に寄っていければそれで良いというおおらかな考えで見守られているので、生徒たちは実に楽しそうに生き生きとしているのです。
◆プログレス21を中心とした充実したカリキュラム
聖和学院中学校の英語の授業は大きく3つに分類されています。1つめは「外国語」で、これはプログレス21を中心とした授業で中1では4単位あります。2つめは「選択教科・英語」で、これは問題演習や日常会話の授業で中1では1単位です。3つめは「総合的な学習・英語」で、これは英語のビデオを見たり、英語でゲームをしたり、ネイティブスピーカーとの英会話をする時間で、2単位が当てられています。さらに土曜講座が1単位あり、中1で合計8単位、中学3年間では公立中学の標準単位数の3倍にあたる27単位もの時間が割り当てられています。
プログレス21を採用しているのは、コミュニケーションツールとしての「生きた英語」の習得に欠かせない単語量、文法事項、長文対応力、対話文などの充実をはかるためです。また、プログレス21を徹底的に理解することは大学受験のための英語や資格英語にも直結します。このために生徒が理解しやすいように工夫された聖和学院独自の確認プリントを活用したり、単元が終わる毎にチェックテストをする等、様々な方法を用いて基本事項の理解と定着を徹底しています。
プログレス21以外の授業では、身についた基礎を総合的にまとめたり、実際に活用することで知識を「生きた英語」へと昇華させているのです。
さらに土曜講座ではTOEIC受験対策講座等、各種英語資格試験に対応できる授業を展開しています。
◆英語の時間は英語のみ
さて、実際の授業はどのように展開されているのでしょうか。中学1年生の授業を見学させていただきました。
昼食後はネイティブスピーカーの先生とハロウィンのカードゲームをしていました。もちろん英語でです。教室の傍らには授業の予習をしている生徒もいます。活気があるのに騒々しくはない、穏やかな空気に包まれた、とても居心地の良い不思議な空間です。
日本人教師によるプログレス21の授業ですが、ほとんど英語のみで授業は展開されました。と言っても一方通行なものではなく、生徒とのやり取りがとても多く和やかに授業が進みます。英語での質問に生徒も英語で答えます。ときどき言えない生徒もいるのですが、揶揄したり咎めたりという生徒がいません。とても暖かくアットホームな雰囲気なためか、何度も言い直して正解にたどりつく努力をしていました。失敗しても認められる世界が確保されているのです。まさに英語に慣れ、好きになる環境の中で授業が展開されていました。
驚いたのは中学の入口の偏差値で20も違う女子の上位校と進度がまったく同じだったことです。生徒もわからなくて困惑している様子はまったくなく、先生とのやり取りを楽しんでいる様子でした。聖和学院の英語の授業を見て、あらためて子どもの持つ可能性の大きさと、それを引き出す環境の大切さを実感しました。
◆学校と自宅学習の緻密な連動
聖和学院の英語教育の特徴のひとつに学校と家庭学習のシステマチックな連動があげられます。ここで注目していただきたいのは「自己添削」という項目です。単に○×をつけてお終いではなく、必ず自分で考える時間を与えることによって、より深い理解を促しているのです。定期テストも丸つけ返却で終わってしまわずに、間違えたところを拾い出し、解き直した上で反省点を振り返り、次回に向けての目標を設定するということを、きちんと言語化するところまで落とし込んで、はじめてひとつの学習サイクルが終わるという念の入れようです。さらにこの学習サイクルの要所毎に教員の添削指導があります。これは生徒ひとりひとりに手をかけ、その能力を引き出そうという姿勢にほかなりません。
◆変わり続ける聖和学院
(図表1)に示したのは聖和学院の改革の歴史です。聖和学院は改革に対してとても積極的です。それは社会の要請に応えるためであり、環境の変化に適応するために必要であるからです。しかし、それ以上に「今いる生徒に何ができるか」を一番大切にしているからこそ改革に前向きであり続けることができるのです。
こうした指導が実を結び、現役合格率の平成17年度と18年度の比較では4年生大学へは63%から74%へ、国立・難関私大へは13%から25%へと飛躍的に向上しています。