
表1 評価ルーブリック例(体育・バスケットボール)
変わらぬ確かな教育理念を掲げつつ、時代をリードする新たな学びを導入し、常に進化・発展していく私学の教育。
今回は、前回に続いて、横浜山手女子中学校がこの春、神奈川初のコースとしてスタートさせるインターナショナルコースの詳細なカリキュラムおよび指導態勢について最新情報を交えてリポートします。
以前紹介した、横浜山手女子中学校・高等学校がこの春から導入する中高一貫インターナショナルコースについて、副理事長の石本渥先生にさらに詳しく教えていただきました。
「IB(インターナショナル・バカロレア)に基づく中高一貫インターナショナルコースは、当校が2008年に創立100周年を迎えるのを機に、次の100年を見据え、時代にフィットする施策として開設するものです。IBプログラムは、2007年12月現在、125ヵ国、2168校に普及しており、58万2千人の生徒が学んでいます」。
IBO(インターナショナル・バカロレア機構)のホームページによると、認定校の数は1971年の同機構発足以来、飛躍的に伸びています。
「アジアでは、インドの40校、中国の35校が目立ちますね。日本でも1979年に最初の認定校が誕生。横浜山手女子も、仲間入りを目指す候補校としてスタートを切りました」と石本先生。
IBにおけるディプロマ試験の公用語は、英語・フランス語・スペイン語です。
「とくに英語は最も多く使われている言語。英語ができれば、より高いレベルの教育を受け、自分の好きなジャンルで活躍できる世の中であることは、IT分野におけるインドの人々の例をあげるまでもないでしょう」と石本先生はおっしゃいます。
◆評価ルーブリックで客観性を養い 基礎知識を大きく発展させていく
IB教育によって育成する人物像を、石本先生をはじめとする関係者の皆さんは、『インディペンデント・ラーナー(自立した学習者)』と表現しています。
生徒が自分の理解の質や、実績・成果のレベルについて客観的かつ正確な評価ができるようになるために用意されているのが、『評価ルーブリック』と呼ばれる、採点のためのガイドです。「評価ルーブリックには学習目標が明確に定義されており、どのくらい達成できたかの度合いがわかります。教師の期待が明確化され、生徒にはどのようにすればその期待に応えられるかが示されます。客観的に生徒が自分を評価できるようになれば、生徒は課題の発見と解決がどんどんうまくなっていくのです」。
その積み重ねにより、生徒は学び方そのものを体得し、少しの知識が与えられれば、自らがどんどん発展させていくようになると言います。
評価ルーブリックの実例を見ると、表1のようになっています。評価を受ける前にこれがわかっていれば、生徒は何をどう努力すればよいか、一目でわかります。
「IBの候補校および認定校の教員とIBコーディネーターは、定期的にIBOの各地区本部で研修を受けるほか、ルーブリックを含む評価体制そのものも、易しすぎないか、あるいは厳しすぎないかが絶えずチェックされます。それによって、理想の教育水準が保たれるようになっているのです」と、その厳正さを石本先生は強調なさいます。
◆1週間のうち英語での授業が16時間 金曜の午後はチュートリアル
では、横浜山手女子の中高一貫インターナショナルコースに入学すると、どのようなカリキュラムで学習することになるのか、具体的に見てみましょう。
暫定的なものではありますが、1週間の時間割を見てみると、主に午前中は一般教科、午後は特別教科となります。金曜日の午後は少人数制の講習(チュートリアル)となり、各自がその時点で最もやるべきことを学習します。
「その内容は評価ルーブリックによって客観的かつ正確に自分の習熟度を認識できるようになった生徒が自ら決めることになるのです」。
一斉に行う補習授業とは根本的に考え方が違うということです。
さて、時間割に書かれた教科が色分けされていますが、ピンクの部分は英語主体の授業(英語・社会・音楽・技術)、クリーム色の部分は両方を使っての授業(美術・保健体育・道徳など)、ブルーの部分は日本語での授業(国語・数学・理科)です。
ピンクとクリーム色の部分の多さが一目瞭然。いかに英語に接する時間が多いかがわかります。5年目からのDP(ディプロマ・プログラム)ではほとんどの授業が英語になります。
◆25名の生徒を7人の教員が固いチームワークで指導
IB教育においては、1クラス25名という規定があり、同校でも25名の入学者を募集しています。
「この25名に対して、教員は7名。1名の教員が3〜4名の生徒のいわば担任となって、6年間の成長に付き添います。週末ごとに教員と生徒は個別の面談を行い、目標到達度のチェックや改善のためのアドバイスを行い、勉強方法を一緒に考えます」。
教員はそれぞれ担当する生徒の全教科について学習の度合いを把握していなければならず、教員同士のチームワークが不可欠です。
「教員は毎週月曜の終業後、ふり返りのための会議を行って、情報交換します。一人ひとりをどう教えるか、いま何を教えるのが最も効果的なのかを徹底的に話し合っていきます。また、共有するのは情報だけでなく、IB教育の方法論と哲学もそうです」。
この、個を大切にする同校の思いは、「IB教育は英語ばかりに目が向きがちですが、現代社会で必要とされる論理的思考力と表現力を身につける手法。幅広い教養を学ぶことを期待しているものです」という言葉からもうかがえます。
◆激変が予想される社会環境の中 多彩な可能性を持つ者が有利に
以上がインターナショナルコースの基本的な考え方ですが、保護者の方にとって、どうしても出口、つまり卒業後の進路が気になるのが本音でしょう。その点について石本先生は、「日本は大学ありきの選択。しかし、海外ではやりたいことをやるための環境を選択するという姿勢」と指摘します。
世界では多くの若者がIBのディプロマ(大学入学資格)を得て、ケンブリッジ大やハーバード大などへ進学していますが、実は、すでに日本でも早稲田や慶應、上智をはじめ、多くの大学がIBのディプロマで受験できるようになっています。
また、2008年に入学する中学生が大学に進学する2014年には、日本における受験及び社会の環境が大きく変わっているのでは、とも石本先生はおっしゃいます。
「いまでも産業界は多くのバイリンガルを必要としており、これから大学は激変するでしょう。バイリンガルの生徒にとって、海外の大学と日本の大学は同じレベルの選択肢になります」。
世界へ、そして未来の日本の大学へと、多彩な可能性を手にすることができるのが同校のインターナショナルコースの最大の魅力だと言えます。